富士通の今期は4年ぶり最終赤字に、国内外で9500人削減へ
[東京 7日 ロイター] 富士通<6702.T>は7日、2013年3月期の連結純損益が950億円の赤字(前期は427億円の黒字)になる見通しと発表した。従来は250億円の黒字を見込んでいたが、一転して大幅な赤字となる。
半導体事業の構造改革や欧州子会社の減損などで特別損失を計上することが響く。赤字転落は09年3月期以来、4年ぶりで、期末配当も無配とした。国内外で約9500人を削減する方針も明らかにした。
トムソン・ロイター・エスティメーツによると、アナリスト14人が過去90日間に出した純損益の予測平均値は278億円の黒字となっている。
特損計上は総額1700億円。このうち1120億円が半導体事業の構造改革関連で、280億円は09年4月に買収した欧州子会社ののれん代未償却分の減損損失。
今期売上高予想は従来予想の4兆4200億円から4兆3700億円(前年比2.2%減)に下方修正した。国内や欧州でパソコンやサーバーの販売が減少したほか、デジタル家電向けの半導体や電子部品の受注が落ち込んだため。減収は厳しいものの、コストの圧縮や為替の円安効果もあるとして、営業利益予想は従来の1000億円(同5.0%減)を据え置いた。
10―12月期の為替差益の計上などが寄与し、経常利益は従来の850億円から950億円(同4.3%増)と従来予想を100億円上積みするが、特別損失の負担がかさみ、最終損益は大幅な赤字に転落する。期末配当は従来予想の5円から無配とし、年間配当は5円(前期は10円)に減配する。
山本正已社長は会見で、今期業績予想の下方修正について「海外事業、パソコン、デバイスが当初の見込みより悪化した」と説明、「収益改善のため抜本的な手を打つ」と述べた。半導体事業の再編や欧州ビジネスの再構築など今回の構造改革により「来年度にはV字回復を目指し、リソースシフトを同時に進める」と語った。
<国内外で約9500人削減>
富士通は同時に、1万人近い人員を削減する方針も明らかにした。国内で3000人、海外で2000人の計約5000人の社員や派遣社員を削減する。採算が悪化している半導体事業では、パナソニック<6752.T>と共同でシステムLSI(大規模集積回路)の設計・開発を手掛ける新会社などに約4500人を転籍させ、合理化を進める。富士通グループ全体の従業員数は国内外合わせて約17万3000人。
幹部社員や役員の報酬カット、営業部門への人員配転、業務プロセス改革で効率化を図り、13年度中に収益改善につなげる。15年度には営業利益2000億円、純利益とフリーキャッシュフローはともに1000億円以上を目指す計画も発表。山本社長は、人事施策や費用圧縮などで、できるだけ早い段階で400億円の確実な収益改善を目指す」と語った。
来期の特損計上については「3ケタ(億円)いくかいかないかだと思う」との見解を示した。
一方、加藤和彦CFO(最高財務責任者)は、年金資産のオンバランス化に伴い、第3四半期で25.6%となっている自己資本比率は「一時的に20%を割り込むが、本業での利益回復を着実に実行することで速やかに20%超を目指す」と述べ、増資は「基本的には考えていない」とした。また、「来期に単独の利益が1000億円出れば、復配する可能性もある」との考えも示した。
1―3月期の想定為替レートを1ドル=90円(従来は77円)、1ユーロ=120円(同100円)、1ポンド=140円(同125円)円安方向にそれぞれ見直した。加藤CFOは会見で、年金運用などの観点からも、理想的な為替水準は「対ドルで95円程度がいい」と述べた。
12年4―12月期連結純損益は901億円の赤字(前年同期は14億円の黒字)に転落した。売上高は前年同期比1.6%減の3兆1200億円、営業利益は同65.2%減の35億円、経常利益は同2.3倍の55億円だった。
(ロイターニュース 白木真紀、長田善行:編集 内田慎一)
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