ロカボを選んで生野菜も頼んだ。
ロカボの等価交換
松屋でアンガス牛焼ビビン丼の並盛を選ぼうとしたところで、見慣れない選択肢があることに気がつく。
「ロカボ」
これが何を意味するか博識な俺は知っている。「ローカーボ (低糖質)」、おそらく米を低糖質な「何か」に変えるのだろう。何に交換されるのかは知らないが、選ぶ価値はある。2時間ほど前に「パン」を1つ食べたので、ご飯を普通に食べるのは多いと考えていたところだ。ためらいなく「ロカボ」を選び、いつものように「生野菜」も注文して席で待つ。
しばらくし、出されたものを見て俺は一瞬フリーズした。
「生野菜が『2皿』ある」
俺が注文した生野菜は「1皿」だけ。しかし目の前には「2皿」ある。店員のミスか、そう思ったところで牛肉が「どんぶり」ではなく「皿」の上に盛られていることに気が付き、全てを察した。
米が消え、生野菜が増えている……
これはロカボの「効果」だッ!
ロカボによって米が生野菜に「等価交換」されたッ!
店員は何も悪くなかった。純粋に俺の注文通りの品を出しただけである。疑問を口に出さず、一瞬で全てを察した自分を褒めてあげたい。
Twitterを見ると、この等価交換に困惑したのは俺だけではないようだ。
松屋で定食をロカボにするとこんなことになんのね pic.twitter.com/Rf653gUXqR
— かものはしかも👻 (@kamo_kamo555) September 10, 2021
松屋で定食をロカボ仕様にしたらビジュアル的にえらいことになった pic.twitter.com/dOAPBwWvws
— 猫賀好樹@修行中(なにを?) (@nekoga01) September 4, 2021
なんかおかしいと思ったわ
— 是 (@chihahumi3) September 9, 2021
松屋のロカボって野菜何個くんだよ pic.twitter.com/HAfwjhyykV
ここに貼ったのはごく一部で、それなりの数の人が困惑している様子が見て取れる。こうなると俺が困惑したのも当然で、システムが悪いのではないか。
もちろん松屋店内にはロカボの説明が貼ってあるが、それでいいはずがない。「調べないのが悪い」と言う人の口はテプラで塞ぐ。
あるべき姿は注文までの自然な「流れ」の中で、自然に客がロカボを理解することだ。逆らわなければ目標に必ずたどり着ける。そういう「流れ」を作らなければいけない。
松屋の食券機、牛めしのところにロカボってあるんだけど、大盛りと間違えて買う人がまあまあいるらしく、店員が説明とか変更の対応してるのを見るとUIが良くないんだろうなと
— KZ (@4KZoth2) September 8, 2021
まあどうやったら「大盛り」と「ロカボ」を見間違えるのかもよく分からないけども
上のツイートでは「ロカボ」と「大盛り」を間違える人がいるということだが、俺のようにロカボの一般的な意味を理解した上で困惑する人も多い。では松屋の何が悪かったのだろうか。
松屋のくせに気取るな
松屋で提供される野菜の盛り合わせは「サラダ」ではない。あれは「生野菜」である*1。素材そのものを料理名とする。それが松屋の流儀だ。
にも関わらず、松屋は低糖質オプションを「ロカボ」なんてハイカラな名称をつけるから客に伝わらない。 松屋の野菜は「生野菜」という呼び名が既にあるのだから、新たに名付ける必要なんてないし、別のものだと誤解する。選択肢名も「生野菜」にすれば良かったのだ。ロカボと同じ3文字で済む。それに説明では「ライスを生野菜に変更」とある。最初からそう書け。
さらに問題なのは、名称だけ取り繕って「ロカボ」やら「ロカボチェンジ」としているくせに、盛り付けまでは気が回っていないことだ。
容器まで変えるな
最初に述べたとおり、俺は「アンガス牛焼ビビン丼 (ロカボ) 」と「生野菜」を注文した。ではどちらが「ロカボの生野菜」で、どちらが「生野菜の生野菜」か分かるだろうか。
松屋でロカボ選んで生野菜も頼むとこうなるのか pic.twitter.com/FdGlLbX71J
— 骨しゃぶり (@honeshabri) September 6, 2021
分かるはずがない。どちらも同じ容器に同じように盛られているからである。そして「アンガス牛焼ビビン」は別の皿の上に寂しく鎮座している。俺が注文したのはロカボとはいえ「丼」ではなかったのか。
1年前、すき家で低糖質オプション (ライト) を選んだ時はちゃんと「牛丼」で出てきた。
久しぶりにすき家に来た。オタクらしくチー牛にしようと思ったけど、意識高いオタクなのでライトにした。
— 骨しゃぶり (@honeshabri) September 12, 2020
すき家の低糖質はサラダ+豆腐なのだが、正しくどんぶりに盛られ、上には肉が乗っている。そのため追加でサラダを頼んだとしても、松屋と違ってサラダが倍になったようには見えない。
また、松屋の肉の別皿盛りは見た目だけではなく、機能性の観点からも問題である。
見ての通り生野菜の皿は、生野菜のみを盛ることに最適化されたサイズとなっている。上からかけるのは液体のドレッシングのみであり、追加の固形物を乗せることは考慮されていない。つまり松屋は俺に、アンガス牛焼ビビンを単体で食べることを要求したのだ。俺は牛丼を注文したのに。
こういう気の利かないところが松屋である。
終わりに
低糖質や低カロリーを求める顧客に対し、米の代わりに生野菜を出す。この解決策は悪くない。目的を達せられるのもそうだが、野菜を多く食べられるのが良い。松屋の野菜は約90gであり*2、2皿頼めば約180gとなる。つまり1日に必要な野菜の半分を摂れるというわけだ*3。
また、生野菜という既に提供しているメニューを活用するのだから、オペレーションの観点からも合理的である。これは低糖質オプションを追加することによるコスト増加を最小限にできるわけで、財布にとってもやさしい。つまり米の代わりに生野菜とは、コストパフォーマンスに優れた解決策と言えるだろう。
だが優れた解決策も、パッケージが悪ければ顧客の満足感は低下する。松屋は気取って「ロカボ」なんて名付けるべきではなかった。ストレートに「生野菜」と書いておけば良かったのだ。もし4文字まで許されるなら「米を野菜」がいいだろう。松屋の客にはその方が伝わる。
そして、どんぶりに入れて出せ。
丼の記事
*1:正式名称は「彩り生野菜」であるが、セット名は「生野菜セット」となる。彩り生野菜|メニュー|松屋