七尾湾
七尾湾(ななおわん)は、石川県の能登半島に位置する湾であり、広義の意味での富山湾の支湾の一つを形成している。
七尾湾 | |
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七尾湾を東から望む。能登島を挟んで右が七尾北湾、左奥が七尾西湾、左手前が七尾南湾。2019年9月撮影。 | |
上位水域 | 日本海(富山湾) |
国 | 日本 |
島 | 能登島 |
主な沿岸自治体 | 七尾市、穴水町 |
地理
編集狭義には鳳珠郡穴水町恵比須崎と七尾市能登島町勝尾崎を結ぶ線から、七尾市能登島勝尾崎と七尾市観音崎を結ぶ線に囲まれた海域であり、日本海に通じる[1]。湾の総面積は183㎢に達し、日本列島の日本海側の沿岸における最大級の内湾となっている。水深は概して浅く、最大深部でも湾口部で46メートル、湾内で58メートルである[1][2]。
湾内は能登島を軸に北湾・西湾・南湾に分かれており、南湾には七尾港、西湾には和倉温泉がある。
七尾北湾
編集西端が七尾市の中島町長浦と能登島通町を結ぶ線、東端が大口瀬戸[注 1]に囲まれた海域を指す。一般的にツインブリッジのとの北側が北湾、南側が西湾である。
湾内には穴水港があるほか、七尾市に属する島々(大島・水越島・重蛇島)がある。
穴水町部分を「穴水湾」(あなみずわん)と呼ぶ場合がある[3]。穴水湾の沿岸部にはリアス式海岸が目立つ[2]
定置網によるブリ、タラの漁が行われている[4]。また、「ボラ待ちやぐら」と呼ばれる日本最古の漁用のヤグラが残されている[1]。
七尾西湾
編集七尾市西部に位置し、七尾北湾の西端から能登島大橋の架橋部分西側に囲まれた海域。
湾内には種ヶ島がある。
カキ、海苔の養殖が行われている。特産品にナマコがある[4]。
七尾南湾
編集七尾市の能登島大橋の架橋部分東側から小口瀬戸[注 2]に囲まれた海域を指す。
自然環境
編集上記の通り、養殖業もふくめて漁業が盛んであり、多様な魚介類や海藻類の生息地になっている。
現代の日本列島の日本海側の沿岸におけるアマモやホンダワラの重要な生息地であり[5]、それらの藻場に恩恵を受ける希少生物も多いことから環境省が指定する「日本の重要湿地500」にも選ばれている[6]。地形に潮流が影響されるためか、ホンダワラ類の藻場(ガラモ場)は北湾と南湾に、アマモの藻場は西湾に目立つ[1]。
富山湾をふくむ能登半島は古代から捕鯨活動が行われていた[7]ほどにクジラやイルカが生息していたとされており、能登島でも縄文時代にイルカ猟が行われていたことが判明している[8]。2001年ごろから、この緯度と気候においては珍しくミナミハンドウイルカが定着しており[注 3][9]、イルカウォッチング等の観光に活かされており、能登島はイルカの生息もあって国土交通省による「島の宝100景」に選定されている[8]。ニホンアシカも分布していたとみられ、著名な真脇遺跡もふくめ、やはり沿岸地域の遺跡から本種に該当すると思わしい鰭脚類の骨も出土している[9][10]。
2011年には、一帯における里山および里海における自然と経済活動の関係性が「能登の里山里海」として世界農業遺産に登録された[11]。
閉鎖性海域であるために潮流が制限される傾向にあり、人間活動による環境への負荷も加わって貧酸素水塊が発生しやすく、たとえば伊勢湾や大村湾などと同様に該当水域における環境問題の一つになっている。アマモの藻場の減少もこれに拍車をかけているとされる[2]。
沿岸自治体・設置港
編集関連画像
編集架橋
編集脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b c d e f 閉鎖性海域ネット, 2019年, 33. 七尾湾, 国際エメックスセンター, 環境省
- ^ a b c 能登の森里海研究会, 海域の概要
- ^ 「穴水湾」『日本大百科全書(ニッポニカ)』 。コトバンクより2024年1月7日閲覧。
- ^ a b c 「七尾湾」『改訂新版 世界大百科事典』 。コトバンクより2024年1月7日閲覧。
- ^ 能登半島 七尾湾
- ^ 七尾湾里海マップ
- ^ 能登・富山湾 捕鯨の起源か 古代遺跡の4割から骨 全国屈指の出土率 網漁の可能性も
- ^ a b イルカの棲む島
- ^ a b 平日哲夫, 1992年,『北陸における海獣類出土遺跡の環境と動物遺体組成』, 日本海の鯨たち:日本海セトロジー研究, 1-8頁
- ^ 麻柄一志, 2021年, 第6回 先史時代のヒトと自然, 富山市民大学 立山黒部ジオパークを知る
- ^ 七尾里山里海百景
- ^ 中島町の紹介