特技兵
特技兵(とくぎへい)・特殊技能兵(とくしゅぎのうへい)とは軍隊の兵士の中で何らかの特殊な技術や資格を習得している者を指す。
近代では機械化、電子化、科学技術の高度化が進んだため、軍隊の装備を運用するために運用する兵士が適切な操作や整備の技術を習得する必要に迫られた。そのため、通常の兵士としての教育にさらに追加して特殊な技術を学習させ習得させた兵士を特殊技能兵略して特技兵と呼ぶ。また、軍隊内部の機関で教育するのではなく、最初から特殊技能を持っている民間人を通常の志願兵とは別枠で軍人として採用する場合もある(一般の徴集兵や志願兵とは別枠で、特定の免許や資格を保有している者を採用し、所定の訓練期間終了後、免許や資格の種類、民間での実務経験年数などによりすぐに下士官、場合によっては准士官または士官に任官するという方式で中途採用する場合もある)。
特に、近代化された軍隊は電子機器関連の装備が増加する傾向にあるため、これらを維持運用する特殊技能兵は貴重な戦力であり、先進国ほど特殊技能兵の人数が増加する傾向にある。アメリカ軍の機械化歩兵など小隊の半数近くが特殊技能兵ということすら珍しくなく、空挺部隊などは全員が特殊技能兵ということも普通である。 そのため、徴兵制度の有る国でも特殊技能兵は職業軍人(下士官・准士官・士官)として長期間、軍務に就く人間を当てる場合がほとんどである。
一般に、特殊技能を取得した兵士は技能や資格を表す記章を軍服に付けている。また、給与についても技能手当が支給される場合がある。技能の種類などによっては掃除や炊飯などの雑事が免除される、移動する際に優先的に車両に乗れるなどの特権が付く場合もある。ただし、これは自分の担当する装置や設備の維持管理に忙殺されるから雑事が免除される、重い機材を持ち歩かなければならないから優先的に車両に乗れるなどというのが主な理由であり、特別に優遇されているとは言えない場合も多い。
昔は自動車の運転や和文タイプの操作なども特殊技能に含めていたが、現代では特殊技能とはされなくなるなど、時代と共に分類や内容は変化している。船舶や航空機に関わる人員は軍が利用し始めた頃から全員が特技兵であり、海軍と空軍はほぼ全員が特技兵であるため、海空の自衛隊では『特技』ではなく『職種』と呼称している。陸軍では工兵は特技兵が中心となる部隊である。
特殊技能兵の例
[編集]- 歩兵
- 大型火器・爆発物
- 指揮の補佐
- 下士官に現場で指揮を行う士官の補佐や緊急時の臨時指揮官としての資格を認定する軍もある。
- 軍用車両
- 船舶
- 航空機搭乗員
- 航空関係者(地上要員)
- 潜水
- 衛生兵
- 技術者・科学者
- 法務
- 宗教・音楽・芸能・儀礼・スポーツ
- 従軍牧師・チャプレン - 士官の職種としたり軍属とする軍もある。
- 軍楽隊
- 自衛隊ではラッパ吹奏が警備特技に含まれており吹奏技能を競う競技会が開催されている。
- アメリカ軍とイギリス軍などには式典や儀礼などで、要人や高官を接待するための専門兵(メイドサーヴァント。本義は「女中」)がいる。
- 政府専用機の客室乗務員
- 韓国軍には手品や曲芸などを行い慰問を専門とする「芸能兵」がおり、主に徴兵された芸能人が任命されていたが、2013年に所属する兵士の不祥事が後を絶たないとの理由で廃止された[1]。
- オリンピックなどに出場できるトップアスリートを大会での上位入賞を目的とした特技兵として採用している(自衛隊では体育特別技能者と呼ばれる)。
脚注
[編集]- ^ 「韓国軍、不祥事相次ぐ「芸能兵士」を廃止」『日刊スポーツ』2013年7月19日。2022年12月25日閲覧。
関連項目
[編集]- 技術曹
- 軍医・医官・歯科医官
- 予備自衛官補・技能公募部門
- 予備役将校訓練課程
- 陸軍予備士官学校 (日本)
- 短期現役士官
- 海軍予備員
- イギリス海軍予備員
- 軍属
- 民間軍事会社 - 整備などの分野を請け負うことがある。
外部リンク
[編集]- 防衛省自衛官募集ホームページ-技術海曹-日本の海上自衛隊の類似制度。特定の免許や資格を持つ者を曹(下士官)として中途採用する制度。
- 防衛省自衛官募集ホームページ-医科・歯科幹部自衛官-日本の自衛隊(陸・海・空三隊共通)の類似制度。医師免許・歯科医師免許を持つ者を幹部(士官)として中途採用する制度。
- 防衛省自衛官募集ホームページ-技術海上幹部・技術航空幹部-日本の海上自衛隊・航空自衛隊の類似制度。特定分野の高等教育修了者を幹部(士官)として中途採用する制度。