PERFECT DAYS
『PERFECT DAYS』(パーフェクト・デイズ、原題:Perfect Days)は、2023年に日本・ドイツ合作で制作されたドラマ映画。
PERFECT DAYS | |
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Perfect Days | |
監督 | ヴィム・ヴェンダース |
脚本 |
ヴィム・ヴェンダース 高崎卓馬 |
製作 | 柳井康治 |
製作総指揮 | 役所広司 |
出演者 |
役所広司 柄本時生 中野有紗 アオイヤマダ 麻生祐未 石川さゆり 三浦友和 田中泯 |
撮影 | フランツ・ルスティグ |
編集 | トニ・フロッシュハマー |
配給 | ビターズ・エンド |
公開 |
2023年12月21日 2023年12月22日[1] |
上映時間 | 124分 |
製作国 |
日本 ドイツ |
言語 | 日本語 |
興行収入 | 約2570万ドル(約37億円)(2024年9月時点) |
ヴィム・ヴェンダース監督が役所広司を主役に迎え、東京を舞台に清掃作業員の男が送る日々を描く[2][3]。第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、役所が日本人俳優としては『誰も知らない』の柳楽優弥以来19年ぶり2人目となる男優賞を受賞したほか[4][5]、作品はエキュメニカル審査員賞を受賞した[6][7]。
また2024年の第96回アカデミー賞では日本代表作品として国際長編映画賞にノミネートされた[8][9]。
概要
編集映画製作のきっかけは、渋谷区内17か所の公共トイレを刷新する日本財団のプロジェクト「THE TOKYO TOILET」である。プロジェクトを主導した柳井康治(ファーストリテイリング取締役[10])と、これに協力した高崎卓馬が、活動のPRを目的とした短編オムニバス映画を計画。その監督としてヴィム・ヴェンダースに白羽の矢が立てられた[11]。
小津安二郎の事跡をたどる『東京画』(1985)を監督するなど日本とのつながりの深さで知られたヴィム・ヴェンダースは、当初、短いアート作品の製作を考えていたが[11]、日本滞在時に接した折り目正しいサービスや公共の場所の清潔さに感銘を受け、長篇作品として再構想[12]。ヴェンダースが日本の街の特徴と考えた「職人意識」「責任感」を体現する存在として主人公を位置づけ、高崎卓馬の協力を得て東京を舞台とするオリジナルな物語を書き下ろした[13]。
主人公の男に与えられた「平山」という名前は、『東京物語』や『秋刀魚の味』で笠智衆が演じた登場人物をはじめ、小津安二郎監督の作品に繰り返し使われる名前である[14]。
ヴェンダースのドキュメンタリー映画『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』でカメラを担当したフリッツ・ルスティグが本作で撮影監督をつとめ、東京都内を中心に17日間にわたって撮影が行われた[15]。役所ら俳優はプロの清掃員の協力を得て役作りを行っている[16][17]。
製作は Master Mind(日本)、スプーン(日本)、ヴェンダース・イメージズ(独)。海外配給はマッチ・ファクトリー、日本国内の配給はビターズ・エンド[18]。124分。
あらすじ
編集東京スカイツリーに近い古びたアパート。中年の清掃員・平山は、毎朝薄暗いうちに路地をはく箒の音で目をさます。台所で顔を洗い、口髭を切り揃え、鉢植えに霧吹きで水をやる。作業着に着替えると、アパートを出て空を見上げ、駐車場の自動販売機で毎日同じ缶コーヒーを買ってワゴン車に乗り込む。車内では古い曲ばかりをカセットテープで流し続ける。パティ・スミス、ルー・リード、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド。行き先は渋谷区内に点在する公衆トイレだ。車から清掃道具を取り出して、隅々までていねいに磨き上げていく。
平山のもとへ、若い同僚のタカシ(柄本時生)が遅れてやってくる。タカシはどうせ汚れるのだからと作業はいいかげんにすませ、通っているガールズ・バーのアヤ(アオイヤマダ)と深い仲になりたいが金がないとぼやいてばかりいる。平山は意に介さず、自分の持ち場を黙々とこなしつづける。
誰もが見て見ぬふりをするような仕事。別の公園(鍋島松濤公園)では、平山は公衆トイレで泣いていた迷子を見て、手を繋いで外に連れ出してやるが、やってきた母親は平山と目を合わせることもなく、子供の手をぬぐって去って行く。
昼休みには、仕事場近くの神社(代々木八幡宮)でささやかな昼食をとる。境内の木洩れ日を見上げて笑みをうかべ、古い小型フィルムカメラで写真を撮ることもある。ときどき宮司に会釈をして、鉢植えにするモミジの芽をていねいに掘り返す。隣のベンチで時折見かけるOL風の女は、そんな平山を怪訝そうな目で見ている。神社の近くのトイレ(代々木八幡)では、仕事のかたわら、洗面台の隙間に隠したメモ用紙を介して、平山と見知らぬ誰かとの一日一手の三目並べが進行している。ホームレス風の老人(田中泯)が、別の公園(代々木深町小公園)で太極拳風の運動を繰りかえしたり、街をさまよったりしているのもずっと気になっている。
仕事から戻ると、自転車で街に出かける。銭湯で身体を洗い、地下商店街の大衆食堂で安い食事を済ませる。家に戻ったあとは、布団の中で眠くなるまで文庫本を読む。眠りに落ちた平山の脳裏には、その日に目にした光景が多重露光のモノクロ映像となってゆらめいている。
翌日、仕事場(代々木深町小公園)で平山とタカシが作業をしていると、タカシが通っているガールズバーの店員・アヤがやってくる。タカシは仕事後にアヤとデートに行こうとするが、タカシのバイクが動かず、平山のワゴン車に三人で乗り込んで移動する。アヤは車内で平山のカセットテープを聴き、そのアナログな音に興味を示す。アヤは車を降りるとき、平山の目を盗んでカセットテープをバッグに滑り込ませる。
タカシはアヤのいるガールズバーへ行く金がないとぼやき、平山のカセットテープが金にならないかと思い立つ。平山を連れて下北沢の中古店を訪れ、カセットテープを店員に見せると、思いのほか高い値がつく。それを知ったタカシは興奮して売ろうとするが、平山はそれを制止して自分の所持金をいくらか渡す。その帰り、平山の車はガス欠を起こして止まってしまい、外食する金もなくなったため夕食をカップヌードルで済ませる。翌日、アヤはカセットテープを返しに平山の元に現れ、返す前にもう一度聞きたいと申し出る。音楽を聴くうちにアヤはふいに涙ぐみ、平山の耳にキスをして立ち去る。
休日、平山は部屋の掃除をし、コインランドリーで洗濯をすませ、カメラ屋でフィルムを現像に出し、古本屋で文庫本をのぞく。そして和装のママが切り盛りする小さな小料理屋へ通う。彼女は常連たちの求めに応じて、歌を披露することもある。ママはカウンターの向こうで、「なぜずっと同じではいられないのか」と世の中が変わってゆくことを嘆くが、平山は何も言わない。
ある日、平山が仕事から帰ると家出してきた姪のニコ(中野有紗)がアパートの前で待っていた。ニコは平山の妹(麻生祐未)の娘で、妹は平山とは世界が違うのだから会ってはならぬと言い渡しているらしい。翌日、ニコは平山に同行し、仕事場でのトイレ掃除を手伝ったり、ともに神社で昼食を取ったり、自転車で銭湯に行ったりする。平山との会話のなかでニコは平山の価値観を知る。
やがてニコの母親は運転手付きの高級車でニコを連れ戻しにやってくる。平山と短く言葉を交わすなか、平山がかつては妹と同様に豊かな暮らしをしていたらしいこと、あるとき平山がその生活を捨てて家を出たらしいことがかすかに暗示される。別れぎわに平山は思わず妹を無言で抱き寄せる。二人が去ったあと、平山の目に涙があふれだす。
次の日、仕事中の平山にタカシが電話をかけてきて、仕事をやめると言う。雇い主に連絡しても代わりがいないと言われ、仕方なく平山はタカシの持ち場(七号通り公園、恵比寿駅西口他)も遅くまで巡回することになる。翌日、平山が仕事場(恵比寿東公園)に向かうと、タカシの代わりに別の清掃員の女(安藤玉恵)が現れ、事は解決する。
平山がママの小料理屋を早めに訪れると、店内でママと見知らぬ男が抱きあっているのに出くわし、慌ててその場を離れる。缶ハイボールを買って橋の下であおっているとその男(三浦友和)が現れ、ママと離婚した元夫だと名乗る。自分がガンを再発したと知り、彼女に会っておきたかったのだと言う。川縁に二人で並んでハイボールを飲んでいると、男は川面に映る街の灯りと影を眺めながら、影は重なると濃くなるのか、何も変わらないのかとひとりごちる。重なった二人の影を見て、何も変わらないんじゃないかと男が言うと、平山は「なんにも変わらないなんてそんな馬鹿な話、ないですよ」と男につぶやく。平山と男は橋の下で影踏みに興じて時間を過ごす。家に帰って眠りについた平山の脳裏には、川で見た、水面に散乱する光の網や影の光景がゆらめている。
翌日、いつもどおり車で仕事に向かう平山。朝焼けにつつまれた首都高を走る車の中で、平山の表情には涙と笑いの交錯する感情がしだいに溢れかえってくる。
登場人物
編集- 平山:役所広司
- THE TOKYO TOILETプロジェクトのトイレ清掃員。仕事にプライドを持っており、自作した道具も駆使して自分の持ち場を完璧に磨き上げる。極めて寡黙で、仕事中はほとんど言葉を発することがなく、タカシには「何考えてるのかわからない」と評される。清掃中でも利用者が現れると作業を中断してトイレの外に出る。仕事中は青いワゴン車で移動し、後部座席は掃除道具でいっぱいになっている。タカシと二人で担当するトイレもあれば、各々一人で作業するトイレもある。
- 自宅は東京スカイツリーの近く、神社に隣接した古びたアパートで、毎日規則的な生活を送る。そのため、銭湯の客や大衆食堂の店員などにまで顔を覚えられている。趣味が多く、磁気カセットテープでの音楽鑑賞、古本収集と読書、白黒のフィルムカメラ、幼木の収集(苗木を湯のみに入れ、紫色の植物育成ライトで照らして涵養している)などなど。特に木に対する思い入れは深く、ニコに対して神社のモミジを「友達」と説明した。
- タカシ:柄本時生
- 平山と共にトイレ清掃をする若い後輩。どうせすぐ汚れるのだからと適当に作業をこなし、平山の仕事ぶりを「やりすぎ」と評する。通っているガールズ・バーのアヤ(アオイヤマダ)と深い仲になりたいが、「金がないと恋もできない」とぼやいてばかりいる。自分の感情や他人の良し悪しを評価する際、「10段階中の9」といった言い回しを多用する。
- ニコ:中野有紗
- 平山の姪。ケイコの元から家出してきて、平山のアパートに転がり込んでくる。平山とは長らく会っていなかったようで、平山ははじめ誰だか思い出せなかった。平山を「おじさん」と呼び、初めての家出だが「家出をするならおじさんのところ」と決めていた。ケイコには「平山とは住む世界が違う」と言われてるらしい。
- アヤ:アオイヤマダ
- ガールズバーの店員でタカシに思われている。
- ケイコ:麻生祐未
- 平山の妹でニコの母。平山とは対照的に豊かな暮らしをしている。平山と短く交わされる言葉の中で、平山が平山たちの父親と反目して家を飛び出し、今の生活に身を投じたらしいことが暗示される。
- ママ:石川さゆり
- 平山のアパートの近くで小料理屋を切り盛りする和装のママ。平山によると5、6年前から店を始めたらしい。平山は開業した頃からの常連でママから贔屓されているが、そのことを他の客からからかわれている。客にせがまれて、ギターを弾く客(あがた森魚)に合わせて歌を歌うこともある。
- 友山:三浦友和
- 約7年前にママと離縁したママの元夫ですでに再婚している。
- ホームレス:田中泯
- 平山が街中で時折目にするホームレス。肉体美が荘厳に描かれる。
その他の登場人物
編集- 竹ぼうきの婦人:田中都子
- 酔っ払いのサラリーマン:水間ロン
- 飛び出してきた子供:渋谷そらじ、岩崎蒼維
- 迷子の子供:嶋崎希祐
- 母親:川崎ゆり子
- 赤ちゃん:小林紋
- 神主:原田文明
- 旅行客:REINA
- 銭湯の店員:三浦俊輔
- 銭湯の老人:古川がん
- 居酒屋の常連客・かっちゃん:深沢敦
- 居酒屋の常連客:田村泰二郎
- 居酒屋の店主:甲本雅裕
- 年配女性:岡本牧子
- 中古レコードショップの店員:松居大悟
- 中古レコードショップの客:高橋侃、さいとうなり、大下ヒロト
- 野良猫と遊ぶ女性:研ナオコ
- 神社で会うOL:長井短
- 銭湯の年配男性客:牧口元美、松井功
- でらちゃん:吉田葵
- 写真屋の主人:柴田元幸
- 古本屋の店主:犬山イヌコ
- 小料理屋の常連客:モロ師岡、あがた森魚
- 女子高校生:殿内虹風
- ケイコの運転手:大桑仁
- 電話の声:片桐はいり
- タクシー運転手:芹澤興人
- 駐車監視員:松金よね子
- 清掃員・佐藤:安藤玉恵
スタッフ
編集- 監督:ヴィム・ヴェンダース
- 脚本:ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬
- 企画:柳井康治
- エグゼクティブプロデューサー:役所広司
- プロデュース:ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬、柳井康治、國枝礼子、ケイコ・オリビア・トミナガ、矢花宏太、大桑仁、小林祐介
- 撮影:フランツ・ルスティグ
- 編集:トニー・フロッシュハマー
- サウンドデザイン&リレコーディングミキサー:マティアス・レンペルト
- インスタレーション撮影:ドナータ・ヴェンダース
- インスタレーション編集:クレメンタイン・デクロン
- 美術:桑島十和子
- スタイリスト:伊賀大介
- ヘアメイク:勇見勝彦
- キャスティングディレクター:元川益暢
- ロケーションマネージャー:高橋亨
- ポスプロスーパーバイザー:ドミニク・ボレン
- VFXスーパーバイザー:カレ・マックス・ホフマン
評価・受容
編集この作品はカンヌ国際映画祭で初上映され、欧米ではおおむね好感をもって受けとめられた。イギリスの『ガーディアン』紙は、この映画は感情表現をいささか抑制しすぎて曖昧さが残るものの、役所広司の聡明さ・存在感の強さが都会的な空気をささえていて魅力的な「東京映画」になっていると評した[21]。
カンヌ国際映画祭で審査員に加わった台湾の批評家、王信(ワン・シン)[22]はこの作品について、ヴェンダースの代表作のひとつとみなされている『パリ、テキサス』が、より成熟した高いレベルで日本を舞台に再び作り直されたかのようだと評し、芸術というものの本質を純粋な形で表現しきった作品としてヴェンダース生涯の傑作と呼ばれるだろうと絶賛した[23]。
アメリカの『ハリウッド・リポーター』誌は、とりわけエンディングの長いショットが、平山の人生への満足と後悔を表現する役所の見事な演技によって驚くべき効果をあげていると指摘[24]。『バラエティ』誌もそのエンディングのショットを中心に論じ、映画の構造はごくシンプルで『ベルリン・天使の詩』のような哲学的な煩悶は登場しないが、そのドキュメンタリー風の撮影手法も相まって、ヴェンダースによる劇映画としてはここ数十年でもっともすぐれた作品になったと称賛した[25]。
またアメリカの代表的な映画メディアのひとつ『IndieWire』は、平山の過去を映画の前半ほとんどで伏せたままにするヴェンダースの演出法は、平山の喜びをただのきれい事だと冷笑することなく、彼の存在をありうべき生の姿として差し出すことに成功している、などと評した[26]。
一般公開後のレビューでは、『ニューヨーク・タイムズ』紙が映画の中でていねいに反復される「木のイメージ」(スカイツリー、神社境内の樹、夢に現れる木洩れ日、等)に注目し、ヴェンダースがこの映像操作によって、影とともに生きるが深く根を張っている樹木の姿に平山の人生を重ね合わせている、と高く評価した[19]。
『フィナンシャル・タイムズ』紙は、この作品が低廉労働を美化しているという見方をしりぞけ、ヴェンダースは物思いにふける平山の寂しい視線を的確にとらえることで、平山が自らの過去に抱く複雑な感情を暗示しており、その陰影に富んだ奥行きの深さがこの作品の美質だと称賛した[20]。
日本では、批評家の中条省平が「清冽な美しさに満ちた作品」「必見の一作」と称賛し、とりわけ車と自転車による移動ショットにおいて、ロードムービーの名作で知られたヴェンダースが復活して「かつてのみずみずしさを保ちながら、円熟の味わいを加え、日常生活そのものをロードムーヴィ化している」と評した[27]。
一方で英語圏の映画レビューサイト「Rotten Tomatoes」では、一般公開後の2023年12月の時点で、全体として90%以上の高スコアを獲得したものの[28]、脚本の起伏の乏しさや抑揚を欠いた演技を批判する批評家コメントも掲載されている[28]。また『ウォール・ストリート・ジャーナル』などでは、役所の演技は称賛に値するものの、ヴェンダースの映像描写は単純労働を美化しすぎる傾向がある、とする批判も出されている[29]。『ニューヨーカー』誌でも、映像の美しさは認めつつ、抑制的すぎる脚本がさまざまな曲解をうむ「ミニマリズムの危うさ」をはらんでいると指摘した[30]。
一般公開から約3か月後の2月18日の時点で、本作の世界興行収入は2430万ドル(約36億円)を超え、ヴェンダース作品としては過去最高の興行成績をあげた作品となった[31]。
受賞
編集- 第76回カンヌ国際映画祭(2023年) - 主演男優賞(役所広司)、エキュメニカル審査員賞
- アジア太平洋映画賞(2023年) - 作品賞 (Best Film)[32]
- モントクレア映画祭(2023年) - 若手審査員賞 (Junior Jury Prize)[33]
- 第47回日本アカデミー賞(2024年) - 優秀作品賞、最優秀監督賞(ヴィム・ヴェンダース)、最優秀主演男優賞(役所広司)[34]
- 第17回アジア・フィルム・アワード(2024年) - 最優秀男優賞(役所広司)[35]
劇中の音楽・書籍
編集音楽
編集劇中で流れる音楽はヴィム・ヴェンダース自身によって慎重に選ばれ、作品の重要な要素となっている。ともに選曲にかかわった共同脚本の高崎卓馬によると、ヴェンダースは製作の早い段階で「演出効果のために平山が聞くはずのない音楽を使うこと」を自ら封じ、時間をかけて選んでいったという[36]。
- 「朝日のあたる家」(The House of the Rising Sun)アメリカのフォークソング。アニマルズと浅川マキの2つのバージョンが用いられている。後者は、歌唱:石川さゆり、ギター伴奏:あがた森魚。
- ヴェルヴェット・アンダーグラウンド「Pale Blue Eyes」
- オーティス・レディング「ドック・オブ・ベイ」((Sittin' On) The Dock of the Bay)
- ルー・リード「パーフェクト・デイ」(Perfect Day)
- パティ・スミス「Redondo Beach」
- ローリング・ストーンズ「めざめぬ街」((Walkin' Thru The) Sleepy City)
- 金延幸子「青い魚」[37]
- ヴァン・モリソン「ブラウン・アイド・ガール」(Brown Eyed Girl)
- キンクス「サニー・アフタヌーン」(Sunny Afternoon)
- ニーナ・シモン「Feeling Good」
書籍
編集平山が手にする文庫本のうち、書影が映されるか題名が言及されるもの。[38]
- ウィリアム・フォークナー(大久保康雄訳)『野生の棕櫚』中公文庫、1954 ISBN 978-4102102046(原題:The Wild Palms)
- 幸田文『木』 新潮文庫、1995 ISBN 978-4101116075
- パトリシア・ハイスミス(小倉多加志訳)『11の物語』ハヤカワ・ミステリ文庫、2005 ISBN 978-4151759512(原題:Eleven)
出典
編集- ^ “役所広司カンヌ男優賞、ヴィム・ヴェンダース監督作「PERFECT DAYS」12月22日公開”. 映画.com. (2023年8月30日) 2022年9月3日閲覧。
- ^ “渋谷の公共トイレが映画の舞台に ヴィム・ヴェンダース監督が「THE TOKYO TOILET」で次回作を撮影、清掃員役で役所広司が主演”. TECTURE MAG (2022年5月15日). 2023年3月15日閲覧。
- ^ “ヴィム・ヴェンダース監督×役所広司 渋谷トイレ舞台の映画がカンヌ映画祭コンペ部門出品”. 日刊スポーツ. (2023年4月13日) 2023年5月28日閲覧。
- ^ Debruge, Peter (2023年5月27日). “Cannes Awards: 'Anatomy of a Fall' Takes Palme d'Or, 'The Zone of Interest' and 'The Pot au Feu' Among Winners”. Variety. 2023年5月27日閲覧。
- ^ “【第76回カンヌ国際映画祭】役所広司が男優賞 W・ベンダース監督「PERFECT DAYS」東京の公共トイレ清掃員役 日本人受賞は19年ぶり2人目”. 映画.com. (2023年5月28日) 2023年5月29日閲覧。
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- ^ “Prize of the Ecumenical Jury, Cannes 2023 | inter-film.org”. www.inter-film.org. 2024年9月25日閲覧。
- ^ “ヴィム・ヴェンダース、『PERFECT DAYS』のオスカーノミネートに「大変光栄」”. ザ・ハリウッド・リポーター・ジャパン (ハーシー・シガ・グローバル). (2024年1月25日) 2024年1月28日閲覧。
- ^ “【第96回アカデミー賞】「PERFECT DAYS」が国際長編映画賞にノミネート! ヴィム・ヴェンダースが喜びのコメント発表”. 映画.com (エイガ・ドット・コム). (2024年1月23日) 2024年1月28日閲覧。
- ^ “柳井 康治 | FAST RETAILING CO., LTD.”. fastretailing.com. 2023年11月23日閲覧。
- ^ a b 『SWITCH』vol.41 no.12 2023, p. 50.
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- ^ “役所広司さんに「師匠」と呼ばれる「無名の清掃員」、カンヌ受賞作に影響与えた男性の正体…映画「パーフェクト・デイズ」”. 読売新聞オンライン (2023年10月27日). 2023年12月23日閲覧。
- ^ “役所広司さん《トイレ清掃員》プロに教えてもらいながら役作り カンヌ受賞作「パーフェクト・デイズ」”. NBC長崎放送 (長崎放送). (2023年12月11日) 2023年12月23日閲覧。
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- ^ Barraclough, Leo (2024年2月20日). “Oscar-Nominated ‘Perfect Days’ Smashes All-Time Box Office Record for Wim Wenders Movies With $24.3 Million Gross (EXCLUSIVE)” (英語). Variety. 2024年2月22日閲覧。
- ^ “Perfect Days” (英語). Asia Pacific Screen Awards. 2023年11月23日閲覧。
- ^ Facebook. “2023 Montclair Film Festival Award Winners Announced! | Montclair Film” (英語). montclairfilm.org. 2023年11月23日閲覧。
- ^ “日本アカデミー賞公式サイト”. 日本アカデミー賞協会の運営する公式サイト。日本アカデミー賞の概要、歴史の他、歴代の全受賞者受賞作品のデータを掲載。. 2024年3月10日閲覧。
- ^ Brzeski, Patrick (2024年3月10日). “Asia Film Awards: Ryusuke Hamaguchi’s ‘Evil Does Not Exist’ Wins Best Film” (英語). The Hollywood Reporter. 2024年3月10日閲覧。
- ^ Koji Yakusho(役所広司) and co-writer/producer Takuma Takasaki(高崎卓馬) (2023年10月17日). Koji Yakusho and Takuma Takasaki on Perfect Days - NYFF61 (YouTube配信) (アメリカ英語、日本語). Film at Lincoln Center. 該当時間: 11m02s - 13m40s / 21m38s. 2023年12月23日閲覧。インタビューを受ける2人は日本語で回答している。
- ^ 『金延幸子、ヴェンダース映画『PERFECT DAYS』挿入曲「青い魚」アナログシングル緊急発売!タワーレコード渋谷店インストアライブ&サイン会の開催も決定!』(プレスリリース)ソニー・ミュージックレーベルズ レガシープラス、2023年10月13日 。2023年12月23日閲覧。
- ^ “collection”. PERFECT DAYS. 2024年2月9日閲覧。
関連文献
編集- 『SWITCH 特集 すばらしき映画人生! ヴィム・ヴェンダースの世界へ』Vol.41. No.1, 2023年12月号(スイッチ・パブリッシング、2023)ISBN 978-4-8841-8609-8
- 岡野民・永禮賢『The Tokyo Toilet』(TOTO出版, 2023)
- ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬『ヴィム・ヴェンダース パーフェクト・デイズ ダイアリーズ 逆光』 (リトル・モア, 2024)