「内定取り消し」は古い制度がもたらす歪みの象徴
まあ大目に見て30点.ツッコミどころがありすぎ.*1
http://anond.hatelabo.jp/20081210171459
・内定はもらった生徒側は自由に破棄できるが、企業側がやったらバッシング。
ツッコミにある通り,(正確には内々定だけど,)
- 内定を複数持ち続けることはできない.
- 内定を取る時期を学生側から選べない.
- 内定を出した後で破棄されると,その学生は第二新卒を目指すなど大きなペナルティを受ける.
- 内定は事実上の学生と企業との雇用契約であるにも関わらず,企業側が破棄しても事実上ペナルティはない.*2
こんな不自由な制度の中、よく日本の企業は世界で台頭できたと感心する。
というか逆かな.
高度経済成長下においては,年功序列&終身雇用の方が賃金が安く抑えられるし,組織を維持しやすかったから使われていただけ.*3
若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)
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今は給料は安いけど我慢して.
このままコツコツ頑張れば給料も上がって行くし,
業績が良ければボーナスはたっぷり出るし,
定年退職する時には退職金もたっぷりでるから老後も安心だよ.
こうすることで,いま現金が手元になくても,「将来急成長した後で払う」という口約束だけで若い労働力を安価でこき使えたのです*4.危険極まりない20年の住宅ローンなどが組めたのも同様の理由.*5
これが今では次のようになったわけです.
今は給料は安いけど我慢して.
このままコツコツ頑張っても給料は上がらないし,
定年退職する時までいても退職金は一銭も出ないし、
そもそも定年を迎える前に解雇される方が普通だから
おや?何かおかしくないのかな?
逆説的に考えると、これらのゆがんだ制度を維持するために「派遣・パート差別」「サービス残業」「天下り」「新卒信仰」などのゆがみが生まれたんだと思う。
新卒偏重主義だけは当たりかな.必ずしもその制度が「ゆがんでいた」わけではなく,高度経済成長期には合っていたというだけ.それが高度経済成長が終わった後,何十年も維持しようとしているから「歪んだ制度」になっただけ.
通常「お試し期間」みたいなのがあって、最初の数ヶ月で使い物にならないと判断されると簡単にクビになったりする。
仮採用期間*6は他の業種でも普通にあるよ.
だが日本の経済システムが確実に変革しているこの時代に、既存の雇用システムを盲目的に頼っていると痛い目を見るよ。
ここだけは同意.というより,既に経済事情が変わってしまっているのに,経済システムの変化があまりに遅すぎるのが問題なんだが...
だけど未だ変革していない企業は多数存在する.変革していないからこそ「新卒偏重」や「青田刈り」が行われているのであって,今回内定取り消しが問題になっている企業は全て変革していない企業であると考えて間違いない.
だから事実上の雇用契約を一方的破棄する経営者に対し,そのモラルを厳しく問うべきものであることにはなんら変わりはない.
ついでにメモ:
今回の世界的不況に際し、日本中で派遣社員がクビを切られている。そして、中には不況に便乗した首切りが相当数含まれているという話も、ちらほらと聞こえてきている。どこかの食品会社が偽装発覚したら、同業他社もぞろぞろ出てくるケースがあるが、ちょうどアレに似ている。赤信号、みんなで渡ればなんとやらだ。
http://www.doblog.com/weblog/myblog/17090/2615746#2615746
(中略)
対症療法では問題はけして解決しないということ。
構造的矛盾は依然存在し続け、そしてどこかに歪みとなってあらわれる。
今回の大量首切りは、顕在化した歪みの一つに過ぎない。
ボーナスが業績連動するのが普通
給与の多くが残業手当に依存していて、残業制限されればアウトってこともある.
年内解雇は非正規社員だが、残された正社員にも危機感がある。製造レーンで働く四十歳代の男性は「昼夜二交代制が崩れ、夜勤手当や残業代がなくなった」と明かす。
http://koerarenaikabe.livedoor.biz/archives/51304524.html
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://anond.hatelabo.jp/20081210171459
流動性/離職率の高さでは「中小のデザイン会社・映像制作会社勤務」に負けないIT業界の人間ですが,以下同文.離職率が高いのはまさにそういう理由.別に美味い汁が吸えるからでも人間的な生活ができるからでもない.
新卒が重宝されるのは、転職組におかしなやつが多すぎることの裏返し
違うよ.年功序列賃金の元では,新卒が一番安上がりだからだよ.
企業にいい風ばっかりじゃなく、働く側も主張してこーぜ。給料こんなんじゃたりねーぞ! とか もっと休みくれよー とかさ。
それをいうのは若者の特権.(バブル期以前の)中高年は既に給料が上がりすぎているので,彼らの給料をこれ以上に上げると会社が潰れます.
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/mkusunok/20081211/lg
- たしかに新卒と卒業1-2年との間のギャップにはびっくりする。だから「新卒として就活する」ためだけに100万以上の学費を払って、休学・留年する人があらわれる。変だ、ぜったい。
- 新卒で就職できなかったら欠陥品な文化だものね。
- 就活に一生懸命な人ほど学業や研究を疎かにしている矛盾/新卒って考え方は終身雇用時代の影響が強いんじゃないかな
- 春まで待つと面接のとき見せてくれたヤル気っぽいのがすっかり削げ落ちてること多い。
- 今、修士2年で7月になんとか内定をもらった。就活を通じて感じたのは「あの半年はなんだったんだ」「研究に集中できずなんのために大学院に行ったのか」ということかな。
- 90年代頭まで就職活動はせいぜい4年の春からだったんだけどね……協定廃止のあとはなしくずしですね。
- 年齢により会社の給与テーブルに合わせて給与を決定する。一部の人だけ給与テーブルを外れた待遇をするのは難しい。よってまずは年功序列を無くさないと新卒偏重は無くせない。まったくバカげているけどね。
- 人を育てないくせに新卒とりたがるのって、要は安く使って、イイ歳になったら(給与が上がってきたら)リストラするってだけだもんな。
- ・・・というごくごく当たり前のことに気がつかず、景気が悪くなれば採用を辞め景気が良くなれば「人が採れない」と右往左往する輩が経営者面してることの方が不思議。採用は計画的に。
- 2010年4月から働くといっても、まだ1年と3ヵ月以上ある。そんな先が見通せる人間がいるのか疑問。
- 実現すると即戦力以外相手にされなくなって新卒学生は余計困る予感
でも実力のある人や,新卒のあとフリーターや他の方法で実力を付けた人は,いくらでもステップアップできるので,生涯賃金で見ると問題は発生しません.理想は「新卒で困るのは実力の無い人だけ」となることです.今は実力に関係なく,「卒業年度の景気」に左右されるのが問題なのです.
第二新卒はほとんどスキル無しだし,リスクも同じだよね.或いは「新卒」と,卒業後一ヶ月の「既卒」で差別する必要はどこにあるのでしょう?
「卒業後十数年たっているのに全くスキル無し」という人が中途採用で苦しむのは,今も今後も変わらないでしょう.スキル無しでもやとってくれるのは,ブラックIT企業くらいのものです.
- 簡単に切れない限り簡単に取れないのが企業側の悩みどころだよね。
これは新卒偏重の理由にはならないよ.ちなみに中途採用でも仮採用期間なら簡単に切れます.
- 「役人も記者も新卒採用が多いから」記者は知らんが役人は新卒採用なんて半分もいないと思うけど。大学出てから2年くらいフリーターしてました、みたいな人もかなりいたよ。
それはせいぜい「第二新卒」.中途採用なんてどれだけやってんの?
そもそも終身雇用前提で,余った人間は天下りで外部に押し付けてるのに,外部の人材を登用する余力などお役所にあるわけがない.
- 新卒至上・年功主義を指摘しない(したくない?)マスコミも頭おかしい。結局のところ世代間格差や少子化、社会の閉塞感の原因となってるのってこれだしな。
- もう十年前くらいから同じ事が言われつづけてるのに、なぜかこういうときメジャーな報道で話題にのぼらないのよね…。なぜなんだろ
マスコミこそ,そういう問題の温床だからですよ.A級戦犯が戦争犯罪人の責任追及などやるわけがない.
- 年功序列をまずはやめる必要がある。若さに意味がないように高い年齢にも価値はない。
そして高い年齢の人達が,高い地位と高い給与を捨てて実力主義に移行するはずがないわけです.
- 初体験で結婚しなければならない。離婚は認めない
ただし片側からのみ三行半は出し放題.
- 日本の製造業が強いのは、『ああ、このギアボックスの設計主任、俺の同期だから後で言っとくよ』 的な繋がりがあるから、という気もちょっとする。
それはもう過去の話だと思う.現場なんて非正規雇用ばかりで,正社員なんてみな管理職.現場のことなんて何も分からず右往左往してるだけ.そりゃ業績不振にもなるわ.
多分、選ぶ側も選ばれる側も楽なのかもとも思う。抜け落ちた人さえ我慢すれば、維持される世界、みたいな。
高度成長期では,ある意味でその通りだった.
景気は良いのが前提,企業業績や規模は拡大していくのが前提.土地も株価も上がり続けるのが前提の社会であれば,「抜け落ちた人」は「落ちこぼれ」で,優秀な人がそうなる確率は低いと思っておけば良かった.
今は景気は上下するし,土地は下がることもあるし,株価も業績も急落することもある.そして運悪く就職氷河期に当たった人は,欠陥品として障害を棒に振る.
それが良い国だと,いったい誰が思うだろう?
- それ以前に政治屋さんも多くの日本人もいまだに「転職は当たり前」だと思ってないよ。技術者が異質なだけで。
IT技術者でさえも「あたりまえ」と思ってるわけではない.必要に迫られてるだけ.
- 雇う側だけでなく、雇われる側も「年上の部下は嫌」とか「年下の上司は嫌」とかの意識(年功序列)を変えていく必要がある(実体験)
そんな化石がまだ生き残っていることに驚き.老害はさっさとくたばるべし.
*1:或いは「経団連からいくらお金貰って書いているの?」かな.
*2:以前も書いたけれど,最低でも初任給三ヶ月分は法律で義務づけるべきだと思う.それでも全然安すぎるけどね.卒業年度の卒業間際になって「内定か初任給3ヶ月分か」を選択させれば,ほとんどの学生は内定を取るはずだよ.
*3:「年功序列」って,要するに「老人主催のネズミ講」だから「若者 >> 中高年」でないと正常に機能しない.それが今では「若者 ≦ 中高年」であるにも関わらず老人が維持しようとするから歪んだ制度になった.
*4:米国ベンチャーのストックオプションに似た部分はある.期間と成功報酬が一桁違うことと,成功に対する責任のあり方などは全然違うけどね.
*5:あの頃の長期住宅ローンの前提は「給料は上がり続ける」「会社は潰れないし整理解雇もされない」「土地は値下がりしない/家賃は下がらない」だった.少なくとも今同じ前提を信じて住宅ローンを組む奴がいたら単なる馬鹿だ.
*6:通常3ヶ月or6ヶ月.仮採用期間がそれより長い場合は紹介予定派遣という形を取るんだろう.むしろ無い所の方が珍しいくらいか.しかしあまりに長い仮採用期間は,企業側の姿勢を疑った方がいい.もとから正社員にするつもりもないにも関わらず,「君も正社員になれる(かも)」を餌に扱き使ってる場合が多いから.