「危険ですよこの映画は」中村獅童、“挑戦的”北野武監督作『Broken Rage』を語る!

2025年2月13日(木)7時0分 クランクイン!

2月14日配信開始となるAmazon Original映画『Broken Rage』(Prime Video)に出演している中村獅童がインタビューに応じ、本作における挑戦や、コメディータッチで描かれたパロディーパートでの難しさなどを語った。

 「暴力映画におけるお笑い」をテーマとし、日本の配信映画として初めてベネチア国際映画祭に正式出品され高い評価を受けた本作は、北野監督が映画の常識を覆すべく手掛けた作品。

 約60分の本作の前半では、警察にとらわれた“すご腕”殺し屋・ねずみ(ビートたけし)が、釈放を条件に刑事・井上(浅野忠信)と福田(大森南朋)と手を組み、覆面捜査官として裏社会に潜入する骨太のクライムアクションを描き、後半は前半と同じ物語がセルフパロディーという手法を使ってコメディータッチで描かれる。

——本作について教えて下さい。



中村:作品のテンポの速さが僕の目には本当に全く今までにはなかった新しいものに映りました。北野監督は浅草での芸人の下積み時代に、非常に長くご苦労もなさっています。役者も苦労は買ってでもしろって言われるぐらいな世界でございますから、非常に尊敬していますし、芸人ビートたけしへのリスペクトというのも当然あります。

若い方たちにとっても、今回の企画はすごくいいなと思います。今の時代に合っています。若い方たちはスマホで映画を見たりとか、映画を2倍速で見る子たちも多い。時代がガラッと変わっていて、もちろん映画館でゆっくり見るっていうことも一つの醍醐味です。歌舞伎はもっともっと長い時間のものもたくさんございますから、そういったものをいかに丁寧に伝えていくかというのは我々の仕事でもあります。本作のように尺が短くて、なおかつテンポが良い作品は若い方たちにも見やすい。そういう作品があるというのは、やっぱり今の時代にとってもいいんじゃないかなって思います。北野監督はあのお年になっても時代の流れであったりとか、今世の中がどういうものを求めていて、昭和から平成、令和と時代がどういう風に変わっていったかということを敏感に察知されていると思います。

——この作品でどういう挑戦をされたと実感しましたでしょうか?



中村:まずAパートとBパートが合わさって一つの作品になっています。パロディパートはBパートということになってくるのですが、何か他の作品をパロディ化して自分たちの作品に取り入れるということは、今までも多々ありました。僕らも映画館で見ると「ああ、これは何々の映画のオマージュだな」とか「あ、パロってるな」っていうのを感じて、くすっと笑ったりする。この映画に関しては、よその作品をパロディ化するのではなく自分たちの作品をパロディ化して笑わせるという作品です。そこが今までになかった挑戦なのかなと思います。

北野監督という方は自分たちがそれまで見ていた映画のセリフの分量を変えました。極力そのセリフがないわけです。その中でも、多くのことが伝わってくるので、北野監督に対して当時「斬新だな」という想いを抱きました。『その男、凶暴につき』だったり、数々の作品がございますけれども、セリフを極力少なくして、嘘っぽくならないようにリアルに描くというのは、きっと時代が求めていたと思います。セリフを少なくして、その世界観を伝えていくという手法は僕らの目に斬新に映りました。

それと同時に僕は歌舞伎役者ですが、映画の世界でいつかは北野監督に呼んでいただけるような役者になりたいとずっと思っていました。20代の頃、まだまだ無名の時代がございまして、世の中にちょっと名前を知っていただけるようになり、映像の仕事をたくさんやらせていただけるようになったのが、39歳くらいの時からですかね。北野監督に対しては、自分が17、8ぐらいの高校生くらいの時代からずっと憧れです。

——監督は『ピンポン』もご覧になったとおっしゃっていました。



中村:公開が2002年でしたので、20年以上前の作品をよく覚えていてくださっていて、うれしいです。

■「危険ですよこの映画は」アドリブの極致だった現場を語る

——精製工場を取り仕切る田村役の宇野祥平さんと監督との3人のやり取りが最高に面白かったんですけど、あそこはどういう風に撮っていたんですか?



中村:あのシーンでトロフィーが壊れちゃったのは演出じゃなくてハプニングなんです。でも、ハプニングが起きた時に役者がどうするかが大事です。「ごめんなさい。壊れちゃったので」ってやめにするのか、芝居を続けるのか。若い時にアメリカに行った時にある監督に「セリフを噛もうが失敗しようが、僕がカットって言うまでは芝居をやめないでくれ。日本の人はちょっと失敗すると『ごめんなさい。NG』みたいなリアクションをするんだけど、それをやらないでほしい。僕はむしろハプニングが大好きなんだ」と言われたんです。つまり、役になりきれということだと思うんです。トロフィーが壊れても、これは演技をやめちゃいけないなと思いました。

このままあたかも演出かのように続けた結果、多分白竜さんとかは普通に吹き出してると思うんですけど、予想外の展開で、このつながりどうしようみたいな状況でも監督が「これ面白いからまあいいか」て言って、そういう演出に変えるんです。現場で笑っちゃいました。スタッフの吹き出している声とかは入っていないと思いますが、スタッフも結構笑っちゃって、笑いを耐えるのが大変な現場でした。北野監督がどういうアドリブをされるかもわからないので。いつでもアドリブに対応できるよう自分で考えておく。その中でハプニングかも分からないくらいリアルなことが生まれたりもするので、それが面白いところなのかなという風に思います。ハプニングの中から誰も想像してないことが突然起こるわけですから。そういう時でも、北野監督の笑い声が聞こえたりするとちょっと安心します。監督が笑ってくれるとめちゃくちゃうれしいですね。

僕らは本当に楽しく撮影させていただいたんですけど、笑いが現場で生まれることはほとんどないんです。演出や台本も変えたりして、撮り方もテストをやって変えることもあります。若い方たちが映画離れしているなんて話も聞きますけど、AパートとBパート合わせて約1時間の作品ですから、今までにはない新しいタイプの北野作品を大きな画面で見るもよし、携帯で気軽に見るもよし、いろんな楽しみ方ができるんじゃないかなと思います。僕らも出させていただく立場ですから、これから映画を含めたエンタメをどんどん盛り上げて、業界自体も面白くしていければなという風に思っています。

歌舞伎役者として、いつも言うことは「歌舞伎というのは400年の歴史がありますが、その中で現代を生きる我々の歴史と伝統と革新を大切にしたい」。そんな役者人生を送っていきたいなという目標があるので、北野作品という映画の一つの伝統を守りつつ、いつでも革新を追求する新しいものに携わりたいです。北野監督ご本人の魅力であったり、生き様や思想が作品に反映されていると感じます。新しいことに挑戦する時っていうのは怖い気持ちもあります。だけど挑戦しないと新しいものって生まれませんから。新しいものを作った時は、賛同を得ることもできれば、「いや、これは違う」っていう方もいらっしゃると思います。この作品はまさにそうだと思います。恐れずに前に突き進んでいく、新しいものを作る、批判を恐れずに新しいことへチャレンジするという冒険心は本当に見習わないといけないなと思います。本当に今の時代に切り込んでいったなと思います。ある種危険な作品です。

——Bパートのセルフパロディーはコメディータッチで描かれていますが、撮影はいかがでしたか?



中村:歌舞伎のお芝居でも喜劇がありますが、「自分が真面目にやっているからこそ喜劇は面白い」という若い頃からの教えがあります。自分が楽しむのはいいことだけど、ふざけてはだめ。「喜劇こそ真剣にやる」っていうのは叩きこまれてきました。 だから、今回の撮影では数々のハプニングもありましたが、大真面目にやっています。どんなことが起こるか分からないし、監督のアドリブもどう来るのか分からないからこそ、こちらが揺れてしまうとだめ。でも、そういうことにも対応できるからこそ呼んでいただけているのかなという部分もありますし、そこは監督の期待に応えたい、どんなことがあっても成立させるという想いがありました。

大森(南朋)君と浅野(忠信)君は本当に大変だったと思います。いろいろ撮影現場でセッティングがいる時とか、ちょっと空いた時間の時にいろいろ相談していました。まさにアドリブの極致です。危険ですよこの映画は。

——この作品が世界に発信されることについてどう思いますか?



中村:北野監督は、海外の方に評価されて逆輸入みたいなところがあるじゃないですか。そして日本の人たちも注目するっていう。本当は逆だと思うんです。日本の人たちがすごく注目して素晴らしいと言ったものが海外で称賛される。海外でウケたものを日本人がやっと認めるっていうのは、どこか悔しい部分もあります。海外の人たちは作品への理解度が深いですよね。カンヌに連れて行っていただいた時に街を歩いていると、レストランに入っても「たけし! たけし!」とみんなに声を掛けられていました。本当に世界的な方ですし、“世界のキタノ”ってよく言いますが「ああ、なるほど。こういうことなんだな」と感じて、いい空気を吸わせていただきました。

 Amazon Original映画『Broken Rage』は、Prime Videoにて2014日より世界独占配信。

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