動物の大量死が年々増えているという研究成果を、米エール大学の研究者らが「米国科学アカデミー紀要」(Proceedings of the National Academy of Sciences)に発表した。大量死の長期的な傾向が調査されたのは、これが初めて。
近所の砂浜に死んだ魚が2、3匹打ち上げられるという話とはけたが違う。大量死とは一度に10億を超す動物が死亡するか、1個体群の90%以上が死ぬか、または死亡した動物が合計7億トンを超す場合を指す。
著者らは、1940年から2012年までに発生した動物大量死の記録727件を検討。その結果、大量死の発生が増加傾向にあること、対象となった期間中に鳥類、海洋無脊椎動物、魚類で大量死1件当たりの死亡数が増える傾向にあることを明らかにした。一方で、1件の大量死の規模は哺乳類では横ばい、両生類と爬虫類では減少の傾向を示している。
こうした大量死の主な原因として挙げられているのは3つ。病気、人間が引き起こす環境の変化、そして赤潮などの生体毒素だ。
大量死を見過ごせない理由
大規模な大量死が起こると、食物連鎖のネットワークが変化して元に戻らなくなる可能性がある。1983年には、ウニの一種であるタイセイヨウガンガゼ(学名:Diadema antillarum)がカリブ海で大量死した。藻類などを食べていたタイセイヨウガンガゼの99%が病原体により姿を消したことで、岩礁は藻類に覆われ、サンゴの窒息を招いてしまった。
論文の著者らは、「こうした出来事により、地球上の生命がたどる生態や進化の道筋が変容してしまうかもしれない」と危惧する。
大量死の全体像をつかむ
大量死を招くような病気や赤潮の発生頻度が増えている理由ははっきりしない。可能性として、気候変動や環境の悪化が挙げられている。
加えて、動物の種類によって大量死1件当たりの規模が異なる理由もまだ分かっていない。著者らがいくつかの大量死事例を見落としていて、哺乳類、両生類、爬虫類では横ばいあるいは減少との印象を抱いたのかもしれない。あるいは、これらの動物は鳥や海の生き物に比べて影響を受けにくい可能性もある。
こうした大量死の事例を科学者たちが連携して注視していないことが問題だと、著者らは記している。実際、「今のところ、大量死のほとんどは新聞で取り上げられるだけだ」という。大量死をより綿密に監視することで、地球上の生物が直面している困難をもっとよく知る必要があるだろう。