「高額療養費」負担引き上げ、患者の“治療諦め”で医療費2270億円削減…厚労省のトンデモ試算にSNS大炎上
2025年02月13日 10時32分日刊ゲンダイDIGITAL
(人の命を数字で換算、2270億円削減見積り(福岡資麿厚労相=右から2人目)/(C)共同通信社)
国の非情さが浮き彫りになった。
がん患者らでつくる団体などの代表者が12日、福岡厚労相と面会。医療費の支払いを抑える「高額療養費制度」の利用者負担を引き上げる政府の方針に対し、「治療の継続を断念しなければならなくなる」などとして13万5000人余りの反対署名を手渡した。福岡は方針を一部修正する意向を示したが、引き上げの凍結を求める団体との隔たりは埋まらなかった。
制度の見直しにさまざまな批判が噴出する中、新たな火種になってきたのが、先月23日の社会保障審議会・医療保険部会に厚労省が提出した財政検証資料だ。財政への影響を推計したページの注釈に、このように記されている。
<実効給付率が変化した場合に経験的に得られている医療費の増減効果(いわゆる長瀬効果:約▲2270億円(給付費))を見込んでいる>
■「諦めて死ねということか」
「長瀬効果」とは、厚労省に戦前から伝わる経験則のこと。患者負担が増える制度変更が実施されると、患者の受診日数が減ったり、受診率が低下し、結果として医療費が削減されるというもの。つまり、厚労省は制度見直しを試算するにあたって、自己負担増により患者が治療を諦めることを前提にしていたのだ。
このトンデモ試算に、SNSも大炎上。この問題を報じた記事を全国保険医団体連合会(保団連)が引用したXの投稿は、きのうまでに1万「いいね」を超えた。
「諦めて死ねということか」「国民を数字としてしか見ていない」などの意見が寄せられている。
保団連事務局次長の本並省吾氏はこう話す。
「金額ありきの議論だったのではないかと推察しますが、病を抱える人々への想像力が欠如しています。治療が長期化すると家計の負担などが重なり、経済的な悩みが増えていく。治療と家計をてんびんにかけざるを得ない状況にまで追いつめられてしまいます。また、何回も制度を利用するうちに『国に申し訳ない』と負い目を感じてしまう人もいる。こうした患者の葛藤を理解せず、『治療を諦めて下さい』と受け取られかねない発信を国が行ったのは、大いに反省して欲しいです」
国民皆保険制度が本末転倒だ。
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政府は高額療養費に関して「制度の持続性」を御旗に、自己負担の上限引き上げを画策しているが、官僚厚遇の格差は放置したままだ。関連記事【もっと読む】で詳しく報じている。