これはドラッグの映画ではない。愛とアクションの映画である。
『CANNABIS(大麻)』が『ガラスの墓標』になるのは一体どういうことなのか分からないけれど、その飛躍が映画史に残る見事な邦題です。
冷たい美しさのある邦題にふさわしく、主演のジェーン・バーキンの美しさだけで100分は軽く持つ映画に仕上がっています。より高画質なリマスターBDや、このころに撮影した写真集があったら欲しい位。
もう一人の主役であるセルジュ・ゲンズブールはルパン三世のモデル?毛深くワルイ二枚目。そして意味不明なレベルのモテ……
意味不明なモテでも、そのおかげで美しいジェーン・バーキンが脱いでくれるからそれがいい。
主演のジェーン・バーキンは恐らく23歳。セルジュ・ゲンズブールは41歳程。
映画の役名が本人と同じセルジュとジェーンってところでもう「おれたちのカッコ良さを見てくれよな」と云っているような感覚です。
シナリオの方は設定の説明が最低限を大幅に割っていて、繋がっているようにはとても見えませんでした……
舞台は1969年、ミッドセンチュリーのお洒落をしたフランス。
殺し屋をやめたいセルジュ・ゲンズブールは、パリの空港で待ち伏せしていた抗争相手のギャングに拉致される。銃を持った抗争相手を殺傷して何とか逃亡する。飛行機で知り合っていたジェーン・バーキンにかくまってもらう。いつのまにかラブラブ。
ボスの妻から情報を得て抗争相手のニワトリ農家偽装大麻工場を壊滅させる。しかし殺し屋をやめたいセルジュにとっては虚しいことだった。ジェーンと愛しあうことくらいしか確かなものはなかった。
セルジュが殺し屋を辞めると知った長年の相棒ポールは、組織の命令もありセルジュを狙う。
ただでさえ映画的ドラマチックでないシナリオ構造をしている上に、途中途中でワンポイントリリーフ的にインパクトが強いだけで描写が薄い人物が登場して混線するのも分かりづらいところです。ボスの妻や、精神病院の麻薬中毒者など。
フィーリングが大事なシナリオだけど、それに乗るのがひどく難しい。
美女(ジェーン・バーキン)の内面の理解し難さには、北野武映画的なものを感じました。ワルの前にどこからか現れて、尽きない愛を何故かくれる。
そして、抗争の世界から足を洗おうと、かつての仲間と戦って死んだセルジュにショックを受けたジェーンの絶叫でこの映画は終わる。