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71 男たちの交流話


 とりあえず要らないものを売ろう。

 今売れそうなものは、強襲イベントの時のリンルフの皮とウリ坊の時のノジシの皮。あと鋳溶かしてトンファーに使おうと思ってた鉄の短剣か。リングベアの毛皮は防具用に残しておこう。


 買い取りのカウンターまで行って、ギルドカードを提示する。皮と短剣を並べて売り払う旨を述べると、レンブンが気付いたようだ。


「おや、それ売ってしまうんですか?」

「ああ、新しいのがドロップしたんでな。教えてくれた鍛冶屋の情報が無駄になってしまってすまない」

「いえいえ、別の機会に役立てて頂ければ(くだん)の人物も喜ぶでしょう」


 リンルフの毛皮だけでも山積みするくらいあるが、それほど高くはないみたいだ。短剣がそこそこ高めで売れたので、かろうじて全部で2万G以上になったけどな。ついでにお金を預けておく。なんだかんだで40万近くあったので、2万残して貯金しよう。


 ハイローたちからドロップ品を見たいと言われたので、性能の数値を可視化して見せてみた。


「うわあ」

「これはまた」

「なんだこのぶっ飛び性能」


 今作り出せる中で1番の威力を持つ大剣並みの性能らしい。

 名前が名前なんで出所は言うまでもない。レンブンはSSを撮って掲示板に流すそうだ。


「お前レア物所持しすぎだろ!」

「そういうスキルと称号があるんだからしょーがない」

「待て、称号? ドロップが増える称号があるのか?」

「あるな。何とは言えないが神様の絡む称号だ」

「神様って、神官系だけじゃないのかよ」


 アサギリは情報過多にうんざりしたような表情だ。


「ナナシの話だけ聞いてると時々ぶっとんだ情報がザラザラ出てくるぜ」

「お前はゲーム内でも周りを引っ掻き回さんと気がすまねえのか!」


 引っ掻きまわした気はしないんだがなあ。普通に遊んでいるだけだと言うに、誰も信じてくれないのが悲しいところだな。


「そうそう。ナナシさん、先頃運営から通達のあった公式発表の方は知りませんよね」

「ナナシが公式HPなんか見る筈なんか無いに決まってるじゃないか」


 当たってるだけに酷い言われようだ。街中で殴ろうとするとPVPが発生するからなあ。ハイローはリアルで会ったら覚えてろよ。

 少々イラッとした俺の気分を察したのか、アレキサンダーがハイローに突撃していた。ああいうじゃれ合いなら問題ないようだ。された方のハイローは「痛えっ!」と尻を押さえている。


「来週から第2陣が参入する予定だそうです。それに伴い明日から宝箱フェアを開催するそうですよ」

「ちなみに宝箱フェアというのは、街やフィールドのそこかしこに宝箱が隠されているって話だ」

「隠されているって、もろ俺の称号で見付けやすい奴じゃねえか」


 レンブンとアサギリの解説で開催されるフェアがなんなのかが解ったが、【ネッツアーの加護】にどんぴしゃ嵌まる効果じゃん。宝箱は探さなくてもいいかと思うな。


「入ってるアイテムもピンキリだとよ。良い物が入ってる宝箱に繋がるヒントだったり、レアアイテムを落とす敵の情報だったり。薬草の葉1枚だったりするってよ」


 ショボいのもあるってことだな。葉っぱだけ探すのも有りか。


「とりあえずこの後はやることがある。アレキサンダーはすまないが留守番だ。2匹(ふたり)を頼むな」

「チー!」

「ぴゅい!」


 シラヒメが前肢を上げて、グリースが尻尾の蛇を持ち上げて返事をする。最後にアレキサンダーがこくりと頷いた。ペットだけでは宿屋に泊まれないので、連れていくけれどな。手前で待ってて貰うことになるだろう。


「おいおい教祖サマよ、今度は何処に行く気だよ。赤玉ちゃんたちをおいてけぼりとはぶっそうだな。付いてっていいか?」

「別に構わんが」

「じゃあ俺も俺も! 俺も付いてくぜ」

「では私も。興味がありますね」


 アサギリたちが来てくれるならアレキサンダーを見ててもらえるかもしれないな。2つ返事で了承し、4人+3匹でぞろぞろと連れ立って東門を出た。

 いや、出ようとしたところで兵士の人にグリースの従魔登録を指摘されたので取って返した。冒険者ギルドで従魔証を発行してもらい、再び東門へ向かう。

 外へ出たら外壁沿いに南下して、着いた所は断崖絶壁が東西に広がる海である。


「おいちょっと待て……」


 崖っぷちに立って装備をウェットスーツに変更すると、他の3人が顔色を変えて唖然としていた。

 この状態で着けられる装備はウェットスーツの他はオンドゥリの腕輪くらい。防御力は5+1の20%(繰り上げ)で8点のみ。

 リングベアの籠手は使えるが、水中だと回避と命中が落ちるようだ。最悪は素手に【闘気】全開でぶっ放せばいいや。でてくるとしたらサメだろうけど、たぶん。


「おいーっ! こっから飛び降りる気か!?」

「そうだけど」

「どうみても5~60mはあるでしょう。大丈夫なのですか?」


 真下は岩が波間から多数突き出た岩礁が広がっている。見た感じ何ヵ所か飛び込んでも大丈夫な深さはある。


「あー、2人とも。ナナシのこういう馬鹿な行動にオロオロしてたら、こいつと付き合えねえぜ」

「この辺りを見回るだけなんで早めに戻るようにする。すまないがアレキサンダーたちをみていてくれ」


 崖下を見ないようにしながらアサギリとレンブンが請け負ってくれる。2人とも高いところがダメなのか?

 ハイローは俺をフォローするのかディスるのかはっきりしろよ。視線が合ったアレキサンダーが再びこくりと頷いた。今度はグリースの蛇がハイローの尻を襲う。「痛えっ!」という悲鳴を聞かなかったことにして海へ向かって飛び込んだ。


 なんかハイロー以外の悲鳴が何処からか聞こえたような気もするなあ。


 やっとSEさんの胃痛ダメージの元へたどり着いた。

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前話で生産室を調合目的で借りるために申請したのに使わずに泳ぎに行ってる?
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