対人賠償保険とは?補償内容や補償の範囲について
自動車保険は任意ですが、その中でも対人賠償保険は基本的な保険とされ、対物賠償保険と並んで加入しておくべき保険とされています。
今回は、対人賠償保険の補償内容や範囲、保険金額の決め方、等級との関係などについて解説します。
対人賠償保険とは
契約時に設定した保険金額を上限に実損額が支払われ、事故相手の賠償に充てることができます。
自動車保険の加入は任意ですが、自動車保険に加入するときは原則として対人賠償保険に加入しなければならないとされています。
「対人賠償保険」以外の基本補償について、こちらにまとめています
自賠責保険の賠償金を上回る部分が対象
自賠責保険の支払上限は決められており、以下のようになっています。
与えた損害 | 上限金額 |
傷害 | 被害者1名につき120万円 |
後遺障害 | 常時介護を要する場合:被害者1名につき4,000万円 |
死亡 | 被害者1名につき3,000万円 |
この場合、「200万円(損害賠償額)−120万円(自賠責保険の支払額)=80万円」となり、対人賠償保険からはこの80万円が支払われることになります。
対人事故の賠償に含まれる損害
死傷させた人の職業や年齢などによって、自賠責保険の支払上限を上回る額になることもあるでしょう。
特に、死亡事故や重傷事故では、以下のように億を超える賠償責任を負う例も珍しくありません。
認定総損害額 |
様態 |
判決年月日 |
被害者 |
5億2,853万円 |
死亡 |
2011年11月1日 |
男性 41歳 眼科開業医 |
4億5,381万円 |
後遺障害 |
2016年3月30日 |
男性 30歳 公務員 |
4億5,375万円 |
後遺障害 |
2017年7月18日 |
男性 50歳 コンサルタント |
4億5,063万円 |
後遺障害 |
2021年8月17日 |
男性 19歳 大学生 |
4億3,961万円 |
後遺障害 |
2016年12月6日 |
女性 58歳 専門学校教諭 |
対人賠償保険の保険金額は無制限にすべき?
しかし、前述のように、対人事故の損害賠償額はとてつもない高額になることもあります。そのため、多くの保険会社が対人賠償保険の保険金額を「無制限」にすることをおすすめしています。
損害保険料率算出機構「2022年度 自動車保険の概況」によると、対人賠償保険に加入している人の99%以上が、保険金額を無制限に設定しているそうです。万が一のときに相手にしっかり補償し、また、莫大な額の損害賠償責任を負うことにならないためにも、対人賠償保険の保険金額は無制限が安心でしょう。
対人賠償保険の補償対象
では、被保険者とはどのような人物が当てはまるのでしょうか。
(1)記名保険者
(2)(1)の配偶者
(3)(1)または(2)の同居の親族、別居の未婚の子
(4)(1)の業務に従事中の使用人
ただし、自分が運転する車に同乗していた友人や知人などは補償対象のため、事故を起こしてしまい、「同乗中の友人がケガをした」といったときは、対人賠償保険の補償が受けられます。
自身や家族のケガを補償するのは?
人身傷害保険も搭乗者傷害保険も、契約車の運転者と同乗者が事故で死傷した場合に、補償される保険です。人身傷害保険の場合、プランによっては被保険者が契約車以外に搭乗しているときや、歩行中の事故でも保険金が支払われることもあります。
両者の大きな違いは、人身傷害保険の保険金は、保険金額を上限に実損額が支払われるのに対し、搭乗者傷害保険は、契約で決まった一定額のみが支払われるところでしょう。
人身傷害保険や搭乗者傷害保険は補償内容が重複する部分もあり、どちらにも加入すべきとは言い切れません。
しかし、事故の損害額がどれくらいになるのかは予測できませんから、自分や家族への補償のために、それぞれの補償内容や保険金などについて調べてみてください。
人身傷害保険とは?補償内容と搭乗者傷害保険との違いを解説
搭乗者傷害保険とは?人身傷害保険との違い、必要性を解説
対人賠償保険を利用すると等級はどうなる?
保険を使用しなければ毎年1等級ずつ上がっていきますが、事故を起こして保険を使うと、事故の内容によって1〜3等級ダウンすることがあります。等級が下がった分保険料が上がるため、損害額が低い事故であれば、トータルコストを考えて保険を使わずに自腹で損害額を支払う人もいます。
対人賠償保険を使用した場合は、翌年以降の等級は3等級下がります。保険料が気になるかもしれませんが、人身事故の損害賠償額は莫大な額にのぼることも。翌年以降の保険料が高くなるとしても、対人賠償保険を使用したほうが安心です。
・事故有係数適用期間とは?同じ等級でも保険料が変わる仕組みを解説
対人賠償保険は無制限に設定して万が一に備えよう
自動車保険は保険会社で補償の内容や保険料が異なりますから、特徴をよく理解して比較検討することが重要です。
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