『スペースハリアー』、それは言わずと知れたSEGAの伝説級アーケードゲームである。そのレジェンドっぷりは時代を、そして世代を超えて受け継がれ、いくつものハードでその魅力を体感することができる。過去記事でも触れたようにスペースハリアーの移植は幾度にも渡って行われ、そして移植される度にそのクオリティは増していく一方であった。
たとえプラットフォーム側のスペックが不足していたとしても関係ない。各々のメーカーや開発者が様々な工夫を凝らすことでなんとかしてAC版の魅力を再現しようと尽力していたからだ。やがてスペハリはセガサターン版(或いはスーパー32X版)にてようやく完全移植が成し遂げられた。
スぺハリのゲーム部分の完全移植は達成した。ならばその次は…?そうだ、スペースハリアーは本来セガの『体感ゲームシリーズ』のうちの1作…であれば次なるステップは『体感操作』の再現だ!!というわけで今宵語るゲームはスぺハリ移植が新たなるステージへと足を踏み入れた瞬間ともいうべき一本、ズバリ『Wii版』の『スペースハリアー』であーる!!
…ちょこーっとでもスペハリの歴史に通じた者であればこう思ったことだろう。『Wiiにスペハリなんて出ていたっけ?』と。実際のところ、対外的にハッキリと『Wii版のスペースハリアー』としてリリースされた作品は存在しない。ならば今回のスペハリとは一体なんなのか?まぁ既にお察しの方も多いかもしれないが、ズバリ『バーチャルコンソール版』のスペースハリアーである!!!
『バーチャルコンソール』という概念は現行の任天堂ハードには存在せず、過去の対応プラットフォームでも既に新規購入ができなくなって久しいのでサックリ説明すると、『低価格で旧作のゲームタイトルを購入し、アカウントに紐付けられた本体でダウンロードして遊べるサービス』のことである。
現行機で人気を博すNintendo Switchの『Nintendo Switch Online』の旧作サービスなどやPS4/PS5の『クラシックカタログ』に近い雰囲気はあるが、大きく違うのはサブスクではなく買い切り型という点。1本あたりの費用こそこちらのほうが高めだが、ダウンロードさえ行ってしまえばネット接続は必要なく、またオンラインサービスが終了してもDL済みならば(本体が故障しない限り)いつでもプレイでき、半永久的に手元に残せるのが強みであった。
Wiiにおけるバーチャルコンソールの対応プラットフォームは多岐にわたり、任天堂ハードであるファミコン・スーパーファミコン・ニンテンドウ64はモチロンのこと、なんとマスターシステムにメガドライブ、PCエンジン(CD-ROMタイトルもあり)にNEOGEOやMSX、海外限定だがコモドール64まで網羅しているという脅威の守備範囲の広さを誇っていた。世代交代後のWiiUのVCではGBAやDSにこそ新たに対応していたものの、任天堂以外の殆どのハードは非対応(PCエンジンとMSXのみ対応)となってしまっていたため、まさしくWii時代のVCは一瞬の輝きであったといえよう。
更にWiiのVC開始から数年後には『バーチャルコンソール アーケード』としてアーケードタイトルの配信までスタート。『ソルバルウ』など極めて貴重な作品の移植が行われることとなった。今回の『スペースハリアー』もこの『バーチャルコンソール アーケード(VCA)』のひとつである。販売元は当然ながらSEGAだが移植を担当したメーカーは残念ながら不明。
ちなみにコレより前に通常のバーチャルコンソール枠でマスターシステム(セガ・マークIII)版の『スペースハリアー』やメガドラの『スペースハリアーII』も配信されていたが、これらの内容はSMS/MD実機のものそのまんまなので紹介は割愛する。
(ところでVCでFC版とPCE版スぺハリ、およびスぺハリ3Dが出なかったのは今でも謎)
…というわけで今回語る『スペースハリアー』は今からの新規入手がほぼ不可能な代物なのだが、ぶっちゃけると記事終盤に触れるように本作の完全上位互換ともいうべき移植が現行ハードに存在+新規購入が可能であるため多めに見てほしい。
配信日は2009年の3月26日、コレは『バーチャルコンソール アーケード』が開始した当日…言ってしまえば本作は『VCAのローンチタイトル』という見方もできるかもしれない。ちなみにVCAの同日配信タイトルは『スターフォース』『ソルバルウ』『ギャプラス』『イシターの復活』『エメラルディア』。コレに『スペースハリアー』を加えた計6本からVCAの歴史はスタートしたのだ。
購入に必要だったWiiポイントは823。この823Wiiポイントというのは本作に限らず全てのVCAタイトルに共通した価格設定。当初は800Wiiポイントというキリの良い数字だったのだが、消費税が5%→8%になったことで微妙に中途半端な数字になっている。
(VCのソフト群は消費税5%込みでキリの良い数字になるよう価格が設定されていた)
(実家から発掘したニンテンドーポイントプリペイドカード、流石にWiiポイント名義のは残っていなかった)
わからない人向けに説明すると『Wiiポイント』とは現在のニンテンドーポイントのことで1Wiiポイント=1円である。元々はWiiショッピングチャンネル専用のものだったが後に改名してDSiや3DSにWiiU、やがては現行のNintendoSwitchでも使われているのだ。
ダウンロードに必要なブロック数は24、セーブには追加で更に3ブロックが要求される。とはいえ後述するように本作のセーブ機能はほぼあってないようなものなので、セーブデータを作成せずプレイしたところでさほど問題はない。
さてさて、基本的なゲーム内容はアーケード版のスペハリと完全に同一。言わずもがなの完全移植である。よって最終ボスもACと同じく18面のVALDAでHAYA-OHは登場しない。ラスト面をクリアしてもSS版や32X版のようなスタッフロールは流れず、シンプルにTHE ENDからのネームエントリーへ移行する。便利機能の類もほぼ用意されておらずステージセレクトやサウンドテストなんて気の利いたものも当然存在しない。まぁVC自体がそういうサービスなのだから仕方ない。
操作方法は『Wiiリモコン横持ち』『Wiiリモコン+ヌンチャク』『クラシックコントローラ』『GCコントローラ』の4パターン。それぞれの各種ボタンに細かなキーコンも設定できる。『シェンムー』シリーズに収録されていたスぺハリと同じく移動操作は『スティック入力(GCコンやクラコン等)なら移動後に中央に戻り、十字ボタン(Wiiリモコン等)なら移動後にその場に留まり続ける』という仕様。Wiiリモコン以外であれば一応プレイ中にアナログ/デジタル入力を併用することはできる。当然ながらノーマル/リバース操作の切り替えにも対応。
連射機能も備わっているがデフォルトではどのボタンも単発ショット(長押しでオート連射になる)が設定されているのでキーコンから有効化する必要がある。少々珍しい仕様なのが『連射のレベルを10段階で設定可能』という点で、コレによりショット連射(オート連射ではない)の勢いを変更できる。…もっともスぺハリは一度の画面上に出せる弾数が決まっているので、ショット連射は最大の10よりも5-7くらいに抑えた方が扱いやすかったりもするのだが。またどういうわけかボス敵の出現直後など一時的にショット連射が効かなくなる場面がある。
各種コントローラの-(マイナスボタン)を押すといつでもメニューを開くことができ、その中で細かなオプション設定が可能。ただしキーコン以外のオプションは変更後にゲームリセットがかかる点には注意が必要。ついでにボタンの都合上GCコントローラ単体だとメニューが開けないのは少々困ったところ。
オプション画面から変更できるゲーム設定は『難易度(4段階)』『1クレジット分の残機(1-5)』『デモ画面のサウンド』『トライアルタイム』の4項目。当時のスぺハリ移植でトライアルタイムを再現している例はちょっと珍しいか。一方でスコアエクステンドは設定できず『5,000,000点エクステンド』で固定されている。
Wii版VCの基本機能としてHOMEメニューから中断した場合、次にプレイする時はその場面から再開可能。とはいえこの中断データは再開時に削除されてしまうためセーブ機能としての信頼性はあまり高くはない。またネームエントリー時にスコア登録は可能なものの、HOMEメニューからリセットしたり中断を介さずゲームを落とした場合ハイスコアはリセットされてしまう。
一応『ゲーム終了時は必ずHOMEメニューで中断』を毎回心がけておけば長期的にハイスコアの保持は可能なのだが、それでもオプション変更時にリセットを求められてしまうので…。それもあって本作のセーブ機能はキーコン周りの保持くらいにしか用いられない。
コンティニューはAC版同様にその場復活かつ無制限に使用可能…即ち所謂『連コ』ができる。そのためクレジットの暴力で無理やりゲームクリアするのも不可能ではない。更にプレイ中はいつでも『クレジット』のボタンでクレジット投入ができるのでデカいハリアーアイコン(=残機10人分)も簡単に拝められる。コレができるCS移植は歴代でも本作とPS2の『コレクション』、あとはDCの『鈴木裕ゲームワークスVOL.1』に収録されたもののみなので非常にレア。他の移植はその場復活のものであっても回数制限があったり、プレイ中のクレジット投入ができなかったりするものが多いのだ。
そしてここからが本作の目玉要素、メニュー画面から『操縦かんモード』をオンにすればアラ不思議、ヌンチャク*を操縦桿に見立てて操作が可能になる。このモード中は移動操作にヌンチャクの傾きが用いられる。ヌンチャクを右に傾ければハリアーは右側へ、上に傾ければ下へと移動(上下入力はオプションで逆にもできる)する…つまりアーケード筐体の如き体感操作が楽しめるのだー!忘れられがちなヌンチャク側の加速度センサ(モーションセンサ)を活用している例である!!
*ヌンチャク
説明の必要があるかは微妙なところだが、流石にレトロ寄りなので一応紹介
ヌンチャクとはWii本体にも同梱されていたコントローラの一種
Wiiリモコンと接続することで体感操作に加えスティック入力も可能になる
活用例は少ないが実はこっち側でも加速度センサでプレイヤーの動きを拾える
ぶっちゃけデフォのリモコンではスティックもなくボタン数も少ないため
ファミリー向けのパーティーゲーならともかくゲーマー寄りの作品では
ヌンチャクの接続が必須(或いはクラコンやGCコンが前提)のものが多かった
ちょうど操縦桿のトリガーの位置にZボタンorCボタンがあるおかげで人差し指でのショット攻撃も違和感なく可能。スぺハリは移動+攻撃のみのシンプルなゲームシステムゆえにWiiリモコンすら持つ必要がなく、両手でヌンチャクをガッツリ掴んでプレイできるのが魅力。椅子に腰かけヌンチャクを胸の前に突き出せば気分はもうゲームセンターのソレである。
とはいえヌンチャクはどこかに固定されているワケでもないのでプレイヤー自身が机に肘を立てるなりなんなりして基本位置をキープしないと上手く操作できないのは難点といえば難点。更にそもそもモーションセンサによる入力はだいぶ敏感なので、ゲームプレイの観点から見れば他のコントローラを用いてスティック入力で移動した方が遊びやすいのは言うまでもない。
ただし操作性の面において難があるといっても『AC版の気分を味わえる』という一点は何よりも魅力的。本作はこれまでの数多のスぺハリ移植が叶えられなかった『体感操作』を再現した当時では唯一無二の移植なのである。コレはWiiリモコン+ヌンチャクでのセンサー入力を標準搭載していたWiiというゲームハード以外では決して成し遂げられなかったことであろう。
もちろん体感操作のことを抜きにしてもシンプルにAC版の完全移植なことは変わらないし、細かな設定やキーコンにより遊びやすさも担保されている。これほどのクオリティのものがかつてたった800Wiiポイントで手に入ったというのに驚きは隠せない。
…さてさて、ここまでのゲーム語りを聞いて諸君らもこう思ったであろう…『体感操作を再現したスペハリ移植を遊んでみたい!』と!!…えっ、特に思わなかった?とりあえず思ったって前提で進めるからそういう人はムシします!!
最初に語ったように本作はWii向けのバーチャルコンソール…というわけで現在からの再入手の手段は全く存在しないのと同じである。しかも以前の記事で触れた『3D スペースハリアー』とは異なりコイツはパッケージ版も存在しない。となればもう入手手段は中古市場を漁って『本作をDL+購入済みのWii/WiiU本体』を手にするほかない…。
ならばもう体感操作ができるスぺハリは諦めねばならないのか?否!!ソレは違う!!『スペースハリアー』の移植はこのWii版以降も幾度となく行われてきた!その中には完全移植に囚われずプラスアルファで更なる再現や追加要素を導入したモノも少なくない!!
(Nintendo Switch用ソフト『SEGA AGES スペースハリアー』)
…そうだ、あるのだよ。本作『バーチャルコンソール アーケード版』のスペースハリアーに搭載された体感操作モードを搭載した移植版が!たった一つだけ!!その名は『SEGA AGES スペースハリアー』!!エムツーが手掛けるNintendo Switch向けの新生『SEGA AGES』シリーズのひとつであるこのバージョンには、かつてVCAに搭載された操縦桿モードが同じように搭載されている!
こちらで使用するのはヌンチャクではなくJoy-Conなので微妙に持ちづらかったりショット入力がやりづらかったりするのは否定できないが、あの体感操作をこうして今の時代に繋いでくれたのはありがたいことこの上ない。今からスぺハリ移植で体感操作を味わいたいという人であればこの『SEGA AGES』版一択になることであろう。
(Nintendo Switch用ソフト『SEGA AGES スペースハリアー』)
さてさて、スぺハリ移植の歴史はゲームハードの進化と共に築かれたものである。スペックが不足していた頃はハードごとの特色が現れ、完全再現を成し遂げたあとはスぺハリ自体のクオリティや再現度を更に引き上げるよう努力が続けられてきた。
そして『スぺハリの魅力を世に伝えたい』という思いは時代・世代を超えても受け継がれていく。一時はVCAの終了と共に消えかけていたVCA版の体感操作が、今再びモーションセンサを標準搭載した『SEGA AGES』版に引き継がれていることからもソレは感じられることだろう。
今となっては完全に入手手段も絶たれ、上位互換ともいえる移植が誕生しお役御免となった『バーチャルコンソール アーケード』版の『スペースハリアー』。歴史の礎となったそんな本作を語り今再びスぺハリ移植の歴史の重さを痛感したところで、今宵の記事を締めくくらせていただくとしよう。
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