クロスオーバーSUVでありながらFRプラットフォームを採用 雪道でより感じた走りの良さ
マツダのフラッグシップとして登場したCX-80は、すべてがマツダならではのコダワリに満ちていて、世に数あるクロスオーバーSUVの中でもひときわ異彩を放っています。中でも大いに気になるのは“走り”です。直列6気筒のディーゼルエンジンを縦置きしたFRベースの4WDと聞けば、胸躍らないわけがありません。
そこで、この季節にせっかくのSUVで4WDときたら、ウインタースポーツに行かなくてどうすると考え、家族でCX-80に乗って長野県の志賀高原に行くことにしたのですが、まずは雪道での走りがとっても印象的だったことを強調しておきましょう。
ひとつはもちろん直6ディーゼルエンジンです。力強い走りで、ときおりきつい上り勾配に出くわしても、それをものともせずに駆け上がっていくのに加えて、直6ならではのサウンドがイイ! 負荷をかけたときの直6というのは本当にいい音がするものだとあらためて思いました。
さらには、ハンドリングが気持ちイイ! 雪道でわかるのかと思う人もいるでしょうが、雪道だからこそ一般的な横置きエンジンFFベース車との違いがより顕著に出るのです。
FFベースだとアクセルを踏み増したときにどうしてもフロントが横に逃げて、アンダーステア(カーブを曲がる際にクルマの向きが外側に膨らんでいく現象)が顔を出します。横滑り防止装置が作動しても傾向としては同じ。
おかげで挙動を乱さず安全に走ることができる半面、走りを楽しみたい人にとっては面白みが損なわれるのは否めません。
ところが、その点でFRベースなら、アクセル操作にあわせてまずリアが反応します。リアが横力を発生して、感覚としてはリアを軸に曲がろうとするのですが、そのほうが人間の感性に合っていて、よりクルマの挙動がつかみやすく感じられます。
大きめの舵(だ)角でアクセルを踏み増すと、オーバーステアになって危ない領域には行かないまでも、CX-80の場合は多少の横滑りを許容する味付けとなっています。そこがFRっぽくて運転が楽しいのです。アンダーステアに終始するFFベースとは違うし、もちろん重心が高くて上屋がグラつきがちなミニバンともぜんぜん違います。
また、FRベースだと雪道、特に勾配のある雪道は苦手といわれがちですが、実はそうでもなくて、むしろ圧倒的に強みがあるのがトラクション(駆動力をしっかりと路面へ伝える性能)です。クルマというのは加速時に荷重がリアに移動してフロントが軽くなり、FFベースだと空転しやすい状態となるのに対し、FRベースならより荷重がかかって、しっかり前に進んでいけるのです。
さらにCX-80に搭載されている「Mi-Drive」でオフロードモードを選ぶと、より走りが生き生きとしてガンガン攻めて走れるようになります。
とくに上り勾配では、その傾向が大きく表れて、走破性にも優れていることがわかります。アクセルを踏み増したときにワンテンポ遅れることなく即座に加速体勢に移る感覚は、平たんな道を走っているときと大差ありません。アップダウンの多いスキー場へのアクセスこそ、FRベースが有利といっても過言ではないでしょう。
ちなみに筆者(岡本幸一郎)はかつて若い頃にFD3S型のマツダ「RX-7」を3台も乗り継いだことがあり、冬場にはスタッドレスタイヤを履かせて雪道を走っていました。横滑り防止装置のない時代で、もちろん乗り方によってはテールスライドするわけですが、そこを積極的に自らコントロールして乗るのが楽しかったものです。
今回、CX-80で雪道を走って、そのときのことをちょっと思い出しました。もちろん当時よりもはるかに安定していて安心感のある中で、FRベースならではの走りを楽しむことができました。「お父さんも大満足」です。
センターウォークスルータイプの使い勝手の良さが光る 2列目シートバリエーション
いざスキー場に到着すると、思ったよりも強く降る雪に父と母は少々ひるんだのですが、子どもたちは大喜び。滑る前に雪だるままで作ってしまいました。
いざゲレンデに向かうと、願ってもないほどのパウダースノーに恵まれて、楽しく滑ることができました。
さて、スキー場へ行くクルマとなると、その用具を積み込むスペースも大切です。CX-80の室内も確認しておきましょう。
3列シートのクロスオーバーSUVはどんどん増えていますが、CX-80のように専用の車体を用意したクルマというのはあまりありません。ホイールベースを伸ばし、3列目の居住空間と荷室が十分に確保されたCX-80は、積載性にも非常に優れています。
CX-80には2列目のバリエーションがいくつかあって、今回旅を共にした「Lパッケージ」なら、キャプテンシートでセンターコンソールがない「センターウォークスルー」という仕様となるのですが、これがまた実に使い勝手がいいのです。
もともと広い荷室に加えて、3列目を倒すとドーンと広々としたスペースを創出できて、さらに2列目のキャプテンシートの間を有効に使うと、このとおりスキー板のような長尺物もラクに積むことができて重宝します。
キャリアを買って付ける必要もなく、こうして車内に大きな荷物を載せられるのは非常に助かりますし、利便性の面でも安全性の面でも絶大なメリットがあります。思えばこのようなセカンドシートがセパレートとなっているキャプテンシートの3列SUVというのはなかなかないわけですが、CX-80でこの仕様が選ばれているというのもうなずけます。
そもそも3列シートのSUVは増えていますが、ホイールベースを長くして、これほど3列目まで居住空間を十分に確保したクロスオーバーSUV自体、現行の日本車では他に心当たりがありません。
広々とした空間は、もちろん乗る人にとっても快適です。
子どもというのは、とにかく広いクルマが大好き。2列目がどうなっているかで、車内の雰囲気というのは大きく変わるものですが、キャプテンシートでセンターコンソールがないと、このとおり広々とした空間となって、子どもたちも大喜びです。2列目と3列目の移動もスムーズにこなせます。これだけ3列目が広ければ、ミニバンを愛用してきた人にとっても不満に感じることはないでしょう。
これ以外に2列目は、さまざまなニーズに応えられるよう、よりパーソナル感の高いキャプテンシートでセンターコンソールのある仕様や、3人乗車が可能なベンチシート仕様も選べるようになっています。一部で明るい内装色が選べるのも特徴です。
次のページでは雪山をあとにして、市街地、高速道路を走行した様子をお届けします。