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楽天の三木谷氏、目標は「トリプル20」 AIとモバイルで効率向上とエコシステム拡大を目指す

「No ~」と楽天やAIなどの必要性を説いた三木谷氏

 楽天グループは31日、楽天市場の出店店舗向けイベント「楽天新春カンファレンス2025」を開催した。本イベントには、楽天グループ代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏が登壇し、AIを中心とした楽天市場や楽天モバイルの取り組みについて講演を行った。

楽天グループ代表取締役会長兼社長 三木谷浩史氏

AIを使いこなすことが重要

 三木谷氏は、2030年までにAIエージェントが登場し、取り引きなどをAIが行うようになると予測。また、2045年にはシンギュラリティ(技術的特異点)に達する可能性があると述べ、「AIに仕事を奪われるのではなく、AIを使いこなすことが重要だ」と強調した。

 続いて、楽天のAIに対する取り組みについて説明。同社の日本語LLM(大規模言語モデル)「Rakuten AI-7B」は、独自のモデルのため、他の汎用モデルと異なり、楽天市場などに特化し、高い効率性を備えていると紹介。さらに、これを発展させた「Rakuten AI 2.0」や、スマートフォン向けの「Rakuten AI 2.0 mini」を展開していく計画を示した。

 そこで楽天は今年、AIのさらなる活用を推進し、「マーケティング効率」「オペレーション効率(売上)」「クライアント(店舗)効率」をそれぞれ20%向上させる「トリプル20」の目標を掲げた。

 「Rakuten AI」の活用事例として、楽天市場での検索機能を改善した結果、ユーザーの検索意図をより正確に理解し、最適な検索結果を表示できるようになった。その結果、検索結果ゼロの状態を約98.5%削減し、流通総額を5.3%増加。また、店舗内のレコメンデーション機能の向上により購入率が約60%向上し、楽天市場のトップページからの広告売上も4%増加した。

 さらに、楽天社内のオペレーションも「Rakuten AI」により効率化。社内調査の結果、作業時間が10.7%削減されたとし、一例として商品ページ情報を入力するとAIがVBAを生成し、製品比較スライドを自動作成する機能を紹介。今年はさらに10%の効率向上を目指し、20%の改善を実現する計画だ。

 また、楽天市場の出店者向けには、「RMS AIアシスタント β版」による商品画像加工支援AIや店舗カルテ分析支援AIを活用し、「オペレーション効率(売上)」の20%向上を目指す。

「商品画像加工支援AI」で画像作成時間を90%削減。新規商品登録増加により流通拡大へ
「店舗カルテ分析支援AI」で報告資料作成時間を削減。浮いた時間を他業務に活用

 店舗向けの広告施策では、AIとの対話を通じて広告パフォーマンスを1.5倍向上させた事例や、楽天スーパーSALEの実績をAIで分析し、販促施策を強化した結果、流通総額や販売件数が75%以上増加した事例を紹介。こうした取り組みを通して「クライアント(店舗)効率」の20%向上を目指す。

AI+モバイル モバイルデータを活用した新たな価値を提供

 次に、楽天モバイルにおける取り組みを紹介。三木谷氏は、2020年と比較して2024年のインフレが加速し、物価全体が上昇したものの、楽天の参入により通信費は低下したと主張。また、AIは今後も進化し、将来的にはネットワーク上にAIが存在することで、高価なスマートフォンを必要とせず、同様の機能を利用できるようになると語り、「AI+モバイル」が生活の中心になると述べた。

 また、楽天モバイルは若年層を中心に乗り換えが増えており、楽天モバイルユーザーは非ユーザーに比べ、楽天のサービスを平均2.4個多く利用しているという。特に楽天市場での利用金額は約50%増加し、楽天カードとの組み合わせによる顧客育成効果も大きいと説明。さらに、昨年12月に実施した「楽天モバイル最強感謝祭」が大成功し、楽天モバイルユーザーの1人当たりの月間購入額が非ユーザーと比較して1万3444円増加したと述べた。

楽天エコシステムの流通総額も拡大
「楽天モバイル最強感謝祭」を年に4回実施する予定

 こうしたユーザーの増加により、楽天には膨大なデータが蓄積される。例えば、楽天モバイルのデータを活用し、競合サイトを訪問したユーザーへのプロモーションを行ったところ、訪問率が93%向上したという。今年はこの楽天モバイルのデータを活用したプロモーション用の広告商品を出店者向けに提供する計画を示した。

楽天モバイルユーザーを増やすことで、楽天エコシステムの発展に繋げる狙い