Sense100
祝、大台の百。これからもOSOを暖かい目で見守って欲しいです。
現在の所持センスは――
所持SP28
【弓Lv36】【長弓Lv9】【鷹の目Lv43】【速度上昇Lv30】【発見Lv29】【魔法才能Lv48】【魔力Lv48】【付加術Lv24】【調薬Lv32】【調教Lv9】
控え
【錬金Lv36】【合成Lv34】【地属性才能Lv20】【彫金Lv6】【料理Lv29】【泳ぎLv15】【生産の心得Lv40】【言語学Lv21】【登山Lv13】
この二ヶ月でレベルは上がったが、夏休みほどの伸び幅は見せていない。
そして、この余っているSPを消費して、一つの実験をすることにした。
強制レベリングは、可能か否か。――多分可能だろう。
調合の片手間に本を読んで言語学のレベルを上げたり、幼獣たちと接することで調教のレベルを上げたりに勤しんでいたが、別の時間の使い方も考えてみることにした。
何かの片手間で状態異常になれば、訓練は可能だ。それを重点的にやれば、強制レベリングになる。
俺が習得できる状態異常は、一つにつき、1SPを消費する各種の状態異常耐性だ。毒に始まり、麻痺、眠り、呪い、魅了、混乱、気絶、怒りの八種類。
状態異常は、1~5で表され、その継続時間は、表記される数の五倍の秒数。
毒は、一秒間に最大HPの1%減少する。
麻痺は、行動の阻害。
眠りは、視界が閉じ、思考停止。まぁ、眠るのと似た感じだ。
呪いは、一秒間に最大MPの1%減少する。それとランダムで様々な負の能力が付加される。
魅了は、魅了を掛けた側の人間から簡単な命令を受ける。
混乱は、敵味方問わず無差別に攻撃を始める。この時、魔法やアーツ、スキルは使えない。
気絶は、眠りに似ているが、一定以上のダメージまたはアクションを受けると強制解除できる点が上げられる。
怒りは、受けた者のATKとINTを上昇させて、DEFとMINDを低下させ、無差別に攻撃する。この時、魔法やアーツ、スキルは使えるために、利点とも言えるかも知れない。
各状態異常の概要は大体こんな所だろう。あと、この状態異常の上に更に同種でより強力にした状態異常があるが、そこまで行くのはゲーム進行上、まだまだ先だろう。
俺は、それらの耐性を習得して、装備センスも全て状態異常に切り替え、実験を開始する。
自分に毒を盛る。今まで調合の失敗作や試作品で何度か受けたことはあるが、それはまだ弱い毒だ。自分自身が率先して受け入れるというのは、意外にも度胸が要る。
「すぅー、はぁー。よし! 男は、度胸」
深呼吸して、自分の頬を軽く叩いて気合を入れる。
目の前に取り出した紫色が毒々しい毒薬。セイ姉ぇに渡した奴と同種の奴を取り出し、自らに被る。
直後に、視界が狭まる感覚と身体から力が抜け始める。これが二十秒も続くと考えると気が遠くなりそうだ。一回ごとに解毒して再度飲むなんて、かなり出費が痛い。
そう思っている中で、身体が薄い水のヴェールに覆われ、仄かな温かさと明るさを持って体の軽くなる。完全に良くなった、と言うわけじゃないが、気持ち楽になった程度。
毒も一段階軽減されていた。
――何故? という疑問に対する答えは自ら擦り寄ってくる。
「そう言えば、リゥイは、浄化持ってたな」
状態異常と回復を両立するセンスを持つ幼獣のリゥイ。リゥイもザクロも成獣になってからレベルを上げようと思っていたために、センスのレベル上げはしていなかったために、忘れていた。
「一緒にレベル上げるか? 俺が状態異常を受けて、リゥイが即治療」
俺の言葉に、首を縦に動かし、肯定に意思を込める。その様子にもう一匹も加わろうとするが、残念だがザクロには、この場ではレベルを上げるセンスを持っていないために諦めてもらうしかない。
「くぅ~」
「可愛い奴らだな。そんなに俺を心配するなんて」
俺は、二匹を抱き寄せて、満足いくまで撫でる。撫で方にも微妙な違いがあり、悪い撫で方だと逃げられるが、良い撫で方だと目を細めて気持ち良さそうにする。
ほら、この通り、俺の手によって極楽へと旅立つ二匹が――。
「――って、俺がトリップしてどうする」
欲望を振り払い、また後で。と言い残してザクロを膝から退ける。
万能回復のリゥイが居る今、俺は、一つの無謀を思いついた。
工房部に飾られたコレクションの一角。俺のお気に入りの八つの指輪。
凶悪な状態異常を誘発する効果とその反面優秀な性能。
ここで一つ。これら装備したら、レベル上げが楽になるのではないか。
その疑問を解消すべく、俺は動いた。
ポイゾナス・リング【装飾品】(重量:1)
DEF+15、MIND+15 追加効果:毒化3
他のも、ほぼ同様の効果の品だ。それをメニューを操作し、装備を変える。
一分間に一度チェックが入る。八つ装備して半分がチェックを受けても四回状態異常を受けることになる。
状態異常薬の節約になる。まぁ、このアクセサリーの存在を思い出したのは先ほどだが。
「まぁ、物は試しだ」
最初のチェックが来る一分をただじっと待つ。待つと一分は意外と長く感じる。緊張で唾液を飲もうと喉が動く。
じっと、俺に異変が無いか観察するリゥイ。とそれらを見上げるザクロ。
そして、ついにその時が来た。
最初に来たのは、毒のような視界の狭まり、続いて、指先が動かず痺れる様な感覚。後は、前後不覚になり、頭を猛烈に揺すられたような気持ち悪さ。
一度に襲うには、膨大すぎる感覚に倒れそうになる直前、暖かい物が身体を柔らかく包み、幾分か軽くなる。しかし、気持ちの悪さやだるさは、完全には抜け切らない。
手が動かないために、そのままカウンターに頭を倒し、震える声をリゥイに掛ける。
「……も、う、一度」
再び現れる光で完全にステータスとしての状態異常は消えた。しかし、心因的な気だるさからまだ頭を上げられそうにはない。
「やばいな。一度に複数の状態異常は――」
また、チェックの時間が来た。
今度は、痺れる感覚と身体の奥から炎でも噴出しそうな激しさ。頭は熱射病の直後のように意識が朦朧とする。身体が勝手に動き、店内にも関わらず弓を構えようとする直前、リゥイの浄化が働き、動きが遅くなる。だが、まだ身体が止まらずに弓を番える直前に完全に状態異常が切れる。
「――俺は、何をしてたんだ。……怖ぇぇぇっ!」
慌てて装備を外す。今のは絶対ザクロかリゥイを狙おうとしていた。俺が自分の幼獣を手に掛ける姿を想像して、一気に血の気が失せる。
「無理は、駄目だな。……うん。段階を踏んで地道にやらなきゃな。まずは毒から少しずつやろう」
さっき、俺の身体とは無関係に動いたのは、混乱、魅了、怒りのどれかだろう。怖すぎる。この三つのレベリングは、誰か信頼の置けて俺を押さえ込める監視者が居ないと危ない。
俺は、その三つの状態異常の指輪を飾り直し、再び、五つの指輪を装備する。
「よし、これで時間一杯までレベリングするか」
やる気を出して声を上げたは良いが、再び起きる毒の視界の狭まり。だが今回は、それに加えて視界の暗転が加わり、カウンターに頭を付ける形で深い眠りに入り込んでいった。