「アルゴリズム依存が招いた世界初の内乱」
野党「共に民主党」のホン・ソングク元議員は先月、ニューヨーク・タイムズ紙とのインタビューで、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の12・3非常戒厳をこのように規定した。極右ユーチューバーらの不正選挙の主張に心酔したあげく、前回の総選挙の結果を無効化するために、憲法機関である国会と中央選挙管理委員会を侵奪したということだ。尹大統領は先月15日、ソウル漢南洞(ハンナムドン)の官邸で逮捕される直前、与党「国民の力」の議員たちに「最近のレガシーメディア(情報通信技術が社会に浸透する前に主流だった新聞、雑誌やラジオ、テレビなど)はあまりにも偏っているため、ユーチューブでよくまとめられている情報を見るよう」勧めたという。
アルゴリズムは「与えられた問題に対する解決策を定義し実行する過程」を意味する学術用語だ。しかし、ソーシャルメディアにおけるアルゴリズムは、プラットフォーム企業が個別のユーザーに推薦するコンテンツを決定するために活用する規則と計算を意味する。ユーザーの参加度や関心事などをもとに掲示物を選別し、最も関連性の高いコンテンツを勧める。結局、ユーザーが「見たいもの」だけを見て、その他の情報は意図的に排撃する確証バイアスにつながる。極端なコンテンツの消費を煽り、ソーシャルメディア依存症を誘発するのだ。その上、韓国はユーチューブに情報を依存する割合が比較的高い。ロイタージャーナリズム研究所の「デジタルニュースレポート2024」によると、韓国の回答者のうち2人に1人(51%)はユーチューブを通じてニュースを見ていることが調査でわかった。2017年の28%から7年で2倍近く増えた。調査対象の47カ国の平均(31%)よりはるかに高い。ユーチューブに蔓延した虚偽情報(不正選挙陰謀論)とアルゴリズムの泥沼が結びついた極端な事例が尹大統領の戒厳令だ。
これに対し、主要国ではソーシャルメディアに公的責任を問う傾向にある。欧州連合(EU)のデジタルサービス法は、大型プラットフォーム企業に対し、違法コンテンツおよび虚偽の情報を迅速に削除し、アルゴリズム推薦システムの透明性を強化するよう求めている。ドイツのネットワーク執行法は、ヘイトコンテンツや虚偽・捏造情報を24時間以内に削除しない場合、プラットフォームに課徴金を賦課する。野党「共に民主党」のチョ・インチョル議員は、ユーチューブなどのプラットフォーム企業がユーザーにアルゴリズム推薦サービス利用の可否を周期的に確認するようにした情報通信網法改正案を発議した。チョ議員はこれを「尹錫悦防止法」と名付けた。何よりも定期的に視聴記録を初期化するなど、アルゴリズム依存から抜け出すためには、個人の不断の努力が欠かせない。