コンテンツにスキップ

主体思想

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。211.4.40.90 (会話) による 2008年8月4日 (月) 12:00個人設定で未設定ならUTC)時点の版であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

主体思想
各種表記
ハングル 주체사상
漢字 主體思想
発音 チュチェササン
英語表記: Juche-sasang
テンプレートを表示

主体思想(しゅたいしそう)、チュチェ思想(-しそう)は、朝鮮民主主義人民共和国及び朝鮮労働党の公式政治思想である。

日本語では、出版物などで「主体思想(しゅたいしそう)」と表記されることが多い。ただし、「チュチェ」という概念は独自のものであり、各言語の既成の用語で表せないため、漢字の「主体」ではなく、朝鮮語の音をカナに転写して「チュチェ」と表記するのが正しく、「主体思想」という表記はふさわしくないという主張もある。この主張は朝鮮民主主義人民共和国の準公式機関が打ち出している立場に基づいており、主体思想の研究者の間でも唱えられている。

主体思想塔

概説

北朝鮮当局は、金日成が創始し金正日が発展・体系化したものとしている。初期は北朝鮮を翻弄する国際情勢や周辺大国の影響に苦しんでいた金日成が反ソ連の立場を打ち出すために北朝鮮の自立性と主体性を主張して「ウリ式社会主義」(「我々式社会主義」の意)を唱えたことからはじまっている。その後、中ソ対立が北朝鮮の独自路線を決定づけ、独自の公式イデオロギー整備へとすすませた。以降も、北朝鮮および金日成政権を取り巻く情勢と政策課題を反映して公式イデオロギーに関する新たな解釈が次々と公式プロパガンダ上で登場した。公式イデオロギーに対する解釈は時期によって変化している。1976年には指導思想として「金日成主義」を打ち出そうとしたが、これもほどなくして「主体思想」に一元化された。

このような紆余曲折を経ながら「主体(チュチェ)」の語は独自の概念規定を与えられるに至った。しかし、その規定さえ頻繁に変化しており、戦時中の日本における「国体」に似てどのようにも解釈可能なマジックワードとしての様相を見せてから長い時間が経っている。

主体思想の解釈権は朝鮮労働党が一元的に握っている。主体思想の哲学的修辞法や論理構成は金日成の側近だった黄長燁によって整備されたものと言われている。黄長燁の手によって、1990年にはマルクス主義を基礎にしながらもすでにそれを超克しており、局面ごとには立場を異にすると宣言した。

思想論

以下が主体思想の内容である。

自分の運命の主人は自分自身であり、自分の運命を開拓する力も自分自身にある。故に、革命と建設の主人公は人民大衆であり、革命と建設を促進する力も人民大衆の側にある。

革命的首領観

従って、革命と建設の主人公である人民大衆は必ず首領の指導を受けなければならない。首領は頭であり、党は胴体であり、人民大衆は手足と同じである。胴体と手足は頭が考えたとおりに動かねばならない。頭がないと生命は失われる。よって、首領の権威は絶対的であり、全ての人民大衆は無条件に従わねばならない。

ここで謳われた指導者原理(Fuehrerprinzip)だけは、主体思想の解釈がどのように変遷を遂げても、変化していない。

社会政治的生命体論

肉体的な生命は生みの親が与えるが、政治的な生命は首領が与えるもので、首領は生命の恩人であり父と同じだ。従って、父の間違いで家が傾いたと言って、父を代えることができないように、首領を代えることはできないのである。全人民は、団結して無条件に忠誠を捧げなければならない。

主体思想に関する外国からの解釈

和田春樹は主体思想を次の3点で要約できるとしている。

  1. なせばなる(ハミョン・トェンダ)。
  2. 民族は自主的でなければならない。
  3. 民族には首領が不可欠だ。

参考文献

  • 『二十一世紀と金正日書記』(李珍珪、1995年、朝鮮青年社)
  • 『金正日主義入門』(尾上健一、1995年、白峰社)
  • 『金正日伝(第一巻)』(朝鮮・金正日伝編纂委員会、2004年、白峰社、ISBN 4434041657
  • 『金正日略伝』(在日本朝鮮人総聯合会中央常任委員会、1995年、雄山閣出版、ISBN 4639012764
  • 『金正日への宣戦布告』(黄長燁、文春文庫)

関連項目

外部リンク

Template:Link FA