「MyDataJapan 勝手表彰 2024」概要
私たち一般社団法人MyDataJapanは年に1回「MyDataJapan 勝手表彰」と題して、その年に”MyDataの原則”に則った活動をする個人・組織・取り組みを表彰することで、多くの国民の皆様に取り組みを広く周知すると共に、日本発の取り組みを世界に発信していきます。
※MyDataの原則
https://mydatajapan.org/documents/mydatadoccumets/declaration/
MyDataJapanは、公正で持続可能な社会を実現するため、パーソナルデータに関する個⼈中⼼のアプローチを推進することよって、個⼈をエンパワーする社会の実現を目指して活動しております。その活動の一つとして、フィンランドに本部を置く MyData Global および 全世界に広がる hubネットワークと連携し、MyDataの考えを日本に広げるだけでなく、日本におけるMyDataに資する取り組みを世界に発信していきます。
※MyDataJapan勝手表彰 選定方法
2024年は表彰対象の数は制限せず、MyDataJapanの理事・ステアリングコミッティメンバー・会員の皆様から推薦のあったものから、推薦人以外に一人以上賛成があり、反対意見がないものを表彰対象としました。
「MyDataJapan 勝手表彰 2024」受賞者
個人エンパワーメント賞 |
受賞対象:消費者をエンパワーするデジタル技術に関する専門調査会 |
受賞者名:内閣府消費者委員会 |
選定理由:デジタル技術が進歩する中、デジタル空間における事業者と消費者の情報の非対称性はますます拡大している。その中で、消費者をデジタル技術によってエンパワーすることによって、事業者と消費者が対等に取引できるよう消費者が“武器”を持つ事の有効性を検討した会議体が組織され、報告書が公表された。
報告書の中では、消費者をエンパワーするデジタル技術にどのようなものがあるかを可能な範囲で洗い出し、こうしたデジタル技術の開発を更に促進し、利活用を進め、消費者被害の未然防止・拡大防止等に寄与させていく上での課題が整理された。また、これまであまり議論されてこなかった消費者保護のためのデータポータビリティの重要性を提起しており、自己のデータへのアクセスを重要な要素として強調した。 これらの取り組みは、個人のデータ権利行使の現実的な可能性を高めるものであり、今後の政策立案において同報告書が参照されることで、データポータビリティの推進や消費者の自己決定権の拡大等に寄与することを期待する。 ■参考 消費者をエンパワーするデジタル技術に関する専門調査会 報告書 消費者をエンパワーするデジタル技術に関する専門調査会 : 消費者委員会 - 内閣府消費者委員会は、消費者庁を含めた関係省庁の消費者行政全般に対して監視機能を有する、独立した第三者機関として、消費者庁及び消費者委員会設置法に基づき置かれる機関… |
アウトリーチ賞 |
受賞対象:『データセキュリティ法の迷走』(ソロブ&ウッドロー著)の翻訳 |
受賞者名:小向太郎氏,加藤尚徳氏,木村匠氏,藤井秀之氏,村上陽亮氏 |
選定理由:消費者が事業者からの便益を享受するために個人情報は事業者に渡らざるを得ないが、過去に発生している大量の個人データが漏洩し不利益を被るケースは事業者のデータ管理のずさんさによることが多く、データ漏洩などのリスクを防ぐ方法に万全を期すことは、個人情報取り扱いの要諦である。
書籍『データセキュリティ法の迷走』は、事業者における個人データ漏洩のリスクを具体的な実例とともに解説し、事業者のデータ管理上の問題点や重視すべきポイント、対策の方向性を示している。本書を和訳した翻訳者の方々によって、内容の正確さと読みやすさを両立させた翻訳が実現されており、さらに、小向太郎氏による書き下ろし解説も、本書の価値をさらに高めている。 |
OSS(オープンソースソフトウェア)賞 |
受賞対象:OWND Projectの正式オープンソース化 |
受賞者名:OWND Project |
選定理由:OWND Project は個人が主体となるデジタルアイデンティティの社会実装を目指し、よりトラストできるコミュニケーションを実現するための非営利プロジェクトである。
同プロジェクトは、2024年4月にホワイトペーパーの公開とともに正式にオープンソースプロジェクトとして始動し、2024年には複数のイベントではVerifiable Credentialsを活用したイベント参加証を発行する実証実験を行い、その技術的可能性を示し、現在はOWND Projectを基盤として偽情報や誤情報対策技術の開発と実証実験を行っている。 今後、さまざまなステークホルダーと連携することで、信頼性の高い情報流通環境の構築が進むことを期待する。 ■参考 OWND-Project/whitepaper GitHub - OWND-Project/whitepaperContribute to OWND-Project/whitepaper development by creating an account on GitHub. |
PETs賞 |
受賞対象:BBS署名とゼロ知識証明技術に関する取り組み |
受賞者名:早稲田大学佐古研究室&インターネットイニシアティブ(IIJ) |
選定理由:従来、個人が自身の資格を示してサービスを受ける際には、資格証全体を提示する必要があった。これは資格証の真正性を証明するためであるが、不要な個人情報の漏洩につながる課題があった。このBBS署名とゼロ知識証明技術を組み合わせた新たなアプローチでは、資格証に記載された必要最小限の情報だけを提示し、サービス提供者にその内容の正当性を証明することを可能にすることで、資格証に記載されている不要な個人情報を提供を防止できるとともに、個人がどの情報を提示するかの意思決定に関与できるようになる。
欧州で推進されているデジタルアイデンティティウォレットにはこの技術が採用されていなく、その結果、資格証を提示する際に資格証を特定する情報もサービス提供者に提示することとなり、これにより保有者を追跡できてしまう懸念がある。本技術はその点を克服している。 さらに、この技術をJSON-LD仕様のVerifiable Credentials (VC) に実装するための標準化活動にも積極的に取り組まれており、JSON-LDのハッシュ計算に必要なCanonicalization技術の標準化においてW3CのEditorを務め、「RDF Dataset Canonicalization」が正式にW3Cより発行された。Canonicalizationのリファレンス実装や、BBS署名とゼロ知識証明技術を使ったVCの実装も https://github.com/zkp-ld/ で公開され、より安全で信頼性の高いデジタル認証技術の普及に貢献している。 これらの取り組みは、「個人中心のデータ制御」の実現に大きく寄与するものであり、デジタル社会における個人の権利保護とエンパワーメントに資するものである。 ■参考 RDF Dataset Canonicalization│W3C |
国際データ連携賞 |
受賞対象:日豪クロスボーダーでの分散型IDの接続実証 |
受賞者名:日豪クロスボーダー相互運用性ワーキンググループ |
選定理由:訪日オーストラリア人が自身の銀行やConnectIDのエコシステムが証明するデータを活用し、来日時の宿泊施設や各種登録手続きを簡略化するサービスを検討し、実証実験を行った。この取り組みは、ユーザー体験の向上を目指し、日本を訪れる旅行者にとって利便性の高い環境を構築するものです。また、同様の仕組みを日本人のオーストラリア訪問にも適用することを視野に入れられている。オーストラリアと日本という異なる国の間でのデータ連携を可能にする本取り組みは、国際的なデータガバナンスや相互運用性の重要性を実証しており、グローバルな視点でのデータ利活用の可能性を広げている。
この取り組みでは、Verifiable Credentialsを用いたデータ連携を採用しており、個人が自身のデータを安全かつ効率的に活用できる環境を提供することで、データ活用の新たなモデルケースを示しており、今後のサービス・商品開発に向けた推進を期待する。 |
HCS(Human Centric Service:個人中心サービス)賞 |
受賞対象:非ダークパターン認定(NDD認定)制度の導入に向けた取り組み |
受賞者名:一般社団法人ダークパターン対策協会 |
選定理由:生活者が利用規約やプライバシーポリシーを十分に理解しないまま同意ボタンをクリックする「同意の形骸化」問題や、生活者を欺くダークパターンが横行している現状に対し、「Webの同意を考えようプロジェクト」が立ち上がり、2024年10月には官民連携組織として一般社団法人が設立された。
本法人では、生活者が自身のデータに関する意思決定を主体的に行える環境を整備することを目指しており、非ダークパターン認定(NDD認定)制度の導入に向けた取り組みを進めている。生活者を尊重したデザインと運用を推進するためのガイドラインを策定し、企業の透明性向上と倫理的なデータ利用を促進を目指しており、制度運用の開始は来年以降を予定しているが、すでに多くの民間企業が参画を表明しており、生活者への広範な情報発信が期待される。 この取り組みは、データ利用の透明性と倫理性を高めることで生活者の信頼を取り戻し、個人がデータ利用において真に選択権を行使できる社会の実現に寄与するものであり、今後の活動に期待する。 |
HC(Human-Centric)政策賞 |
受賞対象:個人情報保護法のいわゆる3年ごと見直し |
受賞者名:個人情報保護委員会 |
選定理由:2024年の個人情報保護法の3年見直しにおいて、検討会では様々な困難に直面しながらも概ね予定通り実施され、多数の事業者、有識者、その他の関係者から意見を聴取された。中間整理に掲げられた課徴金制度や集団訴訟制度に関する改正提案についても、大きく後退することなく議論が進められており、特に、課徴金制度に反対する政治的圧力を受ける中でも、改正提案を前進させたことは高く評価されるべきである。
中間整理に掲げられた提案は、十分でない点も残されているものの、現行法をデータガバナンスにおけるグローバルスタンダードに近づけようとする重要な試みであり、個人が自身のパーソナルデータを不当な扱いを受けることなく、自主的かつ主体的に管理できる環境を構築する重要な一歩となることを期待する。 |