会合出席者の4人は軒並み否定(左上から時計回りに、安倍派の塩谷、下村、西村、世耕の4氏)/(C)日刊ゲンダイ

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 真相解明に向け、一歩前進となるのか。自民、立憲民主両党は19日、旧安倍派の会計責任者だった松本淳一郎元事務局長(政治資金規正法違反で有罪判決)の参考人招致について、20日の開催を延期することで一致した。自民側が聴取の日時や場所の非公開や、質問項目の制限を求めたことに野党側が反発し、折り合わなかったことが原因だ。

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 しかし、松本氏の招致は新年度予算案の採決の前提となっているため、今後、改めて開催される見込みだ。果たして「キーマン」は全てをブチまけるのか──戦々恐々の安倍派の元幹部から、日刊ゲンダイは重大な証言を得た。

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 今国会開会前から野党は、松本氏の参考人招致を要求。衆院予算委員会で多数決による議決を新年度予算案の審議入りの条件に突きつけていた。結果、自民は応じざるを得なくなり、野党の賛成多数で招致が決定。しかし、松本氏自身はこれまで2度にわたり招致に応じない意向を示し、自民も消極姿勢をとり続けてきた。

 20日の参考人招致は見送られたが、改めて開催される公算が高い。ある永田町関係者がこう解説する。

「松本氏招致にこだわる野党は、自民が応じない場合、立憲民主党の安住淳予算委員長の職権で予算案の採決に応じない構えまで見せていた。野党側の強気な意向は自民側も分かっており、いずれ招致に応じざるを得ないと考えていたようだ。目下、衆院は予算案成立を巡る与野党の最終攻防が行われている段階。自民は、いずれ野党側への譲歩を迫られることになるでしょう」

 聴取の最大の焦点は、松本氏の裁判での証言と安倍派幹部の政治倫理審査会などでの発言の齟齬だ。

 安倍派のキックバックは、安倍元首相が中止を決めながら、死去後に再開。松本氏は昨年の公判で「ある幹部が再開を要望してきた」と語り、2022年8月の幹部会合で再開を決定したと証言した。

 会合出席者は塩谷立、下村博文両元文科相に西村康稔元経産相、世耕弘成前参院幹事長の安倍派幹部4人と松本氏。松本氏を除く4人は軒並み関与を否定した。この食い違いについて、松本氏が何を語るのかが注目となる。

「池田佳隆くんが泣きついてきた」

 日刊ゲンダイは当時の事情を知る元幹部A氏から重大証言を得た。

 A氏によると、22年の会合に出席したある幹部からこんな報告があったという。

「『還付(キックバック)中止は困る、復活してもらえないか』と池田(佳隆=政治資金規正法違反で起訴)くんから泣きつかれた。彼は既に還付金を期待してパー券を売ってしまっている。対応してあげた方がいい」

 これを受け、会合では池田氏個人が開催した政治資金パーティーのチケットを安倍派が買い上げることで、キックバック分を補填する案が浮上。ところが、「池田くんの還付金は年数百万円に上る。安倍派で買い上げると公選法が定める上限規制(1回当たりのパーティーで150万円まで)に抵触するから無理だ」との意見が出た。

 確かに池田氏の裏金は、22年までの5年間で約4800万円にも上る。派閥で買い上げるのには無理がある。池田氏の携帯電話にショートメッセージを送り、事実確認を求めたが無回答だった。

 結果的に「会合では正式決定はなかった」(A氏)そうだが、「何かしら対策した方がいい」との意思共有はあったという。

 こうしたやりとりを間近で見ていた松本氏が安倍派幹部の誰かに相談し、キックバック再開の許可を得た可能性はある。また、公判証言の「ある幹部」が会合後に「池田くんが気の毒だから還付を再開して」と松本氏に指示したことも考えられる。

 松本氏は何を語るのか。安倍派幹部はさらなる説明責任を求められかねない。

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 裏金作りはいつから、誰が、何の目的で始めたのか。カネは何に使われていたのか。「謎と闇」だらけの本件だが、“突破口”になり得るものは――。●関連記事『【もっと読む】自民裏金事件の新たな“突破口”なるか? 旧安倍派の高鳥修一氏が立憲・野田代表の「裏金」「脱税」発言を告訴』で詳報している。