ヤンキー型原子力潜水艦
ヤンキー型原子力潜水艦(ヤンキーがたげんしりょくせんすいかん Yankee class submarine、проект 667А "Навага",667АУ "Налим",667АМ "Навага-М",667АК "Аксон-1",09774 "Аксон-2",667АТ"Гриша",667М "Андромеда")は、ソビエト海軍が運用していた原子力弾道ミサイル潜水艦。ホテル型原子力潜水艦の後継艦級として計画された。
ヤンキー型原子力潜水艦 | |
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損傷した K-219 | |
基本情報 | |
建造所 | セヴェロドヴィンスクとコムソモリスク |
運用者 | ソビエト連邦海軍 |
建造数 | 34隻 (喪失1隻、退役33隻) |
前級 | ホテル型原子力潜水艦 |
次級 | デルタ型原子力潜水艦 |
要目 | |
排水量 |
浮上時:7,700トン 潜航時:9,300トン |
長さ | 132 m |
幅 | 11.6 m |
吃水 | 8 m |
推進器 | VM-4型加圧水型原子炉2基、蒸気タービン4基2軸 |
速力 |
浮上時13ノット 潜航時27ノット |
航続距離 | 無限 |
乗員 | 120人 |
兵装 |
ヤンキー I: R-27 (SS-N-6 Serb) SLBMの発射管16基 533 mm魚雷発射管4基 400 mm魚雷発射管2基 ヤンキー II: R-31 (SS-N-17 Snipe) SLBM発射管12基 (推定) |
ヤンキー型の名称はNATOコードネームによるもので、ソビエト側の名称はそれぞれ
- ヤンキーI型-プロイェクト667А"ナヴァガ"及び"ナリム"
- ヤンキーII型-プロイェクト667АУ"ナヴァガМ"
である。
多くの派生型があることが知られており、それぞれのソヴィエト側名称は、
- ヤンキー・ポッド(Yankee Pod)-プロイェクト667АК"アクソン-1"及びプロイェクト09774"アクソン-2"
- ヤンキー・サイドカー(Yankee Sidecar)型-プロイェクト667М"アンドロメダ"
- ヤンキー・ノッチ(Yankee Notch)型-プロイェクト667АТ"グリシャ"
- ヤンキー・ストレッチ(Yankee Stretch)型-プロイェクト09780
である。
これら派生型と合わせて34隻がコムソモルスク・ナ・アムールおよびセヴェロドヴィンスクの造船所で、1967年から1972年にかけて就役した。1990年にはほぼ全艦が退役している。
概要
編集本艦級はR-13を装備していたホテルI型(658型)原子力潜水艦と異なり、水面への浮上の必要が無く、水中から潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射できるという点で優れている。だが、搭載しているR-27/RSM-25(SS-N-6 Serb)の射程は2,000 km(改良型では3,600-4,000 km)と短く、危険を冒して敵が航空優勢・制海権を持つところまで移動しなければならなかった。この欠点は次世代のデルタ級原子力潜水艦がより長射程のSS-N-8を搭載することにより改善されている。
なお、本級は、アメリカのジョージ・ワシントン級戦略原潜に似た外見であるが、実は、ソ連の諜報機関が入手したジョージ・ワシントン級戦略原潜の各種資料を元に設計された原潜であった。当初は横置きの弾道弾を縦に回転して発射するという第667号計画として進められていたが、ニキータ・フルシチョフ首相の前で模型まで用意して667号計画の説明を行おうとしたら、運悪く模型がフルシチョフの目の前で壊れてしまった。これに激怒した彼は、「模型でさえ壊れるような艦など、実際に造っても壊れてしまうだろう」と言って667号計画を中止させ、改めて、改正版の667A号計画として再スタートして出来上がったのが本型であった。このことは潜水艦隊の将兵にもある程度知れ渡っていたため、本型は自嘲を込めて「イワン・ワシントン」というあだ名で呼ばれていた。
諸元(ヤンキーI型)
編集- 全長:128m
- 全幅:11.7m
- 喫水:7.9m
- 水上排水量:7,850t
- 水中排水量:10,100t
- 機関:ОК-700
- 出力:180,000kW
- 速力:水上16kt 水中27kt
- 乗員:114名
- 武装
- 533mm魚雷発射管×4、600mm魚雷発射管×2、魚雷×16
- D-7発射管×16(潜水艦発射弾道ミサイルR-27/RSM-25)
比較表
編集955型(ボレイ型) | 941型(タイフーン型) | 667B型(デルタ型) | 667A型(ヤンキー型) | 658型(ホテル型) | ||
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船体 | 水中排水量 | 24,000 t | 33,800 – 48,000 t | 10,000 t(I型) 10,500 t(II型) 10,600 t(III型) 12,100 t(IV型) |
9,300 t | 5,500 t |
全長 | 170 m | 175 m | 139 m(I型) 155 m(II,III型) 167 m(IV型) |
132 m | 114 m | |
全幅 | 13.5 m | 23 m | 11.7 m(I,II,III型) 12.2 m(IV型) |
11.6 m | 9.2 m | |
吃水 | 9.0 m | 12.0 m | 8.4 m(I型) 8.6 m(II型) 8.7 m(III型) 8.8 m(IV型) |
8.0 m | 7.31 m | |
主機 | 機関 | 原子炉+蒸気タービン+発電機 | 原子炉+蒸気タービン | |||
方式 | ギアード・タービン | |||||
出力 | 不明 | 49,600 hp | 52,000 hp(I型) 55,000 hp(II型) 60,000 hp(III,IV型) |
20,000 hp | 39,200 hp | |
水中速力 | 25 kt | 27 kt | 26 kt(I型) 25 kt(II,III型) 24 kt(IV型) |
27 kt | 26 kt | |
兵装 | 水雷 | 533mm魚雷発射管×6門 | 650mm魚雷発射管×2門 533mm魚雷発射管×4門 |
533mm魚雷発射管×4門(I-IV型) 406mm魚雷発射管×2門(I-III型) |
533mm魚雷発射管×4門 406mm魚雷発射管×2門 | |
SLBM | 3M14×16基 | RSM-52×20基 | R-29×12基(I型) R-29×16基(II-IV型) |
R-27×16基 | R-13/R-21×3基 | |
同型艦数 | 14隻予定 | 6隻 | 18隻(I型) 4隻(II型) 14隻(III型) 7隻(IV型) |
34隻 | 8隻 |
派生型
編集ヤンキーII型(667AM型)
編集搭載弾道ミサイルを固体燃料のR-31(SS-N-17)に換装したタイプ。R-31の性能が期待した程ではなかったため(R-27より大型化したにもかかわらず、射程が1,400kmしかなかった)、この改造を受けたのはK-140ただ1隻のみとなった。
ヤンキー・ノッチ型(667AT型「グリシャ」)
編集弾道ミサイルを撤去し、そのスペースに魚雷および巡航ミサイルを発射する533mm魚雷発射管×8および弾庫を設置。K-395、K-408、K-418、K-423、K-415、K-399、K-236の7隻が改造。
ヤンキー・サイドカー型(667M型「アンドロメダ」)
編集耐圧船殻外に3M-25(SS-NX-24)巡航ミサイルの発射管×12を装備。K-420がこの改造を受け、発射テストを行うが、3M-25がソ連崩壊後に開発中止となったため、1隻のみに留まった。
ヤンキー・ポッド型(667AK型「アクソン-1」および09774型「アクソン-2」)
編集弾道ミサイルを撤去し、電子機器および艦尾縦舵上に流線型のポッド(曳航式ソナー・アレイを収納)を設置し、曳航式ソナー・アレイおよび関連機器の試験に従事。改装にともない、第1級特殊用途大型原子力潜水艦に再分類。K-403がこの改造を受け、艦番号がKS-403に変更された。
ヤンキー・ストレッチ型(09780型)
編集ミゼットサブの母艦に改造。K-411がこの改造を受け、艦番号がKS-411に変更、のちにBS-411となった。
参考文献
編集- A.S.Pavlov, Gregory Toker (translator), Norman Friedman (editor, English language edition), 1997, Warships of the USSR and Russia 1945-1995, [Annapolis, Maryland]: Naval institute press, ISBN 155750671X.
- Peter Huchthausen, et al., 1997, Hostile waters, St Martins Press, ISBN 0312169280.→三宅真理訳、1998、『敵対水域』文藝春秋、ISBN 4163537406→2000、文藝春秋(文春文庫)ISBN 4167651033
- K-219沈没事件のルポルタージュ。
関連項目
編集出典
編集外部リンク
編集- Loss of Yankee SSBN —— アメリカ海軍作戦部潜水艦戦部の公式誌Undersea Warfare Magazineの掲載記事。沈没したK-219のルポルタージュと艦長へのインタビュー。
- National Geographic: Yankee class accessed March 14, 2004.
- NATO Code Names for Submarines and Ships accessed March 14, 2004.
- Federation of American Scientists: Yankee class accessed June 11, 2006.
- Bellona Report: Project 667 A (Nalim, Navaga) - Yankee Class accessed June 11, 2006.
- World Navies Today: Russian Submarines accessed June 11, 2006.
- Jane's Fighting Ships of the World, 1994.