赤肉(ウシ・ブタ・ヒツジなどの肉で、脂肪分が少ない部位を示す「赤身肉」とは異なる)を食べる量を減らすよう、普段から注意している人もいるだろう。
だが、新たな研究では、それでは不十分かもしれないことが示唆されている。週に2食分の赤肉を食べるだけで、2型糖尿病のリスクが高まる可能性があるというのだ。一方で、平均的な米国人やオーストラリア人、アルゼンチン人、モンゴル人、セルビア人の肉の消費量は、年間およそ100キロ以上にのぼる(編注:経済協力開発機構(OECD)のデータによれば、日本人はおよそ42キロ)。
赤肉を大量に食べるのは有害であることはすでによく知られているが、2023年10月19日付けで学術誌「American Journal of Clinical Nutrition」に掲載された新たな研究は、加工または未加工の赤肉の消費と、2型糖尿病の発症リスクとの間には、これまで認識されていたよりもさらに密接な関連があることを示している。
「週に2食分摂取するだけで、発症リスクはわずかながらも統計的に有意に上昇することを発見しました。そしてそのリスクは、摂取量の増加に伴ってさらに上昇を続けます」と、論文の筆頭著者であり、米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院栄養学部門の博士研究員であるシャオ・グ氏は言う。
この研究では同時に、赤肉をヘルシーな植物性タンパク源に置き換えることによって、2型糖尿病になる可能性を減らせることも示された。
赤肉とは、「一般に生の状態で色が赤く、4本脚の動物からとれるもののことです」と、米クリーブランド・クリニック人間栄養センターで管理栄養士を務めるキアソン・ペトルッツィ氏は言う。加工肉とは、保存期間を延ばしたり、味を良くしたりするために、塩漬け、発酵、薫製などの処理が施された肉を指す。つまり今回の研究結果は、ニワトリ、シチメンチョウ、魚のような、色の白い肉には当てはまらない。
「米国心臓協会、米国がん協会などの研究は一貫して、赤肉の摂取が健康に悪影響を及ぼすことを示しています」と、米国心臓協会の栄養委員会委員長で米スタンフォード大学医学部教授のクリストファー・ガードナー氏は言う。
赤肉のデメリットは、2型糖尿病のリスクを増やすことだけではない。過剰な赤肉の摂取が、心臓病、肝臓病、肥満、がんのリスクを高めることは、研究によって示されている。(参考記事:「低炭水化物・高脂質のケトジェニックダイエット、心臓に「最低」」)
実際、世界保健機関(WHO)傘下の国際がん研究機関(IARC)は、加工肉を紫外線暴露や喫煙などと同じ「ヒトに対して発がん性がある」グループ1に、未加工の赤肉は「ヒトに対しておそらく発がん性がある」グループ2Aに分類している。
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