マダガスカルには信じられないほど多くの種のカエルが生息していて、そのうちの99%が世界中でこの島にしか生息していない。だが、2015年2月26日に発表された研究によると、この生物多様性に近年最大の脅威が迫っているという。両生類に致死的な感染症を引き起こすツボカビだ。
ドイツのブラウンシュバイク工科大学の研究者モリー・ブレッツ氏の説明によると、両生類の全種の7%がマダガスカルにしか生息していない固有種だ。ツボカビは、世界で数百種の両生類を激減または絶滅させている。2010年には、パナマのある森でツボカビが発生したことで、30種もの両生類がまたたく間に絶滅したという研究結果が発表された。
いつからいるのか
研究者はこれまで、マダガスカルにはツボカビはいないと考えていた。2014年の研究で、マダガスカルから米国に輸出されたペット用のカエルにツボカビが見つかったが、そのカエルが輸送の途中で汚染されたのか、マダガスカルで感染していたのかはわからなかった。
しかし、『Scientific Reports』誌に発表された今回の研究では、マダガスカルの複数の種がツボカビを持っていることがわかった。ブレッツ氏らは、2005年から2014年にかけて、4155匹の両生類の皮膚スワブ(綿棒で体表をぬぐって採取したサンプル)と組織サンプルについてツボカビの有無を調べた複数の研究データを吟味した。その結果、ツボカビは2010年から現われていたことが明らかになった。
ただ、ツボカビ症を発症したカエルはまだ見つかっていない。「ごく初期の段階で発見できたのかもしれません」とブレッツ氏は言う。もしかすると、マダガスカルのツボカビは致死性があまり高くないのかもしれない。
どのように入ってきたのか
オーストラリアのジェームズクック大学の研究者ジョナサン・コルビー氏は、マダガスカルでツボカビが確認されたことを残念に思いながらも、今のところカエルが死んでいないことを不幸中の幸いと捉えている。
コルビー氏は今回の研究には参加していないが、科学者はツボカビがどこから来たのか明らかにする必要があると言う。島の外からもたらされたのであれば、どのようにして入ってきたかを解明して、次の侵入を防ぐ手立てを考えなければならない。「次に入ってくる菌株は非常に強い致死性を持っているかもしれないからです」
多面的な対策
もちろん、専門家はさまざまなアプローチによりこの脅威に対処しようと努力している。ブレッツ氏は、カエルの皮膚にいる細菌がツボカビを撃退する能力を持つかもしれないと考え、こうした細菌を使った予防的治療を検討している。パナマなど、世界の他の国々では、万が一の事態に備えて、特に弱い両生類の飼育施設を設置した。また、マダガスカルとパナマでは、両生類の長期的なモニタリングを行っている。