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金沢で能登復興会議「のとボイス」 25人の登壇者が課題を議論

会場の様子

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 能登復興会議「のとボイス」第1回が2月2日、金沢未来のまち創造館(金沢市野町3)で行われた。

「のとボイス」の様子

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 主催は、能登復興建築人会議、認定NPO法人「趣都金澤」、みやぎボイス連絡協議会から成る「のとボイス連絡協議会」。

 当日は「既存ストックのゆくえと能登の未来」をテーマに、計25人の復興関係者が登壇した。会場には約40人、オンラインには約80人が参加した。

 金沢工業大学教授の竹内申一さんは、能登復興建築人会議が行う「能登半島地震住宅資源悉皆調査」を説明。価値があり残すべき家があるのではと6市町89地域の約6000棟の公費解体対象建築物と歴史的建築物を調査していると報告。全国古民家再生協会が行っている「被災古民家保存活用・調査プロジェクト」では相談窓口を設置し、調査や相談に応じていると説明した。

 石川県の浅野大介副知事は「公費解体完了10月末というのは熊本地震を前例に設定した目標だが、それまでに必ず壊さないといけないという誤解が生じている。所有者が検討のために留保したいものや解体に課題がある建物についてはその限りではないので周知したい。古民家という言葉も誤解されるが、歴史や文化的価値を必ずしも求めていない。既に申し込んだ人も考え直すことができるので相談してほしい」と話す。今後増える空き家に対しては「残そう」ではなく「生かそう」という話にしないと動きが生まれないとして「災害公営住宅も10年後には空きが出る。分散型ホテルや民泊事業者などの意見を聞いて空き家の活用を考えたい」と話す。

 東京大学特任研究員の菊池雅彦さんは、国交省で復興事業に関わった経験から、支援のしかたや費用が大きく違ってくるので、所有者は「なぜその建物を残そうとするのか」と「その建物で何をしようと考えているか」を明確にした上で対応を考える必要があると話す。

 金沢R不動産社長で能登復興建築人会議副会長の小津誠一さんは「残すべき建物に選定基準や価値算定など価値付けする必要がある。金沢の『特定金澤町家』のような指定制度は参考になる」と話す。文化的価値を正しく評価し地域経済に貢献できる「健全な不動産取引」が課題だとする一方で、4月に改正・施行される建築基準法は能登の復興に影響があると指摘した。

 石巻で現在、空き家の賃貸サービスを行っている「巻組」社長の渡邊享子さんは「石巻も震災後に人口が2万人減り、空き家も増えた。能登定住促進協議会と協働しているが、能登では医療や教育などエッセンシャルワーカーの移住先も無い。空き家の活用は資本を外に求めるだけではなく、地元で意欲と実力があるまちづくり会社が参加できる行政のしくみも必要」と話す。

 岩手県で住宅の復興業務を経験したという国土交通省の大水敏弘さんは「東日本大震災では13日後に道路はほぼ復旧したが、能登は未だに寸断している。人口も2割減り、児童数は3~4割減っている」と厳しい現状を共有。「岩手では区画整理して造成し災害公営住宅完成まで7年かかった。中越地震では村ごとまとまって避難したので3年半で完了し、7割の住人が戻った。熊本地震では区画整理事業完了まで12年かかるのでまだ完了していない」と各地の状況を共有した上で、「復興には合意形成が最も重要なプロセスで時間がかかるが、輪島だけで集落が180もあり、課題が多い」と話した。

 東北大学教授で輪島市復興まちづくり委員長を務める姥浦道生さんは「人口減、高齢化、少子化を受けた復興には、町を単にコンパクトにするだけではなく魅力をどう作るか、そのために町をどう運営していくかが課題。洗濯物が干してあるような日常の街並みや、漁網が家の前に掛けてあるような漁村の風景などをどう取り戻すかも重要」と話した。

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