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ハシカンボク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ハシカンボク
ハシカンボク
ハシカンボク
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : アオイ類 malvids
: フトモモ目 Myrtales
: ノボタン科 Melastomataceae
: ハシカンボク属 Bredia
: ハシカンボク B. hirsuta
学名
Bredia hirsuta Bl.
図版

ハシカンボク Bredia hirsuta は、ノボタン科の植物。ピンク色の小さな花を付ける。

特徴

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花の拡大

常緑性の小柄な低木[1]。背丈は30-100mになり、茎の断面は丸い。枝や葉柄には立った剛毛と短い毛が生える[2]対生で、葉身は薄い草質で卵形、狭卵形から卵状長楕円形で先端は少し尖るか、突き出して尖り、基部はやや心形に窪む。葉の縁には細かな低い鋸歯があり、鋸歯の先端には剛毛が生え、また葉の両面にもまばらに毛が生える[3]。葉には5行ないし7行の葉脈が強く出ており、裏面はやや白い。葉身は長さ4-10cm、幅2-5cm、葉柄は長さ1-8cm。

花期は7-9月。花序は集散花序で、茎の先端から上向きに伸び出し、多数の花を付ける。花は径1.5cmほどで淡いピンク色。花序の長さは8-12cm、短毛が生えている[4]。花柄は長さ5-12mmで基部に小さな苞がある。萼筒は長さ4mmで、花柄から先端へと次第に幅広くなる。萼列片は4個あり、披針状三角形で長さ1mm。花弁もやはり4枚で、菱状倒卵形で長さ8mm、先端は小さく尖っている。果実は倒円錐形で長さ7mm、先端に輪のような環状体があり、その縁はほぼ滑らか。

雄蕊は8本あるが、これに大小の2形がある[5]。大きい方は長さ4-5mmになり、葯は紫色で内向きに鎌状に曲がっている。小さい方は2.5mm、大きい方の基部にある。柱頭は斜めに伸びて雄蕊の輪から伸び出て上を向く。先端は点状。

分布と生育環境

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日本の固有種で屋久島種子島から以南の琉球列島の、奄美大島沖縄島石垣島西表島与那国島に産する[6]。なお、初島(1975)には鹿児島市に産するとの記述がある。

山地の路傍や山裾などに見られ、やや湿り気のある場所を好む[7]

近似種など

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ハシカンボク属の植物は中国、台湾から日本に10種以上があるが、日本には他に2種がある。ヤエヤマノボタン B. yaeyamensis は石垣、西表島の固有種、コバノミヤマノボタン B. okinawensis は沖縄本島の固有種である。本種とは分布も重複しており、形態的にもある程度似ているが、これらの種はいずれも全株無毛であり、また葉はいずれも革質で、葉質が薄く、全株に毛が多い本種とは印象がかなり異なる。

利用

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観賞用に栽培されることがある。その歴史は意外に古く、琉球で『波志干(はしかん)』あるいは『野海堂』と呼ばれていたもので、江戸時代の文政年間(1818-1830)に大阪に導入され、それから江戸でも栽培され始めたと言われている[8]

保護の状況

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環境省のレッドリストでは取り上げられていない。県別でも鹿児島県が準絶滅危惧種に指定しているのみ。この県が北限であるが、それ以南では比較的普通種であることを反映していると思われる。

出典

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  1. ^ 以下、主として佐竹他(1989),p.103
  2. ^ 北村・村田(1971),p.202
  3. ^ 北村・村田(1971),p.202-
  4. ^ この文より以降は初島(1975),p.439
  5. ^ 以下、北村・村田(1971),p.202-203
  6. ^ 佐竹他(1989),p.103
  7. ^ 池原(1979),p.131
  8. ^ 岩槻(1997),p.198

参考文献

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  • 佐竹義輔・他(編著) 『日本の野生植物 木本II』新装版、(1999)、平凡社
  • 初島住彦 『琉球植物誌』追加・訂正版、(1975)、 沖縄生物教育研究
  • 北村四郎村田源、『原色日本植物図鑑 木本編I』、(1971)、保育社
  • 池原直樹、『沖縄植物野外活用図鑑 第6巻 山地の植物』、(1979)、新星図書
  • 岩槻邦男、「ハシカンボク」:『朝日百科 植物の世界 4』、(1997)、朝日新聞社:p.198-199