皆様、お久しぶりでございます。『ダンジョンシーカーズ』で第二回一二三書房web小説大賞を受賞した七篠康晴です。②巻の発売から一年ほどの時が経ちましたが、③巻を出せることになりました!
一二三書房 サーガフォレスト様より2024/12/13発売予定です。
https://hifumi.co.jp/lineup/9784824203441/
内容は原作の第三章にあたる部分でして、間章の方は全面カットとし、改稿を行いました。
スタイリッシュなデザインとイラストレーター 冬野ユウキさんの美麗な挿絵が八枚付いての販売です。
ぜひ、宜しくお願い致します!
また、長らく企画進行中となっていたコミカライズの方も連載が決定し、ただいま準備期間となっております。もうそろそろ、そちらの方もご報告できるのではないかと思います。
以上、③巻発売報告です。
ここからは、近況報告の方をさせていただければなと思います。
一二三書房で受賞させていただいてから、webで活動することがなくなってしまいましたが、創作自体はずっと続けています。受賞後、他社でも出版したいなあと考え、公募活動に勤しみ、約二年間で5作品ほど執筆し、完成させました。没を含めると、7本くらいは書いたかもしれません。ウェブの更新も、一巻二巻発売の関係から2023年中はやっていた印象。
以下に、その期間の内容を報告させていただきます。
2023/5 一作品目
『TOKYO GEMSTONES』
宝石の化け物と戦うSF現代ファンタジー。
GA文庫大賞三次落選。今思えばこれが一番惜しかったかも。
敗因:話の内容が暗すぎて、「マイナスからゼロの物語」になっていた
2023/8 二作品目
『いつかどこかで そのうちきっとを』
ライトノベルの文体・描写であるのにもかかわらず題材が文学向きという実験作。
師匠である専業作家さんに読んでもらったところ、『文学でやった方がいい』とのアドバイスを貰う。
私小説的な内容で、中学二年生のときにアメリカに移住した日本人の主人公の苦しみとその浄化を描いている。
2024/3 三作品目
『満ち欠けのプリズム』
上記の作品の改稿作。半年間で五回ほど改稿し、文学ないしは文学よりの文芸へと振り切った。
ある演出上の問題を解決するため、主人公が小説を趣味として書いておりそのキャラクターを幻覚に見ているというイカレ設定が導入された。ちなみにキャラクターと作中作は私の処女作がモデル。
自身の過去と向き合う内容だったため、あまりにも苦しく、PTSDになりすぎて応募時の書式を間違えるという有り得んミスを犯す。
小説すばる新人賞にて落選。
正直どの作品よりも優れていて、無謬だと思う。最近になって公募に回すか悩んでいたが、友人の極めて優れた作家から「このままで良いと思う。本当に良かったよ、面白かったよ」と言ってもらえた。自分が偉大な作家になったら、元原稿として使い、絶対に出版したい作品の一つ。
この作品を書いたせいでおそらくすべてが狂った。また、大学生活の中で様々な出来事があり、この頃からだんだんと頭がおかしくなり始める。
敗因:公募の運ゲー
2024/05 四作品目
『トーキョージェムストーンズ・リローデッド』
「TOKYO GEMSTONES」を一二三の担当編集者さんに読んでもらい、そのアドバイスから生まれた書き下ろし新作。世界観を共有しているが、全く違う話となっている。
評価シートというものが公募で貰えることがあるのだが、GAの評価シートの内容も鑑みて、執筆した。
GA文庫ってラノラノしたラノベだし、やっぱり性的描写だろということでスパッツについて熱く描写するシーンがある。コメディ的雰囲気も加えた。
しかし、最も通過率が高いと言われるGA文庫大賞にてまさかの一次落選。
(わざわざ書きたくもないスパッツ書いたのに!?)
評価シートにはアホほどトンチンカンなことが書かれていて、挙句の果てには練習のために三題噺を原稿用紙五枚に書きましょうなどという、ふざけたテンプレ的アドバイスが付いていてガチギレ。いやちょっと、一応書籍化してるんですけど……
(落選直後、ファンタジア文庫大賞に回したところ二次落選となった。三題噺は流石に嘘ということがここで分かる)
(GAは一次落選作品にも評価シートを書いてくれる優良レーベル。ディスった後ではあるが、そもそもありがたい話ではある。公募初心者にオススメ!)
文体・疾走感などは良かったが、そもそもの構成が甘かった形。後から振り返って考えてみれば、反省点は沢山あった。あの評価シートが指摘してきた以外のポイントで。
敗因:制作期間が三週間/ノープロット
そろそろ作品を乱打するのはやめて、練り上げた一発を送るべきなのではないか?と考える。しかしここ辺りから、近年の新人賞の受賞作を見て、だんだんと萎え始めた。
特に何の意味もなくキャラクターにVtuberが出てきて、配信コメントを小説で読むときの虚無感はすごい。Vtuberが主題の作品であれば構わないのだが、何故通常のラブコメにVtuberがこんなにもしゃしゃり出てくるのか理解ができない。
現代的な描写で良いという話を他者から聞いたが、実際は作り手側がVtuberに極めて強く依存しているとしか思えない。
現代的な描写であるというなら平等に、う〇こちゃんや釈〇をモデルとしたラノベ主人公を出すべきである。(マジで出たら出たで困る)
最近、デスゲーム系Vtuber「ですげ えむ」がVtuberを集め、デスゲームを開催するというラノベのネタを思いついた。負けたらメキシコのプロレスラーのように、マスク(皮)を剥ぎ中の人を出すという内容。視聴者(読者)はもしかしたら中の人は可愛いんじゃないか……というドキドキ感を抱きながら、スカートのチラリズムを刺激される。ルッキズム批判を行う作品になるだろう。
(正直もうやってる人いそう)
2024/9
『幹事長 川端朝日くんの性春コンプレックス』
某有名ラブコメラノベを読み、自覚のない性的消費の構造にマジ切れしたことから生まれた怪作。その作品を読んでから悩みすぎて、ジェンダー論を専門にしていた大学教授に一回相談した。
漫画のラブコメが「ニセコイ」などの平成期作品の反省を活かし、令和のラブコメとして花開いていく中、ラノベはASMRのタイトルと見分けがつかないほぼほぼポルノの作品を量産している嘆きから誕生した。キャラクターの精神性(コンプレックス)を主題としており、恋愛できない空気/性を嫌悪する空気の中で性に刺激される主人公の姿を描いた。
途中で別の怒りなども込められていき、ずっと迸っている内容となっている。
制作期間は一ヶ月ほどだったが、正直あまりにも面白くできてしまったため、これが受賞すればこの作品以前のラブコメラノベは葬り去られ、全て過去のものとなると確信していた。
しかし。
小学館ライトノベル大賞(ガガガ文庫)にて一次落選。
公募の選考結果の画面というのは、作品タイトルがずらっと並んでいて、スワイプをしていき自身の名前がないか探すものとなっているのだが、二回スワイプしたところで私の作品は通ってないと確信した。
(そもそも私が殺害し葬り去ろうとしていた、平成に囚われたラブコメっぽい作品がVtuberの皮を被って令和に偽装し、選考を突破していたため)
その怒りの勢いのままに「ライトノベルは死んだ。何故ならオタクに同情したからだ」という反ラノベ思想をエッセイ形式で執筆しかけたが、先述の作家の友人に読んでもらい、トラブルシューティングを受けた。十ページを読んだところで彼は面白いけど、と言いかけた後、
「お前本当にラノベ読んだことあるのか?」
「ラノベの読者が付いていけない文になっている」
彼はそう言った。例えばこの文、ラノベでは本当の本当にたまに出していい決め技の文章だけど、それがこの作品には頭からケツまでずっとあると。
確かに言われてみれば難しすぎるような気もする。ただラブコメの構造/文脈には則っているはずなので、問題ないはずだと主張したが封殺された。怒られた。
冒頭だけでこの有り様であるのにもかかわらず、そもそも後半に向かうにつれて内容が内省的・哲学的なものにも向かっていくため、ますますダメ。
最近、後輩の薦めで秋山瑞人著「猫の地球儀」を読んだがあまりにも面白かった。ラノベにおいては、あのような読みやすさと設定の重厚さを噛み砕いた作品を書ければなあと思う。秋山瑞人の文は私のこの作品の文よりも明らかに分かりやすかったので、私が悪いことを確信。
しかし、ラノベだから、という言い訳によって知性を否定するポピュリストは駆逐しなければならない。ラノベは図書館で最も借りられる図書だそうですし、国民教育の一端を担っている。
ラノベラブコメの構造/文脈に乗りながらラノベでは出せず、文芸としては先行作品がないキャラクター的すぎる内容といった形で、行先を失くした。
里帰りも兼ねてwebで投稿し、カクヨムコンテストに置くだけ置いておこうという形。
現在投稿中ですので、是非、宜しくお願いします。
『今後の予定』
ハヤカワSFコンテストに全ツッパした後、文芸に行くかラノベに戻るかを考えます。
処女作のKindle出版についてですが、処女作のことを愛しすぎて六万文字を没にしたりと、遅々とした執筆になっていました。しかしながら最近ようやっと納得できる設定を思いついたので、来年中には出したいと考えています。楽しみにしてくださっていた皆様、ごめんなさい…………
さて、最後にですが、なろうを離れている間読んだラノベで、一番面白かったラノベを紹介していきたいと思います。
さんざん述べた後ですが、私はVtuberが嫌いなわけではありません。
きちんと、おすすめのVtuberラノベ作品を紹介します。
ファンタジア大賞受賞作「Vtuberのエンディング、買い取ります」は素晴らしい名作です。
「政宗くんのリベンジ」で知られるRiv先生の美麗なイラストに加え、ラノベとしては硬派な描写の数々。その内容は圧巻です。
ファンコミュニティのリーダーであった主人公が、推しのVtuberを炎上によって失い、髪の毛が白色になってしまうほど苦しむところから一巻は始まります。髪が白くなる、と聞くと「東京食種」が頭に浮かびますが、耳に百足を入れられ目の前で親子を殺された金木研と同じほどの苦しみと考えれば、とんでもないものでしょう。
Vtuberラノベはその構造上、購買層に背くことになるためVtuberそのもののスキャンダルなどを扱うことが非常に難しく、また、通常のVtuber描写であれば単純にVtuberを見ればよいという極めて題材として特殊かつ難しいものとなっていますが、この作品は推しVの引退から、炎上まとめサイトを運営する主人公がVtuberたちのトラブルを解決していく、という極めて意欲的な内容です。炎上の理由としては納得感があり、またオタクの描写も不快にならないギリギリを攻めるなど、挑戦的な内容となっています。
一巻は特に良くまとまっていて、本当にどうなるんだ……と思って読んでいたときに、最後の挿絵が出てきたときには、衝撃のあまり爆笑してしまいました。本当に素晴らしい。そしてまあまあ重大なネタバレになるはずの挿絵をナチュラルに公式ツイッターが販促のため掲載するところも含めて面白い。
推しとファンの関係について考察された作品となっています。一巻だけでもとてもオススメできる内容となっていますが、是非続刊である二巻も読んでいただきたい。
二巻では一巻で登場したキャラクターたちとともに、登場するVtuberたちの問題解決を行うのですが、クライマックスの章が本当にすごい。
主人公は推しを失う気持ちを知っているはずなのに、力と正義を手にしたそのとき。他のキャラクターを救うためとはいえ、純粋なファンを抱える悪役Vに制裁を下す衝撃的なシーンは、権力について極めて考えさせられる内容となっています。ダブスタと言われればそうなのですが、我々はそこまで自覚的にものを考えられない。間主観性に支配される私たちは自身の客観視など決してできないのだと、そう感じました。無論純粋な勧善懲悪としても楽しむことができる構造になっており、これぞライトノベルのかくあるべき姿です。
続刊が出なかったことが非常に残念ですが、コミカライズのクオリティも素晴らしいです。話題になれば続刊が出るかなと思ったので、一筆書きました。是非、宜しくお願い致します。