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「温活」と長寿…なぜ、温泉やサウナは体にいいのか?【長寿研究のいまを知る】#17

日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月17日 9時26分

「温活」と長寿…なぜ、温泉やサウナは体にいいのか?【長寿研究のいまを知る】#17

温泉には損傷した組織を修復する効果が

【長寿研究のいまを知る】#17

 古今東西、温泉は健康に寄与し、傷の治りを早くしてくれることが知られている。そのため温泉に対して不老不死や長寿のイメージを持つ人も少なくない。

 温熱には、浮力や圧力によるマッサージ効果、含有成分による化学・薬理効果、血行促進による鎮痛効果、筋肉や関節の拘縮改善効果、疲労回復効果や免疫向上効果などがある。これらはもちろん長寿に関係する。しかし、長寿にとって忘れてならない温熱効果とは、損傷した組織を修復する効果=タンパク質修復効果だ。

 温泉は、細胞が損傷しても、新たにタンパク質を作らせることによってリフレッシュするメカニズムを促す機能がある。その原動力となるのが「HSP(ヒートショックプロテイン)」である。ハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行医師がいう。

「HSPは平常状態の細胞に広く分布するタンパク質で、虚血や放射線と同じように熱によるストレスで誘導され、産生量が増えることが知られています。実際、温泉入浴でHSP70が上昇することが確認されています」

 HSPはタンパク質の変性の抑制や変性したタンパク質の修復を行う。なかでもHSP70は新たに合成されたタンパク質のアミノ酸の折り畳み(タンパク質はアミノ酸が数十から数百ほど連なったもの。その並びはDNA内の遺伝子情報で決められていて、正しく折りたたむことでタンパク質が正常に機能する)、タンパク質の輸送や品質管理、不要になったタンパク質の分解など、タンパク質の一生を面倒見るストレスタンパク質のひとつとされている。

 老化の根本的なメカニズムを特定するために、2013年にオランダの研究チームによって生み出された枠組みに「AGING HALLMARKS(エイジングホールマークス)」がある。もともとは9種類とされていた要因について、最初の発表から10年間でさらに蓄積した老化研究をもとに新たに12種類の要因に定義づけられた。

 12種類とは、①ゲノムの不安定性②テロメアの短縮③エピジェネティックな変化④タンパク質恒常性の喪失⑤オートファジーの機能低下⑥栄養感知の異常⑦ミトコンドリアの機能異常⑧細胞老化⑨幹細胞の枯渇⑩細胞間コミュニケーションの変化⑪慢性炎症⑫腸内細菌叢の変化、である。

「④タンパク質の恒常性の崩壊は老化を加速させます。例えば、キイロショウジョウバエに終末糖化産物(AGE)などを与えてタンパク質を劣化させると、健康寿命と最大寿命が短縮したことなどが報告されています。逆にタンパク質の恒常性を改善すると老化を遅らせることがわかっています。ヒトのHSP70を実験用マウスの鼻腔内に投与すると、タンパク質分解酵素が活性化して脳内で加齢により増加する細胞内顆粒(リポフスチン)量が下がり、認知機能を向上させ、寿命が延長する効果があったとの報告もあります」

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