流体の制御技術で脱炭素社会を実現 ―水素ディスペンサーで国内トップ級のシェア
記者の目/ここに注目
□岩谷産業グループの一員として水素供給網の構築に貢献
□水素分野拡大へ、研究開発は若手の意欲・アイデア重視

トキコシステムソリューションズは、気体や液体などの流体を制御する技術を核に、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現に貢献する事業を展開する。現在注力する開発事業の一つは水素関連。二酸化炭素(CO2)を排出しない水素を利用する燃料電池車(FCV)の普及に向け、水素を計量して車に供給する装置「水素ディスペンサー」を製造し、全国の水素ステーションに提供している。新エネルギーを正確かつ安全に社会に届ける技術開発を推進し、持続可能な未来 を創造する企業として今後の成長が期待されている。
水素関連の研究開発強化

水素ディスペンサーで同社は現在、全国シェアの約半分を握る。ガソリン分野で長年培ってきた流量計測やガス制御の技術、危険物取り扱いのノウハウを水素分野に展開し、次世代のクリーンエネルギーとして水素の活用が日本で検討され始めた当初から研究開発を推進。反応性の高い水素ガスを安全に取り扱い、計量して水素タンクに充填する技術を実用化してきた。
今後も水素関連の技術開発は強化する。2022年9月には静岡事業所(静岡県掛川市)に「水素先端技術センター」を設置し、水素ディスペンサーの試験能力を増強。現在の高圧水素ガスだけでなく、液体水素を制御する新技術にも取り組む。さらには水素の製造、運搬・貯蔵、供給、使用までの一連の技術開発を推進し、新市場の開拓を目指す。
「岩谷産業グループの水素大量供給を見据えたサプライチェーン構築に、全社一丸となり貢献し、水素関連の事業規模を大幅に伸長させたい」と山本竜平執行役員は将来を展望する。
持続可能な未来を創造
創業は1937年。「東京瓦斯電気工業」の計器部門が独立した「東京機器工業」として出発し、創業期は航空機用機器などを手掛け、戦後にガソリン計量機事業に参入して業容を拡大した。現在は石油流量計やガス制御機器の製造から、工場・施設向け流体関連設備のエンジニアリングサービスまで幅広い事業を展開。給油所関連も主力事業の一つで、ガソリンを車に供給する計量機の製造のほか、給油所全体の設計・施工も手掛けている。
そんな中、化石燃料の代替として利用が広がる水素に着目。2022年には家庭・産業用LPガスなど総合エネルギー事業を手掛ける岩谷産業グループの傘下に入り、水素分野にも強みを持つ岩谷産業とも連携した研究開発をさらに加速する。研究開発の推進に向け、「若手に積極的に前に出てもらいたい」と山本執行役員は主張する。カーボンニュートラル実現の目標となる2050年頃に社会の中核となる今の若い世代の意欲やアイデアが、同社の成長の源泉になるためだ。
研究開発部門の中核拠点は静岡事業所に置くが、2024年秋には横浜・鶴見の自社施設内にも同部門の一部を移管した。他社との協業が求められる電気・ソフト分野の研究開発機能を首都圏に配置して業務を効率化するとともに、若手に多様な働き方を提供する。
研究開発部門では機械、電気電子、情報など多様な分野の人材を求めている。仕事を通じ、持続可能な未来の創造に携われるチャンスがあることが、同社の魅力といえる。山本執行役員は「若手には、世の中に自分のアイデアをどう活かすか考えて働いてほしい。未来を想像しながら働ける環境が当社にはあるはずだ」と強調する。

若手社員に聞く
仕事を通じ脱炭素社会に貢献

水素の流量計の開発・設計を担当しています。流量計の構造設計から、強度や振動の解析、詳細設計、試作、評価までの一連の過程を担当しますが、自分が設計したモノが実際に形になり、世の中で使われることは仕事の醍醐味です。大学で流体制御を研究し、脱炭素社会の実現に寄与する水素分野の事業にひかれて入社しました。当社では、希望すればさまざまな仕事を担当でき、自分の成長のチャンスをたくさんもらえます。静岡事業所はのびのびとした環境で働くことができます。
先端分野のスピードを体感

水素関連機器を制御するソフトウエアの設計を担当しています。次世代の充填プロトコル(車に安全に水素を充填する手順)を開発する社外の研究機関とのプロジェクトにも参画しています。水素分野の技術は月ごと、日ごとに進化しています。そのスピード感に対応するのが仕事の難しさであり、楽しさでもあります。最先端の研究に携われるやりがいも感じます。今は横浜・鶴見の事業所で働いていますが、出張も多い私にとっては働きやすい環境です。
会社DATA
所在地 神奈川県川崎市川崎区東田町8 番地
創業 1937年
代表者 代表取締役 渡邉 希美男
資本金 3億円
従業員数 725人
事業内容 流量計・ガス制御機器とそれらを応用した装置や設備の開発・製造・販売、エンジニアリング
URL https://www.tokicosys.com/