(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年2月26日付)

ホワイトハウスで行われた米国とウクライナのトップ会談(2月28日撮影、ウクライナ大統領府のサイトより)

「今日では自由と独立が世界中で危険にさらされている。もし征服者に対する抵抗が功を奏さず、こちらが敗れてしまったら、いずれの国の自由も独立も、さらには自由を得る機会もなくなる」

 米国のフランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領は英国のウィンストン・チャーチル首相と1941年8月14日に合意した大西洋憲章の1周年をこのように称えた。

 その半世紀後にソビエト連邦が崩壊したことで、この理想が世界の大半で実現されるよう望むことは少なくとも無理のないことになっていた。

 だが、実現はしなかった。

 今では独裁国家がますます自信をつけているだけでなく、米国もそちらの側に付こうとしている。それが2月半ばの2週間で得られた教訓だ。

 自由はまだ、1942年当時ほどの危険にはさらされていない。しかし、いまの危険は非常にリアルだ。

国防長官と副大統領の演説の衝撃

 際立っている出来事が3つある。

 1つ目は、トランプ政権のピート・ヘグセス国防長官が2月12日に北大西洋条約機構(NATO)のウクライナ防衛コンタクトグループに向けて行った演説だ。

 このなかで国防長官は、欧州はもう自立していると述べた。米国の目下の主な関心事は自国の国境と中国のことだ。

 要するに、「欧州の安全確保はNATO加盟の欧州諸国が担わなければならない。そしてその一環として、ウクライナに対する将来の支援は兵器についてもそれ以外のものについても、圧倒的に大きな部分を欧州が提供しなければならない」というのだ。

 2つ目はJ・D・バンス米副大統領が2月14日にミュンヘン安全保障会議で行った演説だ。

 バンス氏はそこで「私が心配しているのは内部からの脅威だ。欧州がその最も基本的な価値観、すなわち米国と共有している価値観の一部から後退していることだ」と指摘した。

 そしてそうした脅威の例として「ルーマニア政府が選挙を丸ごと無効にしたこと」を挙げた。

 自由の敵が選挙を通じて権力を手に入れると何が起こるかについては、ヨーロッパ人の方が米国人よりもよく分かっているとの反応があるかもしれない。

 しかし米国人も、バンス氏の上司であるドナルド・トランプ大統領自身が4年前に大統領選挙の結果を無効にしようとしたことを知っている。

 五十歩百歩だ。