22.アメリアさん、王女だった件
ワルインディスをぶっ飛ばした後、私たちは、ノォーエツの街へとやってきた。
辺境の街と聞いていたけど、かなり人が居た。どうやら、近くに初心者用のダンジョンがあるから、冒険者なりたての人とか、それを目当てにした商人とかが来るそうだ。
アメリアさんが宿を取ってくれた。
一部屋を、私とアメリアさん二人で使うことになった。
「ふぅ……ようやく一息だな」
王国騎士の鎧を脱いだ、アメリアさんがベッドの上に腰を下ろす。
「コネコちゃん、どうした? 突っ立ってないで、隣に座ったらどうだい?」
ベッドは……一つしか無い。私は、子供(の体)だから、ベッドを二人で一つ使うというつもりらしい。
「あの……アメリアしゃん。本当に、冒険者になるんでしゅか? もっと……他の道もあったんじゃ……」
たとえば、騎士団に戻るとか。
他国へ行って、騎士になるとか。
わざわざ冒険者に、それも、私とパーティを組まなくても、いいのではないかって……思ってしまうのだ。
私のせいで、人生を、決めさせてしまったんじゃあないかって。
アメリアさんの隣に座る、私。彼女は私の頭を撫でてくれる。
「わたしがしたいことはね、コネコちゃん。人助けなんだ。それができるなら……どんな職業でも良いんだ」
「……冒険者じゃ無くても、人助けはできましゅ」
「そうだね。でも……わたしは幼い君を、ほっとけないんだ」
やっぱり、私がいるから、冒険者を選んだらしい。
……優しい人。
そんな優しい人に、私は嘘をついてる。私は、転生した聖女であって、子供ではないと。
……とても、胸が痛む。彼女は私に凄く優しくしてくれてるのに、私はそんな彼女に隠し事をしてる……。
仲間となるこの人に、嘘は……つきたくない。
「……アメリアしゃん、ごめんね。あのね、私……実は……言ってないことがあるの?」
するとアメリアさんは、「わかってる」とうなずく。
え? わ、わかってる……?
「君は、聖獣の付き人なのだろう?」
「……………………へ? せ、聖獣……つ、付き人……?」
一体何を言ってるんだろう。
聖獣って……?
「君と同行してる、その白く美しい聖なる獣のことさ」
ぴょこっ、とましろが魔神の鞄から顔を出す。
くあ……とあくびをする。
「ましろが……聖獣」
「違うのかい?」
「あ、いや、その……」
するとましろが「ふなーう」と不満そうに鳴く。
『【だれが聖獣よ、あたしは神よ!】ですってぇ』
と、いつも通り、愛美さんが翻訳してくれた……のだけど。
「!? い、今の声は……一体!?」
アメリアさんが私を守るように抱きかかえ、剣を手にする。
え、えっ?
「も、もしかして……今の声……聞こえてたんでしゅ?」
「ああ。はっきりと、女の声が聞こえた……。一体だれだ!? どこに隠れている!?」
すると……魔神の鞄から、にゅぅ……と愛美さんの幽霊が出てきた。
『ひっ、あ、あの……怪しいモノじゃあ、な、ないです。ひぃっ、わ、わたしはその……』
すると……。
「あ、あなたは……いや! あなた様は……まさか!?」
あなた……様?
「【沈黙の大聖女アイミ・サクダイラ】さまでは!?」
………………はい?
「ち、ちんもくの……だいせいじょ……?」
「ああ! 銅像や壁画に載っていたのを見たことある! あなたは間違いない、沈黙の大聖女さまだ!」
アメリアさんがベッドから降りて、愛美さんの前で跪く。
「え、え? あの……愛美しゃん。沈黙の大聖女って……?」
すると愛美さんが……。
『わ、わたしにもわからないですぅ~……』
本人がわからないってどういうことなんだろう……?
「えと、アメリアしゃんは愛美さんのこと、知ってるんでしゅ?」
「無論だ。というか、この世界で沈黙の大聖女様を知らないひとはいないだろう」
「え!? そ、そんな有名人なんでしゅか!?」
『そうなんですか!?』
なんで本人が知らないのっ!?
「かつて世界には、何人もの魔王が存在する、暗黒の時代が存在したのだ」
魔王……。ファンタジーモノのテンプレだ。
そんなのが何人もいる時代なんてあったんだ……。
「人々は魔物、そして魔王達の脅威に怯えていた。待ちにいても、魔物、魔族が襲ってくる。人々が安全に暮らせない日々が続いていた。そんなとき……召喚されたのが、【沈黙の大聖女】さまなのだ」
大昔の、ヤバい時代に、愛美さんが召喚されたと。
「沈黙の大聖女さまは、人々の平和のために、二十四時間、三百六十五日、寝ずに働き続けたという」
『え、あ、その……ただ仕事さぼったら王族が怖かったからやってただけですけど……えへ』
「主な拠点はゲータ・ニィガだったが、後年、ゲータ・ニィガ国内外、各地を、沈黙の大聖女様は巡礼なさっていらした!」
『ゲータ・ニィガの王族がブラックすぎて、嫌になって逃亡生活送ってただけですけど……えへへ』
「治療などをしても、お礼を一切受け取らず、何も言わず、立ち去っていくという、とてもクールでお美しい、まるで英雄のような御方だったと……!」
『し、知らない人としゃべるのマジ勘弁でして、話しかけられる前に立ち去ってただけですけど……えへへ』
……愛美さん、そんなことしてたんだ。
というか、愛美さんの伝説(の裏事情)、アメリアさんの耳に届いていない。
憧れの人を前にして、ちょっと興奮してるらしい。
「暗黒の時代に、人々の光となっていた、偉大なる大聖女さまとお会いできて光栄です!」
『え、えへへ~……♡ そんなぁ~……偉大なる大聖女さまだなんてぇ~……♡ たいしたことして、ないですよぉ~……? えへえへ♡』
褒められて凄い喜んでる……。
それにしても……愛美さんって、本当はとっても凄いひとだったんだ……。
「これで合点がいきました。聖獣様だと思っていたのですが、もしや……あなた様は神獣さまだったのですね」
「ふにゃーう!」
『【そう、あたしは神獣【バステト】! 聖獣なんかと一緒にしないでほしいわ!】で、ですって』
神獣……。聖獣……。
「あ、あの……聖獣とか、神獣とか、っていったなにが違うんでしゅ?」
愛美さんが説明してくれる。
『せ、聖獣というのは、聖なる強大な力を持つ知性ある魔物の総称です。ユニコーンとか、神聖光輝竜とか』
続いて、アメリアさんが言う。
「神獣というのは、獣の姿をした神様のことだ」
なるほど……聖獣はあくまで魔物。
神獣は、獣の姿をした神と。
そう考えると、神獣の方が偉いように思えた。
「神獣様でございましたか。どうりで、お強いわけですね」
「どうりでってことは……アメリアしゃん、ましろの正体に気づいてたんでしゅ?」
「ああ。といっても、まさか神獣とは思わなかったがな。聖獣かと思っていた」
なるほど……。
ここに来るまでに、ましろ、色々やらかしてる。
そこから、アメリアさんは、ましろがただ者ではないと察したのだろう。
「沈黙の大聖女。神獣。ときたら、もしかして……君も?」
アメリアさんが私を見つめてくる。
「あ、は、はいでしゅ……」
『やすこにゃんは召喚聖女ですぅ』
と私が答える前に、愛美さんが答えてしまった。
「しょ、召喚聖女!?」
「は、はい……わぷっ」
アメリアさんは私に近づいて、ぎゅううっと抱きしめる。
「可哀想に……」
「かわいそう?」
アメリアさんがうなずく。
「異世界から召喚された聖女については、わたしも騎士の端くれだ、知ってる。……こんな幼いのに、親もとを離れ、見知らぬ世界に連れてこられるなんて……!」
ぎゅううっ、とアメリアさんが私を抱きしめる。
……あれこれ、私の中身が、実はOLだって気づいてない……?
「あ、あの……アメリアしゃん。私……」
「大丈夫! お姉さんが、君を一生守ってあげるからな!」
アメリアさんが剣を抜いて、私の前で跪く。
「アメリア=フォン=ゲータ・ニィガ。これより、あなた様の剣として、あなた様をお守りいたします。召喚聖女さま」
………………ん?
んん!?
「あ、あの……今、フォン=ゲータ・ニィガって……」
「ああ。まあ、たいしたことじゃあないが」
アメリアさんは苦笑したあと言う。
「わたしは、実は王女なんだ。と言っても、第十八王女で、王位継承権なんてないんだけど……」
…………え?
えええええええええええ!?
「アメリアしゃん、姫騎士だったのぉ!?」
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