Sense29
俺は、そわそわと防具完成を待っていた。一日二日で出来るとは聞いていなかったので、まあ、出来る事だけをやった。ポーション作ったり、エンチャントしたり。
丸薬も足りなさそうだから、周辺で狩りして、毛皮とか胆石を獲得。
畑も、薬霊草や魔霊草が安定量供給でき、薬草は、完全にNPCからの買い取りに移行。
ステータスも大分上がっている。
所持SP12
【弓Lv17】【鷹の目Lv25】【魔法才能Lv26】【魔力Lv24】【錬金Lv15】【付加Lv28】【調合Lv24】【合成Lv17】【細工Lv15】【生産の心得Lv12】
控え
【調教Lv1】【速度上昇Lv7】【発見Lv5】
薬霊草からは、ハイポーション。魔霊草からは、MPポーションが作成できた。しかも、今までと同じように乾燥させてからの方が、回復量がどちらも高い。だが、調合のレベルが低かったのか、最初は半分以上が失敗。今では七割成功。と言ったところだ。
上質化もして、錬金の下位変換で数が増えるので、調合の回数をかなりこなせるが、売るほどの数は確保できないので、今のところは、俺専用となっているが、俺の場合の回復量を大きく上回る。
ただし、最近、合成だけが成長を伸び悩んでいる。合成ポーションを作る必要もなくなり、上げる必要性を感じなくなった。矢も最近では、お店から買ったものだ。
「合成がゴミセンスに戻ってしまった」
このままでは、合成の必要性が無くなってしまう。何とかして、何とかしてと考えるのだが、今あるアイテムは、どれも使えそうな何かだし。使ってないけど。
「うーん。最近、三種合成とかやってないし、合成ポーション同士で掛け合わせても、回復量が微量に増えるだけ。ハイポ、MPポーションに至っては、レベルが足りないのか、失敗続き。あるアイテムと言ったら……石?」
大量に拾った石。もう、二百個くらいあるかな? 前に合成や錬金でやって駄目にしたが、なんとなく今のレベルなら成功しそうな気がする。
「案ずるより産むが易しって言うし、『合成』!」
三種類出来るキットで石三つを合成した結果――岩になりました。
ちょうど腰を掛けるのに良さそうな丸々とした綺麗な岩。
「お、重いな。インベントリには……おっ、入った入った」
邪魔になるし、レベル上げのために、石を岩に変換していった。途中、錬金でもやってみたが、失敗。何か法則があるのか無いのか。岩は、石の上位素材ではない。なら何に使うんだろう。
ちょうどいい大きさ。畑の周りにでも置けば、景観的に良くなるんじゃないかと思い付きで、数十個の岩を置いていく。
灰色の石、黄土色の土、薬草の緑、一角には解毒草の紫や解痺草の黄色という畑と言うより花壇という様相に変わった。
「うわっ、綺麗になったな、自分で言うのもあれだけど。スクショに残してミュウたちに見せるのも良いかもな」
みんな農業を馬鹿にするが、見栄えだけなら綺麗なんだからな。と思う。
額縁という家具アイテムがあれば、持っているスクリーンショットを飾る事も出来るらしい。何時かは、自分の店持って飾りたいものだ。
ぽーん。頭の中で短い音が響く。マギさんからの連絡だ。
「はい、ユンです」
『あっ、防具出来たって。クロードがさっきメモと一緒に置いて言ったよ』
「あっ、じゃあ、ポーションの納品のついでに取りに行きます」
『了解。待ってるよ』
まあ、ブルポは、レシピを使えばすぐに出来る。ただ複数を段階を経てやるので、ただのレシピ通りの生産よりMPの消費が激しいだけだ。その分、成長も早いわけだが。一長一短。
「さて、出来たし、行きますか。【付加】―スピード」
センスを速度上昇に切り替え、エンチャントも施し、全力で町中を進む。黄色い残像を残して、物の数分で町の中央近く、【オープン・セサミ】へと辿り着く。
「マギさん。こんにちは」
「はいはい。いらっしゃい。防具、渡すよ。あと、サービスだって」
緊張しながらも、マギさんのトレード画面から防具を受け取る。なんか、インナーまで着いてきている
CS№6オーカー・クリエイター【外着】
DEF+16 追加効果:DEXボーナス、自動修復
「うわっ、今の防具と天と地ほどの差だ」
「そうだね。でも、一番の凄い所は、地精霊の石の追加効果だよ」
レア素材は、防具の性能を引き上げ、追加効果を齎してくれるらしい。
「地精霊の石の効果はDEF+5と自動修復。この自動修復って効果は、耐久度が減ると装備者のMPを吸収して回復するみたいだよ。全壊しても、時間とMPがあれば完全回復するらしい、ってメモには書いてある」
へぇー。便利だな。これが壊れたら、今度はちゃんとお金出して買い直さないといけないし。
「後ね。防具のグレードを上げたければ、俺のところに来い、グレードを上げてやるって」
「あーそれは嬉しいな。それじゃあ、さっそく装備してみます」
取り出したのは、黒と黄褐色のコートと言った感じだ。肩口でバッサリと切り取られ、肩や腕を肌を露出させているのは動かしやすさを重視しているのか。所々にレザーや金色の金属の装飾が施されて、クロードのセンスの良さが良く分かる。
耐久度だけ高いシンプルな黒のインナーは、肌触りだけいい。その上からレザーコートを着れば、インナーは隠れる。
レザーコートとは言うけど、裾はそれほど長くはない。せいぜいお尻が隠れる程度だ。腰あたりのベルトを締めれば、きゅっと体に合わせた調整が出来る。
腕をぐるぐる回して、動きを確かめる。悪くない。
「カッコいいな。気に入った。でも名前のCSって何だ?」
「ああ、それね。生産職は、自分の制作したアイテムの名前を自由に変えられるんだけど、クロードの場合、自分の自信作にそうやって番号付けるのよ。何でもクロード・シリーズの略なんだって」
「それは恥ずかしいな」
なんか、限定品みたいな扱いだし。まあ、良いが。
「全身揃ったら、名前変更してやる、だってさ」
「次会ったら普通にしてもらう」
「やっぱり恥ずかしいよね。あと、今度モデルしたら、割引してやる。ともメモには書いてあったよ」
うっ、なんか、あいつが言うモデルって嫌な予感しかしない。ガンツと同じベクトルを匂わせるだけあって、変な服着させられそうだ。
「考えときます」
「そうだね。後は……無いみたい」
「そうですか。じゃあ、ポーション納品しますね」
俺は、ブルポをトレード画面に乗せる。
「一個500のブルポが五十個で25000Gだね。三日で大分溜まったね。少し我慢すれば、お店持てるんじゃない?」
「そうですね。いつかは持ちたいですけど、まあ、おいおい」
「そっか、そうなれば自分で売るもんね。お姉さんさびしくなっちゃうよ」
「そしたら、たまには顔出しますよ。マギさんと話するのは楽しいですし」
「おやおや、お姉さんを惚れさせる気かい?」
「なに冗談言ってるんですか。事実です。それに、生産職同士の会話。をね」
俺が楽しそうに笑えば、マギさんは、驚いたように目を見開き、すぐに、笑い返してくれる。
「生産職同士の会話。それは魅力的だね。まあ、そうなってもたまにはポーション納品してくれると嬉しいな」
「じゃあ、お店に出向く時のお土産代わりで」
まだ来そうにない事を二人で楽しそうに話す。
「じゃあ、防具の性能でも試してきます」
「うん? これからまた生産かい? DEXが上がっているから今まで失敗していたのも成功するかもね」
「その前に、戦闘です。ステータスは、何が影響するか分からないんですから」
「ふーん。なかなか、そういう検証で何か分かったら教えてね」
「分かりました」
俺は、それを聞いて、町から出る。向かうは、東のビッグボアと戦った場所の手前。