概要
忘れられてしまった夢にこそ大切な現実世界がある
高圧電線の鉄塔が景色を横切っていく。そんな光景の意味を考え、この情緒を感じることは、人類の敗北でもあり、また希望でもある。一匹の白猫が、ガードレールを器用に飛び越え、そして視界から消えた。
立原ツグムは同じ夢を見る。何度も繰り返し、繰り返し。時間にすればたった数分でしかない夢。しかし、その数分の間に世界が夢であるような現実であるような、その境界線の行方をどうしても意識せざるを得ない。その意識はやがて、むな苦しさに変わっていく。
――忘れられてしまった夢にこそ大切な現実世界がある。
春の訪れという淡い期待の中に一抹の、でも決してぬぐいされない不安を覚えるのはなぜだろう。やけに苦しいと感じるなら、それは季節のせいかもしれない。変化というプロセスには僕らの想像以上の負荷がかかるものだ
立原ツグムは同じ夢を見る。何度も繰り返し、繰り返し。時間にすればたった数分でしかない夢。しかし、その数分の間に世界が夢であるような現実であるような、その境界線の行方をどうしても意識せざるを得ない。その意識はやがて、むな苦しさに変わっていく。
――忘れられてしまった夢にこそ大切な現実世界がある。
春の訪れという淡い期待の中に一抹の、でも決してぬぐいされない不安を覚えるのはなぜだろう。やけに苦しいと感じるなら、それは季節のせいかもしれない。変化というプロセスには僕らの想像以上の負荷がかかるものだ
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!これぞSF! 今だからこそ突き刺さるテーマだ
ボーイミーツガールなサイバーパンクもの。
まず印象に残ったのは、どことなくポエム的な文章で語られているところ。独特な世界観は幻想的ともいえる不思議な感覚をもたらしますが、この書き方はまさに作品にとっての一つの題材でもある「夢」との親和性がいい。最初は「掴みどころがなくてよくわからない」といった具合でしたが、物語の世界が明かされていくにつれて「なるほど」と腑に落ちる表現だったと感じました。素直に「うまい表現だな」と感心しました。
あと作中において、ウイルスの影響によって激変した世界を描いていますが、このあたりも現在猛威を振るっている新型コロナウイルスを彷彿とさせるものがありますね。感染症と…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人間は幸福な夢の中に生きられるか?
主人公は白昼夢を見ながら、友人と高校生活を送っていた。しかし、その平穏な日常は、突如として終わりを迎える。主人公が見ていた白昼夢も、高校生活も、全てはあるものによって見せられていた幸福な夢だった。そんな夢から目覚めた主人公は、一人の少女と出会い、世界の秘密を知る。その世界の秘密は、制御された「起きている人」と「眠っている人」を分けるモノだった。文字の集積物である本を焼く男。魚を釣っている男。本を託された女性。「起きている人」たちは、皆、死んでいくようだった。それに対して、「眠っている人」たちは、永遠に安全な場所で、幸福な夢を見続けていた。
少女は主人公と共に、母が所有していたデータを持ち…続きを読む