中国ではサーモンの需要が急上昇中、中国の市場が世界に与える影響とは?


中国のサーモン需要は前例のないペースで成長しており、2023年の養殖サーモン輸入量は前年比で46%増加しています。この驚くべき成長が世界の市場に与える影響について、イギリスのスターリング大学で水資源開発学の教授を務めるデイブ・リトル氏が解説しています。

How China’s appetite for salmon could reshape global seafood markets – new research
https://theconversation.com/how-chinas-appetite-for-salmon-could-reshape-global-seafood-markets-new-research-246198


2024年12月に公開された論文によると、新型コロナウイルスのパンデミックに伴う物流の混乱や、インターネットの急速な発展から、中国ではeコマースプラットフォームを通じたサーモン製品の購入が爆発的に流行したそうです。サーモンは他の高価格帯のシーフードと比較すると、冷凍保存でも味や品質を保ちやすく、電子商取引にマッチしていると考えられています。中国のサーモン需要が爆発的に増加したことで、スコットランドやノルウェー、チリ、オーストラリア、カナダ、アイスランドといった主要なサーモン輸出業者は、急速に進化する巨大市場のニーズに応えようと競い合っています。


一方で、中国市場の急速な成長は、持続可能性に関する重大な懸念を生じさせているとリトル氏は指摘しています。中国の海産物需要を満たすためには、オンラインプラットフォームを通じて購入された商品を迅速に配達することが求めらます。アトランティックサーモンを中国市場に輸送するには複雑な物流と多大な環境コストがかかり、輸送に伴う二酸化炭素排出量とサケ養殖の資本集約型な性質が相まって、環境への大きな悪影響があるとリトル氏は述べています。

中国では、国内でアトランティックサーモン産業を発展させようと働きかけもしていますが、環境的な制約と技術的な課題のため、うまく産業が確立していません。そんな中、中国政府は2018年に、見た目や大きさ、栄養面においてサーモンと似ているサケ科のニジマスをサーモンとしてラベル付けして販売することを許可しました。そのため、国内ではニジマスの養殖が積極的に実施されており、2022年には国内の新しい養殖種としては大規模な量となる3万7000トンのニジマスを養殖しています。


ニジマスの養殖でサーモン需要を代替することとは、地元産の魚により輸入に伴う二酸化炭素量を削減し、より持続可能な新しい選択肢として機能します。実際に、2024年12月に公開されたブラインド味覚テストを含む研究では、多くの中国人消費者が国産ニジマスと輸入アトランティックサーモンを味わって区別できませんでした。一方で、原産地について知らせると、アトランティックサーモンにテスターの好みが大きく傾いたため、サーモン市場を開拓するためにはさらなるアプローチが必要だと論文では結論付けています。

進化を続ける中国の水産物市場は、世界の業者にビジネスの機会を提供すると同時に、品質や鮮度を持続可能性とてんびんにかけるという貴重な教訓も提供してくれるとリトル氏は語っています。高級シーフードへの需要の高まりと環境への責任のバランスをとるためには、無駄な飼料を減らしたり、水の使用を最低限に抑えるための養殖システムを備えたりといった施策を含む、環境に優しい水産養殖方法へ投資することが重要です。リトル氏は「ニジマスが中国の水産物業界で注目を集めるようになるにつれ、消費者の嗜好、環境への懸念、経済的機会の関係が、世界のサーモン貿易の将来を形作る可能性があります」と述べています。

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