カモノハシは紫外線で青緑に光る、目的は不明

意外と多い「生物蛍光」に新たな仲間、意味はあるのか?

2020.11.14
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カモノハシに紫外線を照射すると、毛皮が青緑に光るという生物蛍光の特徴が発見された。写真は論文に掲載されている合成画像の一部。生物蛍光の「本物」の色を再現するため、黄色のフィルターが使用されている。(PHOTOGRAPH COURTESY OF JONATHAN MARTIN/NORTHLAND COLLEGE; FROM ANICH ET AL. 2020)
カモノハシに紫外線を照射すると、毛皮が青緑に光るという生物蛍光の特徴が発見された。写真は論文に掲載されている合成画像の一部。生物蛍光の「本物」の色を再現するため、黄色のフィルターが使用されている。(PHOTOGRAPH COURTESY OF JONATHAN MARTIN/NORTHLAND COLLEGE; FROM ANICH ET AL. 2020)
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「地球上で最も奇妙な動物」。そう呼べるいくつかの特徴が、カモノハシにはある。

 哺乳類でありながら卵を産み、後ろ足の爪から毒を分泌する。ビーバーのような尾と、カモのようなくちばしを持ち、夜に目を閉じて泳ぎながら、くちばしで獲物を感知する。(参考記事:「カモノハシが太古から変わらない理由」

 この奇妙な特徴リストに、このほど新たな項目が加わった。発光する毛皮だ。

 10月15日付けで学術誌「Mammalia」に発表された論文によれば、肉眼で見えない波長である紫外線をカモノハシに照射すると、毛皮が青緑の光を放つという。

 研究を率いた米ノースランド大学の哺乳類学者であるポーラ・アニッチ氏は「カモノハシの生物蛍光を見て少しあっけにとられました」と振り返る。もともと「ユニークな動物」だからなおさらだ。

 今回の発見は生物蛍光に関する科学界の知識を広げるものだ。生物蛍光は考えられていた以上に多くの動物で見られることがわかってきている。

 ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーで、海洋生物の発光を研究するデイビッド・グルーバー氏は「多くの動物で生物蛍光が観察されていますが、これはその新たな実例です。動物にとって意味があるのか、あるとすればどんな意味かを考察するきっかけにもなります」と話す。グルーバー氏は今回の研究に参加していない。

紫外線を照射したカモノハシの標本。研究チームのジョナサン・マーティン氏は、紫外線は「すべてのものを紫の光で飽和させるため、肉眼でどう見えるかをカメラで再現するのは一苦労です。黄色のフィルターは紫を減らし、生物蛍光の“本物”の色に近づけてくれます」と説明する。(COMPOSITE COURTESY OF JONATHAN MARTIN/NORTHLAND COLLEGE; FROM ANICH ET AL. 2020)
紫外線を照射したカモノハシの標本。研究チームのジョナサン・マーティン氏は、紫外線は「すべてのものを紫の光で飽和させるため、肉眼でどう見えるかをカメラで再現するのは一苦労です。黄色のフィルターは紫を減らし、生物蛍光の“本物”の色に近づけてくれます」と説明する。(COMPOSITE COURTESY OF JONATHAN MARTIN/NORTHLAND COLLEGE; FROM ANICH ET AL. 2020)
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モモンガからカモノハシまで

 生物蛍光とは、毛皮などに含まれる物質がある波長の光を吸収し、別の波長の光を放出する現象。放たれる光の色は、緑や赤、オレンジ、青などだ。

 この数年間だけで、ウミガメの甲羅、菌類、モモンガの生物蛍光が確認されている。生物蛍光の理由としては、擬態や同種内のコミュニケーションといった仮説が示されているが、はっきりとはわかっていない。

 アニッチ氏のチームは2019年、モモンガに紫外線を照射すると、腹部の毛皮がピンクの光を放つことを発見した。(参考記事:「モモンガは紫外線でピンクに光る、目的は不明」

次ページ:何のために光るのか?

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