感染流行は一段落したものの、新型コロナウイルス発症以降ずっと体調がすぐれない、何カ月たっても味覚や嗅覚が戻らないといった後遺症で苦しんでいる人がいる。なぜそんな症状が出るのか、今どんなことが分かっているのか、専門家に聞いた。
新型コロナがインフルエンザと異なる理由
世界中を混乱に陥れた新型コロナ感染症。感染拡大当初は、呼吸器の重篤な症状を引き起こし、命を脅かす点が注目を集めたが、もうひとつ、通常の風邪やインフルエンザと違う点は、熱が引いた後も、倦怠感などの症状が続く人が非常に多いという点だ。
大阪大学と豊中市が2022年末に発表した調査報告では、10日の自宅療養が終わった後でも約半数に何らかの症状が残っており、発症から1カ月でも約2%の人に倦怠感や脱毛、咳などの症状が見られたという。
中には、何カ月にもわたって不調が続く人もいる。そういった場合は、感染時の症状がただ長引いているというより、感染によってもたらされた何らかの理由で症状が出ていると考えられ、WHO(世界保健機関)では「新型コロナウイルスに罹患(りかん)した人で、発症から3カ月以上たった時点でも見られ、2カ月以上持続する症状」を「新型コロナ後遺症(post COVID-19 condition)」と定義している。
その症状には倦怠感や疲労感、味覚・嗅覚障害といった身体症状以外に、もの忘れや集中力の低下、うつや不安感、頭にもやがかかったかのようにぼーっとする「ブレインフォグ」と呼ばれる脳の症状なども見られ、日常生活に支障が出てしまっている人も少なくない。
厚生労働省の研究班が9月にまとめた調査によると、新型コロナに感染した成人の約1~2割に2カ月以上も後遺症と考え得る何らかの症状があり、後遺症がある人は男性よりも女性に多かったという(*1)。