巨大なニシキヘビが、丸のみしたウシ科の動物アンテロープを吐き出すという衝撃的な動画を紹介しよう(ただし、胃腸の弱い方にはおすすめしない)。
英国のニュース配信社ケイターズ・ニュースによると、この動画は8月22日、インド北部のゴーラクプルで撮影された。動画には、大勢の見物人の姿や音声が入っており、棒でアンテロープを突いている人もいる。
見物人たちがヘビにストレスを与えたようだと、爬虫両生類学者で米フロリダ自然史博物館のコレクションマネジャー、ケネス・クリスコ氏は言う。「アンテロープが無駄になるのが残念です。もうあのまま腐って、ハエの餌になってしまうだけですから」(参考記事:「【動画】猛毒ヘビのもつれあう奇妙な格闘を撮影」)
たとえ見物人がいなくなったとしても、このヘビが戻って来てまたこの獲物をのみ込む「見込みはない」と、クリスコ氏は語る。「体の一部が消化されているので、すでに悪臭を放っていると思われるからです」。このニシキヘビは、別の獲物を捕まえなくてはならない、とクリスコ氏は指摘する。(参考記事:「7.5mの巨大ヘビ見つかるも、数日後に謎の死」)
代謝の低い変温動物のヘビは、通常、まれにしか食事をしない。たいていは年に2~3回ほどだ(とくに大きな獲物の場合、消化するのに相当な時間がかかる)。
このヘビは、なぜアンテロープを吐き出したのだろう? 防衛反応の可能性が高い、とクリスコ氏は言う。大勢の人間に見られていることにストレスを感じ、身を軽くして逃げやすくするため、大きな獲物を吐き出しのだ。同様の行動は、他のヘビにも、さらには鳥など他の動物にも見られる。
「ヘビを飼っている人ならご存知でしょうが、食後はヘビをかまってはいけません。でないと、吐き出すかもしれませんから」と、クリスコ氏は付け加える。
このヘビはニシキヘビの1種で、おそらくビルマニシキヘビだろう、とクリスコ氏。この個体は全長3.6メートル前後と見られるが、なかには7メートルになるものもいる。ビルマニシキヘビは、大きなものでは体重90キロ、胴囲が電信柱ほどになる。(参考記事:「ヘビ対ワニ、どのようにのみ込むのか」)
消化されかけているので、アンテロープの種類を特定するのは難しいが、インドに生息する数種のうちの1種と見られる。ニシキヘビはこうした獲物を待ち伏せし、組み伏せ、締めつける、とクリスコ氏は言う。獲物の体に巻き付くと、窒息するまで締め上げる。靱帯が伸び縮みするおかげで口を大きく開け、獲物を丸のみできる。彼らは水たまりや巣穴のそばの丈の高い草むらで狩りをすることが多い。
こうしたヘビは、生態系で重要な役割を果たしており、人間に害を及ぼすことは滅多にないにもかかわらず、恐れられて退治されることがよくある。大型のヘビは、生息域の大半で個体数が減っている。(参考記事:「銀色の新種ヘビ発見、絶滅の恐れも、バハマ無人島」)
ビルマニシキヘビはペットとして人気があり、インドや東南アジアの密林や草深い湿地に生息している。主に小型の哺乳類や鳥を捕食するが、ときにはアンテロープのような大きな獲物も捕る。視力は弱く、舌にある感覚器官と口の周りにある熱感知器官を使って獲物に忍び寄る。
ニシキヘビが狩りをする様子を至近距離で撮影。アンテロープを締め上げ、頭から丸のみする。その口は3倍の大きさにまで開く。(音声は英語です)