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21.アメリア、仲間になる



 大鬼オーガ王を解体した後、私とアメリアさんは、馬車に乗って、近くの街までやってきた。


 馬車は、村側がくれたものだ。これを使ってくれといっていた。

 アメリアさんが馬車を運転して、この街へとやってきた次第。


「ついたぞ、コネコちゃん。ここはノォーエツという街でな。ゲータ・ニィガの辺境にある街だ」

「へ、へえ……しょうなんでしゅか……」


 ……アメリアさん、何も言ってこなかったな。

 大鬼オーガ王解体の時に、ましろがうっかり力を使った。その際に、正体(ましろ=バステト神、私=聖女)ってバレたかと思った。


 でも、アメリアさんは何も言ってこなかった。どうしてなんだろう。


「さ、コネコちゃん。とりあえずは、冒険者ギルドと、宿を取ろう。そこで……お別れだ」


 アメリアさんが、笑顔でそういう。

 ……お別れ。そうか。アメリアさんは王国騎士だ。


 いつまでも、私の側に居てはくれない。

 宿と、ギルドに連れて行ってくれたら、それで……お別れ。


 ……なんだか、嫌だな。

 でもアメリアさんにも、騎士としての仕事があるわけだし。


「止まれ! そこの馬車!」


 ノォーエツの入り口にて。

 誰かが、私たちに声をかけてきた。


 アメリアさんが馬車を止めて、御者台から降りる。

 私も降りると……。


 街の入り口には、背の低い、騎士風の男が立っていた。


「【ワルインディス】副団長……?」

『ワルインディス? なーんか悪い奴っぽい名前ですねっ』


 ワルインディスはこちらに近づいてくる。

 アメリアの目の前にたつ。


「王都演習で会った以来だなぁ、アメリアさまぁ」

「……そうだな。それで、ワルインディス副団長。ノォーエツ駐屯騎士である、あなたが、一体わたしに何のようだ?」


 ……何のようだ、と聞いてる割に、アメリアさんの表情は暗い。

 まるで、この後の展開を、予期してるかのようだった。


「アメリア。本日をもって、ゲータ・ニィガ王国騎士団から、解雇する」

「は……? か、かいこ……」

『くびってことですかぁあああああああああ!?』


 私、そして愛美さんが驚く一方、アメリアさんは目を閉じてうつむいていた。


「しょんな……! どうしてでしゅか!?」


 私が食ってかかると、ワルインディスが鼻を鳴らす。


「こやつが、任務を放り出して、遊びほうけてるからだ」

「任務……?」


「アメリア騎士団長は、部下と供に、バカデカント王太子殿下を聖女の祭壇までお連れする任務が与えられたのだよ」


 バカデカント……私を異世界に召喚した王太子だ。

 ずっと疑問だったのだ。

 

 王国騎士であるアメリアさんが、どうして、奈落の森(アビス・ウッド)にいるんだって。


 バカデカントを、祭壇に連れてく任務の途中だったんだ。

 でも……。


「貴様はバカデカント王太子、および宮廷魔導士長殿のお二人の護衛任務を、途中で放棄した」


 ワルインディスの話をまとめると……。


 アメリアさんは、部下と供に、あのバカ王子と魔法使いの老人を連れて、祭壇に向かう途中だった。


 けど、道中、一行は魔物の群れに襲われる。

 バカデカントは、部下たちをおとりに、その場から離脱を宣言。


 アメリアさんはバカデカントたちを祭壇まで連れて行くと、来た道を引き返し、部下を助けに向かった……とのこと。


「王太子たちを、王城まで送り届けるのが貴様の任務だった。だが、おまえは任務を放棄した」


 放棄って……。

 だって、あとは転移結晶で帰るだけではないか。


 別にアメリアさんが護衛して無くても、自分たちは安全に、王都へ帰れたではないか。


「アメリアは王族の命よりも、平民の命を優先した。それは王族に対する不敬罪にあたる! よって、騎士団追放となったのだ!」


 ……そんな。

 アメリアさんは、何も悪いことしてない。

 ちゃんとバカ王子たちを祭壇まで届けた。

 自分の任務をこなし、そのうえで、部下を助けにいったのだ。


 人として、騎士として、とても賞賛されていいような道徳的行いをした。

 ……そんな彼女をクビ?


「ふじゃけないでくだしゃい!」


 ワルインディスに、食ってかかってしまうのは、多分……アメリアさんと前世の自分とを重ねてしまってるからだ。


 仕事を頑張っても、評価されない。それどころか、理不尽に叱られる。

 そんなことが、私にもあったから。だから……似たようなことをされてる、アメリアさんのことを……他人と思えず、声を荒らげてしまったのである。


「コネコちゃん。いいのだ」

「アメリアしゃん……」


 アメリアさんが、どこか、諦めたような表情をしていた。


「わたしは、任務を最後まで全うできなかった。騎士として失格だ」

「しょんな……」


 ふんっ、とワルインディスが鼻で笑う。


「任務を放棄したうえに、そんな見ず知らずのガキを連れて楽しく旅行とはな。職務怠慢もいいところだ。クビになって当然だな!」

「…………失礼します。行こうか、コネコちゃん」


 アメリアさんは、クビを受け入れるようだ。

 でも……きゅっ、と唇をかみしめている。


 本当は、辞めたくないのだろう。


「ただなぁ、アメリアぁ。おまえの態度次第では、騎士に戻してやってもいいぞぉお?」

「なに? どういうことだ?」


 にちゃ……とワルインディスが笑う。


「おれの愛人となれ」

「な!? あ、愛人……」

「そうだ。そうすれば、次期騎士団長候補筆頭たるこのおれがぁ、おまえを騎士に戻してやってもいいぞぉ……にひひひっ! どうするぅ?」


 ……アメリアさんの体を、じろじろと、なめ回すように見るワルインディス。


「ふにゃ」

『【こいつ、嘘ついてる】ですって!』


 ……嘘?


「にゃふ」

『【こいつにそんな権力は無い。ただ、愛人として囲って、奴隷として自分の下で働かせるつもりだ】って!』


 ……ましろを見やる。

 ましろはびょんっ、と魔神の鞄(トリック・バッグ)から飛び出して、ワルインディスの手の甲をひっかく。


「いったぁ……!」


 ぱっ、ワルインディスの手から血が垂れる。

 ましろは、人前ってことで、いちおう手加減してくれたようだ。

 本気でやったら、多分腕は消し飛んでいただろう。


「しゃー!」

『【あたしのお気に入りに、手ぇ出すんじゃあないわよ!】ですって! いいぞぉましろ様! やっちゃえー!』


 ……ましろの独断専行を、私は止めなかった。止められなかった。


「アメリアしゃん。そいつの言うことなんて、聞かなくていいでしゅ! こいつ、嘘ついてましゅ!」

「な!? なな!? 何をいってるこのガキ! お、おいアメリア! こんなガキの言うことなんて信じるな! おれの女となれば……」


 すると、アメリアさんはうなずいて、身につけてる王国騎士の鎧を脱いだ。

 軽装となったアメリアさんが、ワルインディスの前へと立つ。


「な、なんだぁ?」

「ワルインディス副団長。わたしは、本日このときをもって、騎士団長をクビになった。そして……わたしは、王国騎士を辞める!」


 胸を張って、彼女が言う。


「本日より、わたしはあの娘と、【お猫様】を護衛する専属の騎士となる」

「アメリアしゃん!」

 

 にこっ、とアメリアさんが微笑む。


「わたしも冒険者になる。一緒に、パーティを組んでくれるかい?」

「はいっ! 一緒に……旅しましょう!」


 アメリアさんはきびすを返すと、私の手を握って、街へと歩き出す。


「ち、ちくしょおぉ! こうなったら力尽くでぇ……!」


 ワルインディスが殴りかかってくる。


『くるよ! やっちゃえ、やすこにゃん!』


 私は結界を発動。

 結界をゴムに性質変化させる。


 後ろを振り替えずとも、わかる。ワルインディスは結界にぶつかり……。


「ほぎゃぁああああああああああああああああああああああああ!」


 上空へとぶっ飛ばされて、ぐしゃりと、地面に落ちる。


「うみゃー!」


 ましろが飛爪ひそうを発動。

 ずばんっ! と、ワルインディスの顔面すれすれを斬撃が通る。

 そして、地面に大きな切り傷ができる。


「うひぃいいいいい!」

「アメリアしゃんに……私の大事な仲間に、近づくな!」

「にゃ!」『そーだそーだぁ!』


 ワルインディスは情けなく泣きながら、「ひぃいいいいい! お助けええええええええええ!」と去っていくのだった。


 

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アメリアしゃんが奇跡的にいい人なだけで、この国の王族やら行政機関はろくな奴が居なさそうだな… とりあえずドブカス王子とその一味は「聖女殺害未遂の実行犯」として近いうちにお礼参りしときたいねぇ つい…
こんなのが副団長なのか……とおもったけど王太子があんなのだったな
お猫様! コレはお気に入りにするはずだわ 下僕だけどw 部下の安全は守るいい上司猫
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