美声が話題の法大・上中咲葵マネジャーは地方局アナに 内定の背景に元西武外野手の父・吉成さんの奮闘「恩返しできました」
東京六大学、東都大学の4年生の進路が、ほぼ出そろった。神宮球場での場内アナウンスが人気を集めた法大・上中咲葵(さき)マネジャー(西武学園文理)は地方局のアナウンサーとして第一歩を踏み出す。
伸びやかで優しく、しかも芯のある声。上中マネジャーは青春を燃やした神宮球場のブースから、地方局アナへと旅立つ。その美声は「谷保さんみたいだ」とロッテの場内アナウンスを33年間務めた谷保恵美さんと重なり、話題になった。
「あっという間の4年間でした。自分の人生の軸にあるのがアナウンス。最後の秋は集大成という感じで、丁寧に取り組みました」
父は元西武外野手の吉成さん(55)。現在は若獅子寮の副寮長を務める。その影響で物心ついた頃から野球好き。小5だった13年には西武ファンクラブの企画で、西武Dの場内アナウンスを経験した。ブースの前で素振りを繰り返す日本ハムのルーキー・大谷翔平の姿は、今でも忘れられない。
法大では野球部マネジャーとして広報担当やSNSの運用に従事しながら、将来について考えた。幼き日からプロ野球中継を見ながら、ベンチリポーターの存在に憧れていた。「現地に見に行けない方にも、ワクワクする情報を届けたい」。アナウンサーに照準を絞った。
野球部の仕事が終わると、都内のアナウンススクールに通い、終電で埼玉県内の自宅に帰宅。深夜まで復習し、翌朝は武蔵小杉のグラウンドへと向かう。多忙な日々が続いた。受験地は全国に及んだ。吉成さんが運転し、名古屋、新潟、仙台と送迎してくれた。「内定で恩返しできました」。優しさがうれしかった。
目指すべき像に「思いやりのあるアナウンサーになりたい」と言った。「主役はアナではなく、情報そのものや、一緒に共演する方。視聴者がどんな気持ちでニュースを見てくださっているか、共演している方がどんなことを考えているのか、思いやりを持って今後の人生を送っていきたいです」。新天地でも、一言一句に心を込める。(加藤 弘士)
◆上中 咲葵(うえなか・さき)2002年5月9日、埼玉・入間市生まれ。22歳。小、中学時代は吹奏楽部でクラリネットを演奏。西武学園文理では野球部マネジャーとして、20年夏の埼玉大会の代替大会準決勝で西武Dにてアナウンス。法大では2年秋のフレッシュリーグで神宮デビュー。3年からは春秋のリーグ戦、明治神宮大会でも美声を響かせた。