ゲイ・アンセム
ゲイ・アンセム(英語: gay anthem)、またはLGBTアンセム(英語: LGBT anthem)は、LGBTコミュニティ(特にゲイ男性)において広くの間で好まれている歌を指す言葉。ゲイまたはLGBTの賛歌、応援歌、祝歌とされている。
概要
[編集]ゲイ・アンセムは、ジュディ・ガーランドの「オーバー・ザ・レインボウ」をもっとも初期のルーツとしている。音楽ジャーナル「ポピュラー・ミュージック」によると、ゲイ・アンセムとして最もよく知られている曲は、グロリア・ゲイナーの「アイ・ウィル・サバイブ」(邦題:恋のサバイバル)である[1] 。さらにダイアナ・ロスの「アイム・カミング・アウト」[2]も、よく知られたゲイ・アンセムである。イギリスのLGBT権利慈善団体ストーンウォールは、LGBTの人々の為の2000年代の最も有力な歌として、クリスティーナ・アギレラの「ビューティフル」を挙げており[3] 、エルトン・ジョンもそれが「アイ・ウィル・サバイブ」に代わる秀でたゲイ・アンセムになるだろうと予測している[4]。他に有名なゲイ・アンセムとして、ヴィレッジ・ピープルの「YMCA」、「マッチョ・マン」、「イン・ザ・ネイビー」、「ゴー・ウェスト」、シルヴェスターの「ドウ・ユー・ワナ・ファンク」、ABBAの「ダンシング・クイーン」、マドンナの「ヴォーグ」、レディー・ガガの「ボーン・ディス・ウェイ」などがある。あまり有名ではないゲイ・アンセムとしては、パニック!アット・ザ・ディスコの「ガールズ/ガールズ/ボーイズ」、ヘイリー・キヨコの「ガールズ・ライク・ガールズ」、マックルモアーの「セイム・ラブ」、ケイティ・ペリーの「ファイアーワーク」などがある[4][5]。
詳細
[編集]この節のほとんどまたは全てが唯一の出典にのみ基づいています。 (2023年1月) |
それぞれの歌は独立したものであるが、「何がゲイ・アンセムとなるか」という基準は時代により傾向が異なる。書籍『Queer』では全てのゲイ・アンセムではないと断りながら、以下の10点が多くのゲイ・アンセムのメインテーマとなる傾向が高いとしている[6]。
- 大きな支持を受けたディーヴァ
- 女性のゲイ・アイコンでディーヴァスタイルのポップ・ミュージックの歌手に対して多くのゲイ男性が崇拝的とも言えるような支持をしていた。(後述)
- 恋における困難の克服
- 過去に恋に破れ、そこから立ち直り昔よりも強く成長した姿を描く物語の歌。
- 「あなたは一人ではない」
- コミュニティにおける連帯を喜ぶ歌や、「孤独を感じているのはあなただけではない」と元気づける言葉を表した歌。
- 心痛の投げ捨て
- 苦しみはひとまず忘れて楽しくやろう、と気楽さを勧める歌。
- 苦労をして築いた自己の称賛
- 抑圧や悪意、自由への恐れといったものの克服や、美しさ、自己の評価が主題の歌。
- セクシャリティの解放の称賛
- 文化的な「恥の概念」を超え、ありのままのセクシャリティを讃える歌。
- 受容の探求
- 自分を受け入れてくれるような世界に対する希望やそこに生きる姿を想像する歌。
- 人生の困難を描いたトーチソング
- 欺きや悪意、後悔に生きる姿を描いた歌。
- 全てを打ち破る愛
- 愛において、克服できない壁を諦めずに乗り越えた物語を描いた歌。
- 謝らない強さ
- 他の人の期待や批判に逆らってでも自分の生き方を貫くことをテーマにした歌。
女性のゲイ・アイコン
[編集]ゲイ男性、ゲイのDJがデイーヴァとして崇拝、支持をしている女性歌手。例としてドナ・サマー、グロリア・ゲイナー、ダイアナ・ロス、グレース・ジョーンズ、メルバ・ムーア、ロリータ・ハラウェイ、アマンダ・レア、シェール、マドンナ、シンディ・ローパー、ジェリ・ハリウェル、ビヨンセ、カイリー・ミノーグ[7]、シャキーラ、シャーリー・バッシー、アーサー・キットなどがいる。なお、ゲイに人気の女性歌手は、ストレート(異性愛者)が多い。レズビアンを公表している歌手にはKDラング、メリッサ・エスリッジ、ジャニス・イアンがいる[8]。
男性のゲイ・アイコン
[編集]男性及び中性のゲイ・アイコンとしては、エルトン・ジョン、トム・ロビンソン、フレディ・マーキュリー、シルベスター、ヴィレッジ・ピープル、デヴィッド・ボウイ、ボーイ・ジョージ、カルチャー・クラブ, ジョージ・マイケル、Wham!、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド、ペット・ショップ・ボーイズ[9]、デッド・オア・アライブ、[10]、ブロンスキ・ビート、リトル・リチャード、エスケリータ、ディバイン、ルポールらがいる。
曲のリスト
[編集]脚注
[編集]- ^ Hubbs, Nadine (May 2007). “‘I Will Survive’: musical mappings of queer social space in a disco anthem”. Popular Music 26 (2): 231–244. doi:10.1017/s0261143007001250.
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- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t Simon Gage, Lisa Richards, and Howard Wilmot.. “Queer”. pp. 26-7. ISBN 1560253770. 2009年4月26日閲覧。
- ^ LGBT運動に熱心に取り組んでいる
- ^ ジャニス・イアンは女性と結婚
- ^ Helligar, Jeremy (2014年4月9日). “Pop Music Could Use Another Decade as 'Gay' as the '80s” (英語). Huffington Post. 2021年10月1日閲覧。
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- ^ サンフランシスコなど西海岸がゲイ人口が多く、同性愛に寛容であるため曲の題材になった
- ^ Peter Tatchell. "Not Glad to Be Gay?"
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- ^ 海軍にゲイが多いとの一般の認識から、この歌詞になった。ピンクレディーは「やりたくなったら、やっちゃいな」の歌詞でカバーした
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- ^ アーサー・キットは日本でh、ショージョージーぐらいしか知られていないが、本国では「公民権活動家」としても知られている。また公民権だけでなく、LGBTの地位向上に尽力する活動家でもある
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- ^ マリリン・モンローとエルトン・ジョンという、二人のゲイ・アイコンを含んだ大ヒット曲
- ^ シェールはディスコ、クラブヒットも多く、ゲイの間で人気がある。本人はストレートとおもわれるが、娘がLGBTである点も、LGBTの間で共感が広がる所以である
- ^ リッキー・マーティンはプエルトリコのアイドル・グループ「メヌード」の元メンバー。LGBTとみられ、ゲイ・アイコンの一人である
- ^ 21世紀のゲイ・アイコンと言えば、元スパイス・ガールズ(UK)のジェリ・ハリウェルであつ。LGBTの間では絶大な人気を誇っている
- ^ シャキーラ、ジェニファー・ロペス スーパーボウル・ハーフタイムショウ ゲイが熱狂 2021年10月5日閲覧
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- ^ Christina Aguilera, a ‘Bionic’ Gay Advocate?
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- ^ Gay Anthems: Singing it loud and proud | Celebrity Features | Bollywood Celebs Features
- ^ [1]
- ^ 40ゲイ・アンセム・フォー・プライド 2021年10月5日閲覧
- ^ コロンビ出身。ヒスパニック系の歌手の中でも、特にゲイ、LGBTに人気のある女性歌手である
- ^ “2007 Top 40 Official Albums Chart UK Archive”. Official Charts Company. 1 October 2021閲覧。
- ^ “Robyn: "Sorry, I'm Straight!"”. The New Gay (2010年8月4日). 2010年11月11日閲覧。
- ^ “Katy Perry’s misfire”. Sydney Star Observer (2010年11月23日). 2010年11月27日閲覧。
- ^ [2]
- ^ “'Born This Way': The New Gay Anthem?”. MTV (2010年11月23日). 2011年11月11日閲覧。
- ^ SANKEI EXPRESS (2014年4月8日). “「アナと雪の女王」同性愛テーマと解釈も… 劇中歌でカミングアウト?”. SankeiBiz. 産経新聞社. 2016年1月15日閲覧。
書籍
[編集]- Gay Anthems (Book & CD). Music Sales Ltd. ISBN 071199742X
- Leila J. Rupp, Verta Taylor. Drag Queens at the 801 Cabaret. University Of Chicago Press, May 15, 2003. ISBN 0226731588