はじめに
先日、個人向けのGemini Code Assistの無償版がプレビュー提供されました。
これにより、個人開発者でも無料で高度なAIによるコーディングサポートを受けることができるようになりました。
この記事ではIDEへの導入から実行、便利な機能について紹介をします。
AIコーディングツールへの想い
公式ブログにてGoogle社はGemini Code Assistの公開にあたり次のような思想を述べていました。
十分なリソースを持つ組織はエンジニア チームに最新の AI 機能を提供していますが、一方、学生、趣味のプログラマー、フリーランサー、スタートアップが同じレベルのツールにアクセスすることは困難です。世界の開発者人口が 2028 年までに 5,780 万人に成長すると予測されている中、私たちは経済的な制約なく、誰もが将来の開発においてスタンダードなデジタル ツールとして、AI を利用できるようにすべきだと考えています。
AIツールが広くアクセス可能になることで、さまざまなバックグラウンドを持つエンジニアが自己成長や技術習得、生産性向上に役立てられるようになると思います。特に、開発者体験を豊かにするAIツールを経済的な制約なく無償で使えるというのは非常に有意義なことだと考えています。
Gemini Code Assistとは
概要
Gemini Code AssistはGoogle Cloud Next ’24で発表されたAIコーディング支援ツールです。このツールでは Google Cloud が提供する生成AIの Geminiモデル を活用し、AIによるコード生成やリファクタリング、ドキュメント生成など実装者のコーディング速度を向上させることができます。
直近のアップデートにより Gemini2.0 のモデルが搭載されており、1ヶ月あたり最大180,000件のコード補完(1日あたり6000件)という実質的にほぼ無制限のAI支援を無償で受けることが可能になっております。
比較
Gemini Code Assistにはいくつかプランが設けられており、プランによって月額費用や利用可能な機能が分かれています。
公式HPにて公開されている内容からいくつか比較項目を以下に記載しています。(2025年3月現在)
Individuals (プレビュー) |
Standard | Enterprise | |
月額費用 | 0ドル/ユーザー | 19ドル/ユーザー | 45ドル/ユーザー |
ユースケース | 学生、趣味 | ビジネス向けの開発者、IT管理者 | ビジネス向けの開発者、IT管理者 |
IDEにおけるコード補完やコード生成 | ◯ | ◯ | ◯ |
開いているファイルのコンテキストを利用した会話型アシスタントの実行 | ◯ | ◯ | ◯ |
知的財産とコンプライアンス | × | ◯ | ◯ |
IDE の GitHub、GitLab、Bitbucket のコードベースからのコード提案 | × | × | ◯ |
Firebase での Gemini 利用
・チャットによるコード生成など |
◯ | ◯ | ◯ |
Colab Enterprise の Gemini 利用 | × | ◯ | ◯ |
アプリケーション統合における Gemini 利用 | × | × | ◯ |
特定のサービスでの利用を除けば、IDEでの開発において問題なく利用ができますのでAIコーディングツールを使ってみたいという方には最適ではないでしょうか。
もう少し細かくプランごとの比較をみたい場合は公式HPをご確認ください。
他社ツールとの比較
今回紹介するツール以外の代表的なAIコーディングツールとしてGitHub Copilotが挙げられます。
月額費用は今回紹介するツールと同じく無料ですが、月当たりのコード補完回数やチャットメッセージ回数に違いがあるようです。
Gemini Code Assist Individuals |
GitHub Copilot Free | |
月額費用 | 0ドル/ユーザー | 0ドル/ユーザー |
月あたりのコード補完回数 | 6,000回 | 2,000回 |
月あたりのチャットメッセージ | 240回 | 50回 |
他社モデルの利用 | × | ◯ |
比較だけをみるとGemini Code Assistの方がコード補完回数とチャットメッセージ回数も多く継続的な開発体験という面では良さそうに思います。
ただしGitHub Copilotでは利用する生成AIモデルとして、ClaudeモデルやGPTモデル、さらにはGeminiモデルも選択可能になっております。使い分けとしてはこちらの点も1つの要素になってくるかと思います。
始め方
事前準備
Gemini Code AssistをIDEで利用するにあたり、今回は以下2つを用意してください。
- Googleアカウント(Google Cloudアカウント)
- Visual Studio Code(CursorなどもOK)
拡張機能の導入
Visual Studio Codeで使用するために以下の格納機能をインストールします。
- google.geminicodeassist
インストールが終わるとサイドメニューにGemini Code Assistのタブが追加されます。
「Sign in with Google」を押下すると、Googleのログインフォームが表示されますので手順に沿って認証を進めます。
認証が完了すると以下のWebページが表示されます。
サンプルコードを作成してみる
今回は Gemini Code Assistを使って簡単なHTMLフォームを作成してみたいと思います。
以下のプロンプトを入力して送信します。
- 名前、メール、メッセージ用のフィールドがあるシンプルな HTML フォームを作成し、[送信] ボタンを追加してください
生成されたHTMLのソースコードを使ってファイルを作成するとこのようになりました。
少し簡素すぎるためCSSでスタイルを追加して入力フォームのようにし、送信ボタンを押すとポップアップを表示するようにプロンプトを投げました。
ソースコード上で指示を与えると、実装するコードの候補を出してくれます。
以下は性別の項目を新しく追加しています。
ここまでプログラミングやマークアップをすることなく、生成AIに日本語で指示を与えるだけで画面を作成できています。
このレベルの実装内容ではあまり実装コストはかかりませんが、これが何十もの画面や複雑な機能になってくると生成AIによるコード生成が生産性向上に大きく貢献してくれます。
コード生成やコード補完、タイポや規約のチェック、リファクタリングを行ってくれる相棒として、ペアプログラミングを進めていけることがこのツールの強みだと思います。
コードレビューを試してみる
Gemini Code AssistはGitHubに統合することができ、プルリクエストを作成するとGeminiがソースコードの概要を作成し、生成AIによるソースコードレビューを行ってくれます。
GitHubへの導入
以下のリンクよりGitHub上のリポジトリにGemini Code Assistを導入します。
リポジトリ選択では全てのリポジトリを選択か、特定のリポジトリを選択可能です。
インストールを進めると、Gemini Code AssistのGitHubへのログイン認証画面が表示されますので画面の通り進めます。
具体的にはGitHub操作における権限付与やプライバシーポリシーの承諾などのステップがあります。
すべてのステップが完了すると以下の画面が表示されます。
プルリクエストを作成してみる
手前の手順で作成したサンプルコードでプルリクエストを作成してみます。
プルリクエストもせっかくですのでGemini Code Assistで作成してみます。
チャットメッセージでは@
をつけることでファイルを選択することができます。
プルリクエストの作成ではPULL_REQUEST_TEMPLATE.md
を作っている場合も少なくないと思いますので、テンプレートファイルに準拠して概要を作成してもらいます。
@PULL_REQUEST_TEMPLATE.md
テンプレートに準拠して日本語でプルリクエストの概要を作成してください。
上記のプロンプトで作成すると以下のように生成されました。
ほとんど想定通りに作成されており、今回の検証で使うプルリクエストとしては問題なさそうです。
プルリクエストを作成すると、以下のようにReviewrsの項目へgemini-code-assist[bot]
が自動で追加されます。
そして少し経過すると、変更概要とコードレビューがコメントとして追加されます。
各コメントでは次の内容が表示されます。
変更概要:プルリクエストにおける変更の「ハイライト」や「変更履歴」
コードレビュー:プルリクエストにおけるソースコードの「レビュー結果」や「マージへの準備」
現状は英語での回答になっていますが、今後日本語で回答をさせることも可能になるとは思います。
実はプルリクエスト作成時に2つの実装ミスを忍び込ませていました。
- ラベル名の脱字:「メッセージ」→「メッセジ」
- ポップアップの表示項目不足:「性別」がポップアップに表示されない
コードレビューを見てみると、実装ミスをしっかりと指摘してくれていることがわかります。
実際のレビュワーがコードの確認を行う前に、AIによって1次レビューを行えるため人的コストの削減につながるのではないでしょうか。
さいごに
いかがだったでしょうか。Gemini Code Assistの無償版は、個人開発者にとって非常に強力なツールになることは間違い無いと思います。VSCode上でのコーディング支援に加え、GitHubでの自動レビュー機能など、開発の効率を大幅に向上させることができます。
特にエラーチェックやリファクタリング提案など、開発者が見逃しがちな問題を早期に指摘してくれる点が大きな魅力に思います。
GitHubでのGemini利用においてはコマンドで手動実行できたり、動作をカスタマイズできるようですが別記事にて検証予定ですのでぜひそちらもご覧ください。
もしまだ試していない方は、この機会に無償版を導入してAIによるコーディングサポートを体験してみてください。
コーディングがもっと楽しく、効率的になること間違いないと思います!