- 作者: 池田輝久
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2007/05/18
- メディア: 単行本
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米国の会社との取引で、納期についてもめています。先方は来週水曜日までに納品してほしいと要求していますが、まだ確約できる状況ではありません。「全力で努力する」と説明しているのですが、先方は「コミットメントが欲しい」と文書にサインを要求しています。あなたはどう対処しますか?
(a)コミットメントし、サインする
(b)コミットすると口では言うが、サインはしない
(c)コミットできないと拒絶する
『大人の仕事ドリル』 〜上級問題 Step4 Q6 P.179〜
これは外資系企業に長く勤めている人にとってはかなり常識的な問題だが、日本企業にしか勤めたことがない人はわからないかもしれない。解答は本書は買って・・・、というのもよいが、それでは本書の良さが伝わらないので、あえて解答まで紹介してみたい。
(a)0点 (b)0点 (c)5点
コミットメントという用語に対する認識が日本と外国では全く異なることを知っておいてください。外国では「実現できなければそれ相応のペナルティを負う」ということを意味します。安易にコミットして実現できなければ、大問題になるかもしれません。口ではコミットするがサインはしないというのは無理で、コミットすると言えば、サインを要求されます。
こんな形で選択肢ごとの点数と短い解説が問題ごとに加えられている。
筆者は、IBM、タンデム、オラクル、EMCと名だたる外資系企業を渡り歩いた人物で、外資系企業で働き、成果をあげることについてはエキスパート。*1コミットメントなどの言葉に対する解説だけではなく、お客様を海外視察ツアーに連れて行く際の各種ポイントから、大して重要ではない英語の会議で聞いているように振舞う方法まで色々紹介されており、外資系企業に勤める人間にとってはかなり参考になる。
ビジネススキルというのは、通常日々の仕事を通して、会社の先輩や上司から教えられ、受け継がれていくものだと思うが、名だたる外資系企業で卓越した成果をあげた筆者と先輩後輩の関係があたかも築けているような感覚で勉強することができることが本書の良いところ。
外資系企業ならではの質問もいくつかあるが、もちろん日本企業に勤めている人に当てはまる内容が大半を占める。
頑張って営業活動をしてきた結果、やっと契約をもらえそうな状況になってきました。しかし、お客様から厳しい値引き要求があり困惑しています。要求をのむのは社内では難しいですが、お客様の要求に応えることができないと契約がなくなってしまいそうです。あなたはどうやってこの難局を打開しますか?
(a)社内を説得して、お客様の要求内容を実現する
(b)お客様に「できません」と毅然と答え、結果を待つ
(c)先方のトップマネジメントに、厳しい要求内容をそれとなく訴える
『大人の仕事ドリル』 〜上級問題 Step5 Q8 P.193〜
などのような営業担当者であれば誰もが直面する値引きの問題から、お客様との接待ゴルフを成功させるための要点から、トラブルが発生した際にピンチをチャンスに変えるコツまで、色々なビジネススキルがこれでもかこれでもかと本書では紹介されている。
ビジネスの現場はまさにドラマの連続なのです。それはマニュアルに頼った対応では処しきれないのです。そしてそういった難題をクリアできる能力を持つ人が、仕事ができると評価されるわけです。
『大人の仕事ドリル』 〜はじめに P.3〜
ビジネスをしていれば、日々様々な苦境にたたされる。苦境に立たされた時には、瞬間的に一番楽な方法だったり、無難な当たり障りのない対応をとりがちだが、難しく大変だけれども効果の高いことや機転の利いた対応をとらなければ差別化はできない。そういう対応を学ぶには自分自身で頭を働かせて考えることはもちろんだが、自分の師事する人に助言を求めるというのが磨きをかける上で何よりも重要だ。本書は、ビジネス・ケースごとのマニュアルというより、「仕事ができる」人間の知恵に触れ、自分のビジネスの芸風を広げる機会という趣が強い。「仕事で困った時に相談ができる経験豊富な人があまりいない」というような人は本書を手に取ることをおすすめする。
*1:先日、実は氏の研修を受けたのだが、経験に裏打ちされた迫力と説得力に圧巻した。