コンテンツにスキップ

海上保安庁長官

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
日本の旗 日本
海上保安庁長官
Commandant of the Japan Coast Guard
海上保安庁長官旗
現職者
海上保安庁長官・瀬口良夫(第48代)

就任日 2024年令和6年)7月1日
組織行政府
国土交通省/海上保安庁
種類海上保安官
所属機関海上保安庁
任命内閣総理大臣
初代就任大久保武雄
創設1948年(昭和23年)5月1日
ウェブサイト海上保安庁

海上保安庁長官(かいじょうほあんちょうちょうかん、英語: Commandant of the JCG[1])は、海上保安庁

概要

[編集]

海上保安庁長官については、海上保安庁法(昭和23年法律第28号)第10条に規定があり、同条第2項には「国土交通大臣の指揮監督を受け、庁務を統理し、所部の職員を指揮監督する。ただし、国土交通大臣以外の大臣の所管に属する事務については、各々その大臣の指揮監督を受ける。」と定められている[2]

海上保安庁長官は、海上保安庁法施行令第9条(海上保安官及び海上保安官補の階級)にその規定がなく[3]、次長・海上保安監と同じく正式には階級制度を適用されず、警察庁長官などと同じく階級制度を適用されない庁内最高位の役職であるが、長官・次長・海上保安監には同位を表す服制があり、法執行の職員である海上保安官などと同様に、制服を規定した海上保安庁職員服制で、そで章、胸章、肩章の規定がある[4]

海上保安庁長官は指定職7号俸の官職である[5]国土交通省においては、国土交通事務次官(指定職8号俸)に次ぎ、国土交通審議官(指定職7号俸)と同格である[5]。指定職7号俸の官職は[5]、各省の省名審議官警視総監警察庁)・財務官財務省)・国税庁長官(財務省)などが該当し[5]、「次官級ポスト」とされる[6][7][注釈 1]

海上保安庁が創設されて以来、海上保安庁長官、海上保安庁次長には、運輸省中央省庁再編後は国土交通省)の事務系キャリアが就任し続けて来た[9]海上保安大学校出身の生え抜きの海上保安官の最高ポストは、海上保安庁のナンバー3である海上保安監であった。

2013年(平成25年)8月1日、海上保安監であった佐藤雄二(海上保安大学校卒)が、海上保安庁長官に就任する人事が発令された[9]。国土交通省のキャリア官僚ではなく、海上保安大学校出身の生え抜きの海上保安官が、海上保安庁長官に就任した最初の事例であり、この人事は当時の内閣総理大臣安倍晋三の意向であった[9]2016年(平成28年)6月21日に発令された海上保安庁長官人事においても、海上保安監であった中島敏が就任した[10]。理由は佐藤・前長官と同じである[10]

歴代長官

[編集]

氏名
在任期間
 
出身校・期 前職
退任後の主要な役職
01 おおくぼ/大久保武雄 1948年(昭和23年)05月01日 - 1951年(昭和26年)05月04日 不法入国船舶取締本部長[11] 衆議院議員労働大臣
02 やなぎさわ/柳沢米吉 1951年(昭和26年)05月04日 - 1953年(昭和28年)01月31日 海上保安庁次長 アジア航空測量社長、同会長
03 やまぐち/山口傳 1953年(昭和28年)01月31日 - 1955年(昭和30年)05月04日 海上保安庁次長 羽田空港ターミナルビル副社長
04 しますえ/島居辰次郎 1955年(昭和30年)05月04日 - 1958年(昭和33年)12月05日 海上保安庁次長 日本原子力船開発事業団理事長
05 あんざい/安西正道 1958年(昭和33年)12月05日 - 1959年(昭和34年)05月06日 海上保安庁次長 全日本空輸社長
06 りん(?)/林坦 1959年(昭和34年)05月06日 - 1961年(昭和36年)07月04日 航空局長 船舶整備公団理事長
07 わだ/和田勇 1961年(昭和36年)07月04日 - 1963年(昭和38年)06月07日 海上保安庁次長  
08 つじ/辻章男 1963年(昭和38年)06月07日 - 1964年(昭和39年)02月01日 海運局長 関西国際空港ビルディング会長
09 いまい/今井榮文 1964年(昭和39年)02月01日 - 1965年(昭和40年)06月02日 大臣官房長 新東京国際空港公団総裁
10 とちない/栃内一彦 1965年(昭和40年)06月02日 - 1966年(昭和41年)07月04日 航空局長 日本航空開発社長
11 さとう/佐藤光夫 1966年(昭和41年)07月04日 - 1967年(昭和42年)03月14日 航空局長 運輸事務次官
日本民営鉄道協会理事長
国際観光振興会会長
京成電鉄社長
京成百貨店社長
北総開発鉄道社長
オリエンタルランド取締役
交通遺児育成基金会長
12 かめやま/亀山信郎 1967年(昭和42年)03月14日 - 1968年(昭和43年)06月07日 海運局長 船舶整備公団理事長
13 かわけ/河毛一郎 1968年(昭和43年)06月07日 - 1970年(昭和45年)06月19日 船員局長  
14 てづか/手塚良成 1970年(昭和45年)06月19日 - 1972年(昭和47年)06月30日 航空局長 国際観光振興会会長
15 のむら/野村一彦 1972年(昭和47年)06月30日 - 1973年(昭和48年)08月31日 自動車局長 日本原子力船開発事業団理事長
16 さはら/佐原亨 1973年(昭和48年)08月31日 - 1974年(昭和49年)06月07日 海運局長 ジャパンライン副社長
17 てらい/寺井久美 1974年(昭和49年)06月07日 - 1975年(昭和50年)07月18日 航空局長 日本アジア航空副社長
日本貨物航空副社長
18 そのむら/薗村泰彦 1975年(昭和50年)07月18日 - 1978年(昭和53年)06月27日 海運局長 帝都高速度交通営団総裁
19 たかはし/高橋壽夫 1978年(昭和53年)06月27日 - 1979年(昭和54年)07月27日 航空局長 日本空港ビルデング社長、同会長
20 ましま/眞島健 1979年(昭和54年)07月27日 - 1980年(昭和55年)06月17日 海運局長 船舶整備公団理事長
日本エアシステム社長
21 せのお/妹尾弘人 1980年(昭和55年)06月17日 - 1982年(昭和57年)06月11日 海運局長 船舶整備公団理事長
京成電鉄社長、同会長
22 ながい/永井浩 1982年(昭和57年)06月11日 - 1983年(昭和58年)06月03日 海運局長 日本鉄道建設公団総裁
23 いしづき/石月昭二 1983年(昭和58年)06月03日 - 1984年(昭和59年)07月01日 海運局長 新幹線鉄道保有機構理事長
日本国有鉄道清算事業団理事長
24 つのだ/角田達郎 1984年(昭和59年)07月01日 - 1985年(昭和60年)06月26日 自動車局長 西日本旅客鉄道社長、同会長
25 やまもと/山本長 1985年(昭和60年)06月26日 - 1986年(昭和61年)06月14日 運輸政策局長 新東京国際空港公団総裁
26 くりばやし/栗林貞一 1986年(昭和61年)06月14日 - 1987年(昭和62年)10月06日 運輸政策局長 日本航空副社長
日本アジア航空会長
27 やまだ/山田隆英 1987年(昭和62年)10月06日 - 1989年(平成元年)06月27日 航空局長 エアーニッポン社長、同会長
28 しおた/塩田澄夫 1989年(平成元年)06月27日 - 1990年(平成02年)06月27日 運輸政策局長 日本鉄道建設公団総裁
29 にわ/丹羽晟 1990年(平成02年)06月27日 - 1991年(平成03年)06月18日 航空局長 国際観光振興会会長
30 みやもと/宮本春樹 1991年(平成03年)06月18日 - 1992年(平成04年)06月23日 航空局長 船舶整備公団理事長
運輸施設整備事業団理事長
31 いやま/井山嗣夫 1992年(平成04年)06月23日 - 1994年(平成06年)06月29日 鉄道局長 国際観光振興会会長
32 はたの/秦野裕 1994年(平成06年)06月29日 - 1996年(平成08年)06月25日 鉄道局長 帝都高速度交通営団副総裁
33 つちさか/土坂泰敏 1996年(平成08年)06月25日 - 1997年(平成09年)07月01日 東京大学 運輸政策局長 帝都高速度交通営団総裁
34 あいはら/相原力 1997年(平成09年)07月01日 - 1998年(平成10年)07月01日 運輸政策局長 運輸施設整備事業団理事長
35 くすき/楠木行雄 1998年(平成10年)07月01日 - 1999年(平成11年)07月14日 航空局長 軽自動車検査協会理事長
36 あらい/荒井正吾 1999年(平成11年)07月14日 - 2001年(平成13年)01月05日 東京大学 自動車交通局長 参議院議員
奈良県知事
37 なわの/縄野克彦 2001年(平成13年)01月06日 - 2002年(平成14年)08月01日 自動車交通局長 国土交通審議官
日本航空副社長
一般財団法人日本気象協会会長
一般財団法人日本水路協会会長
株式会社ジェイアール貨物・インターナショナル社長
38 ふかや/深谷憲一 2002年(平成14年)08月01日 - 2004年(平成16年)07月01日 航空局長 財団法人運輸政策研究機構理事長
日本政策投資銀行理事
39 いしかわ/石川裕己 2004年(平成16年)07月01日 - 2007年(平成19年)07月10日 航空局長 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構理事長
40 いわさき/岩崎貞二 2007年(平成19年)07月10日 - 2009年(平成21年)07月24日 東京大学 自動車交通局長 一般財団法人空港環境整備協会会長
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構理事長代理
公益社団法人日本海洋少年団連盟副会長
41 すずき/鈴木久泰 2009年(平成21年)07月24日 - 2012年(平成24年)09月11日 東京大学 海上保安庁次長 日本空港ビルデング副社長
42 きたむら/北村隆志 2012年(平成24年)09月11日 - 2013年(平成25年)08月01日 東京大学 国土交通審議官 内閣官房内閣審議官兼国土強靱化推進室次長
大阪国際空港ターミナル特別顧問
鉄道建設・運輸施設整備支援機構理事長
43 さとう/佐藤雄二 2013年(平成25年)08月01日 - 2016年(平成28年)06月21日 海保大23期 海上保安監 運輸安全委員会委員
44 なかじま/中島敏 2016年(平成28年)06月21日 - 2018年(平成30年)07月31日 海保大25期 海上保安監
45 いわなみ/岩並秀一 2018年(平成30年)07月31日 - 2020年 (令和2年) 01月7日 海保大27期 海上保安監
46 おくしま/奥島高弘 2020年(令和2年)01月7日 - 2022年(令和4年)6月28日 海保大28期 海上保安監
47 いしい/石井昌平 2022年(令和4年)06月28日 - 2024年(令和6年)7月1日 東京大学 海上保安庁次長
48 せぐち/瀬口良夫 2024年(令和6年)07月1日 - 現職 海保大36期 海上保安庁次長

海上保安庁長官表彰

[編集]

海上保安庁長官表彰(海上保安庁長官賞、海上保安庁長官感謝状を含む)は、海上保安庁の定める表彰制度において最高位の表彰であり、海上保安庁表彰規則に規定されている。

主に海上保安官に対する職員表彰の他、海難救助、海上保安に対する協力に対する功労ある者に対する感謝状、あるいは海上保安庁の主催・共催・後援する催事において実施されたコンクール等において最優秀者あるいは優秀者に対して授与される海上保安庁長官などがある。

海上保安官に対する表彰の例

関連項目

[編集]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 2017年度に新設される際に「事務次官級」と言及された[8]厚生労働省医務技監は指定職6号俸の官職であり[5]、前記した各省庁の指定職7号俸の官職より1ランク下である。

出典

[編集]
  1. ^ Organizational chart of the JCG (as of April 1, 2020)” (PDF) (英語). 海上保安庁. 2022年2月27日閲覧。
  2. ^ 海上保安庁法(昭和23年法律第28号)第10条”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局 (2017年4月1日). 2020年1月19日閲覧。
  3. ^ 海上保安庁法施行令(昭和23年政令第96号)第9条”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局 (2017年4月1日). 2020年1月19日閲覧。
  4. ^ 海上保安庁職員服制(昭和37年運輸省令第31号)第2条”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局 (2017年4月1日). 2020年1月19日閲覧。 そで章の例では、『長官、次長及び海上保安監 左右のそでの全周にしま織金線を付け、その上位に金モール製の船舶用コンパス一個を付ける。』
  5. ^ a b c d e 人事院総裁 一宮なほみ (2018年3月29日). “指定職俸給表の適用を受ける職員の号俸の定め並びに職務の級の定数の設定及び改定に関する意見の申出”. 人事院. 2019年6月18日閲覧。
  6. ^ 星野次彦主税局長が財務事務次官となった本当の理由”. ニッポン放送 (2018年6月4日). 2020年1月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年1月9日閲覧。
  7. ^ 一瀬敏弘(神戸大学大学院). “警察官僚の昇進構造” (PDF). 労働政策研究・研修機構. p. 38. 2020年1月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年1月9日閲覧。
  8. ^ 省庁の幹部人事決定 厚生次官に蒲原氏”. 日本経済新聞 (2017年7月4日). 2019年6月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年6月18日閲覧。
  9. ^ a b c “海上保安庁長官に初の現場出身 尖閣問題を意識” (日本語). 日本経済新聞. (2013年7月18日). オリジナルの2018年8月3日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20180803195609/https://r.nikkei.com/article/DGXNASGC18007_Y3A710C1EB2000?s=1 2018年8月3日閲覧。 
  10. ^ a b “海上保安庁長官に中島氏 2代連続で現場出身” (日本語). 日本経済新聞. (2016年6月14日). オリジナルの2018年8月6日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20180806062148/https://r.nikkei.com/article/DGXLASDG14H1M_U6A610C1EAF000?s=1 2018年8月6日閲覧。 
  11. ^ 1948年3月20日付でこの職に発令。1948年4月6日官報第6365号

外部リンク

[編集]