スピーカーの選び方
スピーカーの形状は、本棚に置ける小型の「ブックシェルフ型」、床に置く大型タイプの「フロア型」、設置面積の小さい縦長の「トールボーイ型」に分かれます。ここでは、各形状・タイプの違いから、主要メーカーの特徴まで、スピーカー選びのポイントを紹介します。
2023/11/9 更新
目次
スピーカーは、再生機器が出力しアンプで増幅された音声信号を、物理振動に変えて音を出す機器
スピーカーは単体で音を鳴らすものではありません。音を鳴らすためには、CDプレーヤーをはじめ、デジタルオーディオプレーヤー、スマートフォン、パソコン、レコードプレーヤーなどの再生機器や、プリメインアンプやAVアンプなどが必要になります。再生機器から出力された音声信号をアンプで増幅し、物理振動に変えて音を出すことにより、楽しむことができます。また、スピーカーは再生する音の音域や用途にあわせて種類が分かれているので、自分がどのような“音”を楽しみたいのかを基準に選ぶとよいでしょう。
音楽鑑賞の基本はステレオ、サラウンド向けに2.1/5.1chも
本格的なオーディオ環境を構築する場合、複数のスピーカーを組み合わせるのが一般的。音楽を楽しむなら、左右の2本で構成する「ステレオ」が基本になります。2本のスピーカーにウーハーを組み合わせた「2.1ch」、5本のスピーカーとウーハー1本を組み合わせた「5.1ch」などもあり、映画などの臨場感を楽しむサラウンド環境向けに選ばれることが多いです。
左右にスピーカーを配置して構成。立体感のある音響をつくる
左右1本ずつ、合計2本のスピーカーで構成され、それぞれを左右に離して設置します。左右のスピーカーから異なる音を出力することで、立体感を作り出します。
ステレオにウーハーを追加して低音を強調する
左右2本のスピーカーにウーハーを加えたスピーカーのセットで、ステレオよりも低音が強化されています。なお、0.1はウーハーのことを指しています。このタイプは近年製品数が少なくなっています。
5本のスピーカーとウーハー1本で、臨場感のあるサラウンドを再現
前方に左右2本のスピーカーとセンタースピーカー、後方左右に2本のスピーカー、ウーハーを加えたスピーカーセット。音楽鑑賞ではなく、ホームシアター目的で用いられ、臨場感あるサラウンドを楽しめます。
強調したい音域や音の種類に応じて追加するスピーカー
音にこだわりたい場合は、特定の音域や目的に特化したスピーカーを追加します。低音用の「ウーハー」や高音用の「ツイーター」、主にボーカルを正面から感じるための「センター」などにタイプが分かれています。ちなみに、中音用のスピーカーユニットは「スコーカー(ミッドレンジ)」といいます。
高音域の再生を担う
小鳥のさえずり声(Tweet)が語源にあるように、高音域を担当するスピーカーです。さらに超高音用の「スーパーツイーター」もあります。
スピーカーにはステレオの左右がペアで販売されているものと、それぞれ単品で販売されているものがあります。
スピーカーにはさまざまな大きさや形状のものがあります。以下が代表的な形状です。設置場所や目的に合わせて最適な形状を選びましょう。
本棚に置けるほどの小型スピーカー。縦置き・横置きの両対応製品も用意
本棚にも収まるくらいの小型サイズであることから名付けられた経緯があり、キャビネット(箱全体)の大きさは小さめです。製品のなかには、縦置きや横置きの両方に対応した製品もあります。床に置くときは、専用のスピーカースタンドなどに載せて使います。
床に置くタイプの大型スピーカー。ずっしりとした低音が楽しめる
スピーカースタンドなどを使わず、床に直に置いて使う大型のスピーカーです。本体サイズが大きいので、低域に理想的な周波数バランスが作りやすくなります。サイズが大きいため、どうしても広い設置スペースが必要になります。
設置面積の小さい縦長スタイル。スピーカースタンドも不要
フロア型の中で、横幅が狭く縦に細長いタイプのスピーカーで、テレビやプロジェクタスクリーンの脇へ置きやすいのが特長です。設置面積が小さく、スピーカースタンドを使用せずに床に直に置けて便利なので、現在主流のタイプです。ツイーターは高い位置にあります。
スピーカーユニットとは、スピーカーの箱の内部に固定され、音を発生させる部分のことです。1つのユニットで高音域から低音域までカバーするものを「フルレンジ(1WAY)」といいます。また、低音域をカバーするユニットと高音域をカバーするユニットを搭載したものを「2WAY」、2WAYに中音域をカバーするユニットを搭載したものを「3WAY」といいます。2WAY以上のスピーカーユニットで構成されたスピーカーは、「マルチウェイ」とも呼ばれます。以上の説明から、ユニット数とWAY数は等しく見えますが、実は同じではありません。例えば、低音域用のウーハー2つと高音域用のツイーター1つの計3ユニットで構成され、ウーハー2つの再生周波数帯が同じ場合には、2種類の音域を発するユニット構成となるため2WAYになります。この場合は2WAY3ユニットなどと呼ばれます。なお、2つのユニットの再生周波数帯が一部だけ重なっている場合に「0.5WAY」とカウントとするメーカーもあり、3ユニット搭載で「2.5WAY」、4ユニット搭載で「3.5WAY」と表示されている製品もあります。
搭載ユニット数から選ぶ
WAY数から選ぶ
ハイレゾとはハイレゾリューション(高解像度)のことで、 「ハイレゾ音源」とは、スタジオで録音したマスター音源に限りなく近い高解像度の音源(データ)のことを指します。CDよりも情報量の多いハイレゾ音源対応製品なら、よりきめ細やかで、空気感と臨場感のある音を表現できます。
スピーカーの魅力は、音を楽しむ機能面だけでなく、インテリアとしての存在感にもあります。部屋の雰囲気とうまく調和したデザインを選べば、より一層充実したオーディオライフとなるでしょう。
「最高のスピーカーとは、最も多くのものを与えるものではなく、失うものが最も少ないものだ」と語る、創設者のJohn Bowers(ジョン・バウワース)の名を冠したイギリスの高級スピーカーブランド。パワーとスケール感を備えたブックシェルフ型スピーカー「607 S2 Anniversary Edition 607S2AE/MB [マットブラック ペア]」など、音質にこだわったスピーカーを多数ラインアップしています。
ボーカル音源はくっきりと忠実に、重低音はクリアに再現するなど、音の良さをトータルで追求しています。ポート両端での気流の乱れを抑える独自の「ツイステッドフレアポート」を備えた、サブウーハーのエントリーモデルが特に人気です。
アメリカの老舗音響メーカー。透明感ある高域と量感豊かな低域が楽しめるモデルや、住空間や商業施設への導入に最適な小型モデル、プロ用モニタースピーカーのために開発されたホーン技術を高域ユニットに採用したモデルが人気です。
1972年に設立されたスピーカー専業メーカー「Polk Audio(ポーク)」。ラインアップは、「Monitor XT」「Signature Elite」「Reserve」の3シリーズを展開しています。人気モデルの「Signature Elite ES20」は、ハイレゾ対応のテリレン・ドーム・ツイーターと6.5型のマイカ強化ポリプロピレンドライバーを採用したブックシェルフ型スピーカー。40kHzに至る超高音域の再生が可能です。
電源コードをつなげればスピーカー間でワイヤレス接続が可能なモデルや、独自開発の「WDスーパートゥイーター」を搭載し、磁気回路の強化や銅メッキアルミ線採用などにより音圧不足を解消できるモデルなど、幅広い製品ラインアップが魅力。サウンドバーと組み合わせて360立体音響を楽しめるリアスピーカー「SA-RS5」が人気です。
デンマーク産ハイエンドスピーカーの代表。北欧ならではの洗練されたデザインが魅力。スペシャル・エディションのコンパクト・ブックシェルフスピーカーや、高音質化を実現する「SMCマグネット・システム」搭載のブックシェルフ・スピーカーをラインアップしています。
スピーカーの「能率」を示す数値で、単位は「db(デシベル)」で表されます。スピーカーに1Wの電気信号をくわえて、1m離れた場所に置いたマイクで測定します。この数値が大きくなるほど、スピーカーから出てくる音が大きくなり、アンプの出力は少なく済みます。85〜95db程度の出力音圧レベルのスピーカーが一般的です。
出力音圧レベル(W/m) から選ぶ
スピーカーが壊れずに耐えられる最大のパワー(容量)を指し、「W(ワット)」で表します。なお、数百Wの出力があるアンプであっても、家庭で通常の音量で音楽を聴いている場合はせいぜい数W程度の出力です。許容入力を公表していないメーカーもあるので、特別気にする必要はないでしょう。
許容入力から選ぶ
ユニット数を増やして動かす空気の量を増やす工夫が施されているからです。
スピーカーの低音再生能力は動かす空気の量に比例しているので、小口径スピーカーユニットの場合、ユニット数を増やして振動板面積を増やし、空気の振動体積を増やす工夫が取られています。このほか、大口径のスピーカーユニットを使う、コーン紙など振動板の動く幅(振幅)を大きくするといった方法が一般的です。
スピーカーに送られてきた信号を高音域・低音域などに振り分けるための回路です。
ネットワーク回路とは、マルチウェイのスピーカーに組み込まれている回路で「LCネットワーク」ともいわれます。マルチウェイのスピーカーで使われるスピーカーユニットは、それぞれ得意とする音域があります。そこで、スピーカーに送られてきた信号を適した音域(低音域・中音域・高音域)のユニットに振り分け再生させるのがネットワーク回路の仕事です。
スピーカーの入力側に高音用と低音用それぞれ独立した端子が設けられていることです。
アンプとスピーカーは通常1本のケーブルで接続します(シングルワイヤ接続といいます)。それとは別に、高音用と低音用の端子を持ち、アンプから高音用と低音用の信号を独立して入力することができるスピーカーもあります。この場合スピーカー1本につきケーブルが2本必要になりますが、この接続方法を「バイワイヤ接続」と呼んでいます。高音、中音、低音それぞれの入力端子を持つ「トライワイヤ接続」に対応した製品もあります。いずれも音質が向上する接続方法といわれ、高価格帯のスピーカーで採用されています。バイワイヤ、トライワイヤ接続対応製品であっても、端子同士を繋ぐ「ジャンパー線」が付属されていることが多く、シングルワイヤ接続も可能です。同じアンプとスピーカーでも接続方法によって音が変わるため、愛好家は好みの音を出す接続方法を選んでいます。なお、高音用・低音用に2台のアンプを使う「バイアンプ」という接続方法もあります。
周波数帯域
スピーカーが再生できる低音から高音までの周波数の範囲を表す数値で、単位は「Hz(ヘルツ)」で表します。周波数帯域が広いほうが高性能といえますが、音質のよさを表すものではないので、極端に狭い場合を別にしてあまり気にする必要はありません。
ドンシャリ
再生される周波数の特性による音の傾向を表す言葉で、低音(ドン)と高音(シャリ)が際立った音のことをいいます。もともとは、音のバランスが悪いときに使う表現でしたが、聞く音楽や好みの音質が多様化していることもあり、最近はドンシャリを好まれる方も多いようです。
並行輸入品
海外メーカーの製品では、「正規輸入品」のほかに「並行輸入品」が存在します。「正規輸入品」とは、日本国内で「国内正規品」と呼ばれるものです。一方で「並行輸入品」とは、販売店が国内の正規代理店を介さず、海外で販売されている正規品を海外で直接仕入れた製品を指します。「国内正規品」と「並行輸入品」は、流通経路が異なるだけで、同じメーカーが製造した同一の製品となります。
国内正規品の特徴 | 並行輸入品の特徴 |
---|---|
正規代理店による保証を受けることができる | メーカーによっては正規代理店ではなく購入ショップでの保証となる |
メーカー設定の価格となるため、価格の変動が少ない | 海外での仕入れのため、為替の影響を受けやすく価格の変動が大きい |
無指向性スピーカー
スピーカーから出る音はさまざまな方向に広がっていきますが、音が高くなるほど広がりにくくなり、反対に低音になるほど拡散しやすくなります。そのため、リスニングポジションに合わせてスピーカーの向きを微調整することになります。無指向性スピーカーなら、360度前後・上下・左右に均等に音を出すことができるので、どこで聞いても同じように聞こえます。