三菱ケミカルは「ネプコンジャパン2025」で開発品として「低誘電エポキシ樹脂」「負膨張フィラー」「電磁波吸収シート」を披露した。
三菱ケミカルは「ネプコンジャパン2025」(2025年1月22〜24日、東京ビッグサイト)内の「第26回 電子部品・材料EXPO内」に出展し、開発品として「低誘電エポキシ樹脂」「負膨張フィラー」「電磁波吸収シート」を披露した。
低誘電エポキシ樹脂は、高い接着性や信頼性、耐熱性、硬化収縮の小ささなどのエポキシ樹脂の特性を維持したまま、低い誘電正接(誘電体内での電気エネルギー損失の度合い、Df)を実現している。低分子タイプ、中分子タイプ、高分子タイプの3種類をラインアップしている。
低分子タイプは「YX7760」「YL9133」「828US」の3種類。YX7760の外観は白色固体で、エポキシ当量は238g/eq、100℃での樹脂粘度は0.18パスカル秒(Pa・s)、全塩素量は1000ppm。ガラス転移点(Tg)は173℃で、誘電率は2.6、誘電正接は0.010、吸水率は0.1wt%。YL9133の外観は無色液体で、エポキシ当量は191g/eq、100℃での樹脂粘度は0.08Pa・s、全塩素量は900ppm。Tgは163℃で、誘電率は2.7、誘電正接は0.008、吸水率は0.1wt%。828USの外観は無色液体で、エポキシ当量は185g/eq、100℃での樹脂粘度は0.05Pa・s、全塩素量は1400ppm。Tgは141℃で、誘電率は2.6、誘電正接は0.012、吸水率は0.2wt%。
中分子タイプは「YL9057」「ジシクロペンタジエン(DCPD)型エポキシ樹脂」の2種類。ジシクロペンタジエンの外観は褐色固体で、エポキシ当量は450〜500g/eq、軟化点は86℃、150℃での溶融粘度は11ポアズ(P)。Tgは148℃で、誘電率は2.6、誘電正接は0.006、吸水率は0.3wt%。DCPD型エポキシ樹脂の外観は黄色固体で、エポキシ当量は245〜260g/eq、軟化点は73〜83℃、150℃での溶融粘度は1.5〜3.0P。Tgは202℃で、誘電率は2.7、誘電正接は0.010、吸水率は0.5wt%。溶剤溶解性(R/C:70〜75%)に関して両製品ともにメチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、トルエンが溶けやすい。
高分子タイプは「YX7891T30」「YX6954BH30」「YX7553BH30」「YX7200B35」の4種類。YX7891T30のエポキシ当量は6500g/eqで、重量平均分子量(Mw)は3万、溶媒組成はトルエン、樹脂含量は30%。溶液粘度は1100mPa・sで、Tgは98℃、引っ張り伸びは9%、吸水率は0.1%。熱膨張率(CTE)は69ppmで、誘電率は2.8、誘電正接は0.010。
YX6954BH30のエポキシ当量は1万2000g/eqで、Mwは3万8000、溶媒組成はMEK/シクロヘキサノン、樹脂含量は30%。樹脂粘度は1300mPa・sで、Tgは130℃、引っ張り伸びは10%、吸水率は0.8%。CTEは82ppmで、誘電率は3.0、誘電正接は0.030。
YX7553BH30のエポキシ当量は1万1000g/eqで、Mwは3万5000、溶媒組成はMEK/シクロヘキサノン、樹脂含量は30%。樹脂粘度は1500mPa・sで、Tgは155℃、引っ張り伸びは4%、吸水率は0.7%。CTEは67ppmで、誘電率は2.6、誘電正接は0.029。YX7200B35のエポキシ当量は9000g/eqで、Mwは3万、溶媒組成はMEK、樹脂含量は35%。溶媒粘度は600mPa・sで、Tgは150℃、引っ張り伸びは17%、吸水率は0.3%。CTEは71ppmで、誘電率は2.9、誘電正接は0.028。
いずれのタイプも用途としては積層板や層間絶縁フィルムなどを想定している。三菱ケミカルの担当者は「近年、5G無線通信向けの半導体では低誘電のニーズが高まっている。5G無線通信に対応する半導体の基板材料の積層板などに誘電正接が高い従来のエポキシ樹脂を利用すると、誘電損失が大きくなり、信号のエネルギーが減衰する。当社が開発した低誘電エポキシ樹脂は従来品より誘電正接が低いため、誘電損失を抑えられる。他の樹脂では今回のエポキシ樹脂より誘電正接が低いものもあるが、コストが高いという課題がある。低誘電エポキシ樹脂では誘電正接が低く低コストな製品を目指した」と語っている。
負膨張フィラーは球状で樹脂に混錬しやすい負の線膨張を持つフィラーだ。室温で400℃までのCTEは−5〜−20ppm/kとなる。用途としては、次世代半導体向けのアンダーフィルやモールドアンダーフィル、封止材、銅張積層板(CCL)の材料を想定している。
三菱ケミカルの担当者は「昨今、高機能化を目的に半導体の高集積化が進んでおり、隙間をふさぐ封止材などでは小型化に役立つ機能が求められている。そこで、当社は加熱することで収縮する負膨張フィラーを開発した。負膨張フィラーは材料としてゼオライトを採用している。一般的なゼオライトは通常のシリカと比べると高コストだ。しかし、当社が開発し負膨張フィラーに採用したゼオライトは高機能シリカと同等の価格になる」と話す。
電磁波吸収シートは、独自の高誘電フィラーを採用することで、従来の磁性材料を用いた電磁波吸収シートと比べて約半分の重量を達成している。「市場で展開されている電磁波吸収シートの多くは、磁性材料である金属を活用することで電磁波の吸収を実現している。一方、当社のシートは電磁波を吸収するセラミックスを配合したフィラーを組み込んだシートだ。金属ではなく軽い無機材料のセラミックスを活用することで軽量化を図っている」(三菱ケミカルの担当者)。
さらに薄く柔軟性があるシートであるため、対象物へ貼り付けて使える他、マイクロ波(6GHz周辺)からミリ波(88GHz周辺)まで吸収周波数の調整が可能。
同シートの吸収原理に関して、表面反射波と誘電体層を通過した裏面反射波との干渉によって反射成分を打ち消す。また、フィラーの配合による誘電率の調整とシート厚みの制御によって、任意の周波数での電磁波吸収が行える。なお、90%以上の電磁波を吸収することで、不要な電磁波ノイズの削減にも貢献する。
用途としては、光モジュール、基地局、ミリ波レーダー、自動運関連のインフラ、衛星通信関連機器、電子料金収受システム(ETC)で利用する電磁波吸収体を想定している。現在はサンプルの提供を行っており製品化の時期は未定だ。
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