物流業界を揺るがす大事件
楽天グループの苦境が続いている。
今年2月14日に発表した2021年12月期の最終損益は1338億円の赤字。その流れは変わらず、今年12月期の第一四半期も914億円の赤字だった。だが、三木谷浩史・社長兼会長は強気の姿勢を崩さない。損失の原因が楽天モバイルへの投資であることがハッキリしているためだ。
基地局の整備が進み、つながり難さが解消、KDDIに支払うローミング(通信回線の乗り入れ)費用の負担が減れば、楽天市場、楽天銀行など「楽天経済圏」の顧客を楽天モバイルの顧客に取り込むことで、一挙に挽回できると考えている。

そのために三木谷氏は大胆な投資を惜しまなかった。基地局整備が急務だとして楽天市場の事業長で“懐刀”の矢澤俊介氏を楽天モバイルに投入した。その結果、20年3月には基地局設置が計画を上回り、同年8月の決算説明会で三木谷氏は「設置計画の5年前倒し」を発表した。宣言通りに基地局整備は一巡し、22年6月末時点で人口カバー率は97・6%に達している。
その“無理”が呼び込んだといえようか。
楽天モバイルの基地局設置を巡り、物流業界を揺るがす事件が発生した。楽天モバイルの部長職にある男性幹部社員が、取引先の物流2社と組み、楽天モバイルへの水増し請求を続けてその総額が約46億円に達した。
楽天モバイルは8月12日、幹部社員を懲戒解雇し、共謀していた取引先のうち同社への不正請求を重ねていた中堅物流会社「日本ロジステック」の預金差し押さえを東京地裁に申し立てて、認められた。
日本ロジステックは、22年3月期に売上高405億6968万円、経常利益44億1734万円を達成した成長企業だが、それを支えたのは基地局建設業務に関する部材、保管、輸送などの業務を発注していた楽天モバイルだった。同社は楽天モバイルの預金差し押さえで取引先などへの支払いができなくなったとして、8月30日東京地裁に民事再生法の適用を申請した。負債総額は運輸・倉庫業界では今年最大の151億円だという。