ザトウクジラ(Megaptera novaeangliae)のように巨大でカリスマ性のある生物のことなど、とっくに調べ尽くされていると思われるかもしれない。しかし今回、驚くべき新たな発見がもたらされた。ザトウクジラの交尾が初めて観察されたのだ。それだけではない。海洋哺乳類科学の専門誌「Marine Mammal Science」に2月27日付けで発表された研究によると、交尾をしていた2頭はどちらもオスだったという。(参考記事:「【動画】ザトウクジラの出産の一部始終、科学者が初の観察に成功」)
この発見ができたのは、市民科学者の写真家ライル・クラニッチフェルド氏とブランディ・ロマノ氏が、米ハワイ、マウイ島沖の適切な海域で、ちょうど良いタイミングでボートに乗っていたおかげだった。
「彼らは私に写真に送ってきて、どう思うかと尋ねてきました。写真を見て、私はただただ驚きました」と、マウイ島を拠点とする「太平洋クジラ基金」の研究者で、今回の研究チームを率いたステファニー・スタック氏は言う。
「ザトウクジラの交尾については、世界中どこを探しても目撃例も記録もありませんでした。ですからこれは、非常に特別で驚くべき遭遇だったのです」
クジラを追いかけて
「ザトウクジラは水中で生活しているため、その行動の多くはいまだに謎に包まれています」とスタック氏は言う。(参考記事:「コンブを頭に載せるザトウクジラたち、遊び? スキンケア?」)
けれどもここ数十年でドローンや新しい技術が登場し、研究者たちはかつてないほどよくザトウクジラを追跡し、研究できるようになった。熱心な観光客やカメラを持った市民科学者の協力により、ザトウクジラに向けられる目が増えたという変化もある。
同じ個体を数十年にわたって追跡する縦断研究も、かけがえのない財産だ。
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