トランプ米大統領は先ごろ署名した、メキシコ、カナダ、中国からの輸入品に追加関税をかける大統領令に、小口輸入品も課税対象に含めると明記した。大統領令が履行されれば、これまで小口輸入への免税措置を利用して米国で事業を急拡大してきた中国系新興EC(電子商取引)サービスにとって大きな打撃となる。
TemuやSHEINが利用の「デミニミス・ルール」とは
米国市場で勢力を強める2つの中国系新興ECサービスは、米国の倉庫に在庫を置かず、注文が入る都度、中国から輸入して消費者に直送する。配達までの時間は延びるが、それを格安価格で補っている。
中国系新興ECサービスとは、ネット通販「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」を展開するPDDホールディングスが手がける越境EC「Temu(テム)」と、アパレル越境ECを手がける「SHEIN(シーイン)」である。
この2社が利用してきたとされるのが、小口貨物向けの関税免除措置(デミニミス・ルール、De minimis rule)だ。800米ドル(約12万円)以下の小口貨物には関税が課されず、最小限の書類提出と検査しか求められない、という特例制度である。
しかし、このデミニミス・ルールはかねて米議員などから批判されていた。バイデン前政権も2024年9月、この制度を見直すと表明していた。「中国企業が関税を回避することで、不公平な優位性を得ている」というのがその理由の1つだ。簡易検査であるため、製品の安全性も確認できない。業界団体などは、米国へのフェンタニルの流入を許しているとし、トランプ大統領に制限を加えるよう求めていた。
税制上の優遇がなくなれば、TemuやSHEINなどの中国系ECプラットフォームは低価格を維持できなくなり、ここ数年米国で見せてきた爆発的な成長も継続できなくなると言われている。
米商務省のデータによると、世界の100カ国以上が国際配送を迅速化するためにデミニミス・ルールを導入している。しかし、そのような輸入小包の免税限度額は国によって大きく異なり、米国の800ドルという基準は世界でも有数の高さになる(ドイツStatistaのインフォグラフィックス)。