以下の文章は、Access Nowの「Our rights are at stake: it’s time to reclaim freedom of expression」を翻訳したものである。
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Access Nowは表現と意見の自由の権利を守り続けている。しかし昨今、世界中の極右政治勢力などが「表現の自由」を口実に、マイノリティグループやコミュニティへの暴力を扇動し、批判者の声を封じ込めようとする動きを強めている。我々はこうした権利への絶え間ない侵害と攻撃に反対する。表現の自由は、オンラインであれオフラインであれ、憎悪や暴力、敵意を煽る行為を正当化するものではない。ところがビッグテック企業は極右勢力を後押しし、自らの権力と影響力を強める目的で、彼らの運動と密接かつ公然と連携している。
2025年1月、Metaはコンテンツモデレーションの方針を大きく転換する懸念すべき発表を行った。またXのアルゴリズムがフランスの極右勢力を後押ししているとの指摘も浮上している。こうした企業方針の転換がもたらす危険な影響は、すでに現実のものとなっている。難民への暴力は増加の一途をたどり、マイノリティの声はオンラインでもオフラインでも抑圧されている。こうした状況下にあって人権を軽視したコンテンツモデレーションの変更が行われれば、マイノリティグループへの迫害や攻撃を助長し、政治的対立を深め、暴力と紛争の連鎖を激化させるだけである。
ビッグテックは民主主義の秩序が揺らぐ状況を好機と捉え、数々の証拠が示す人権侵害の責任追及から逃れようとしている。公私の領域を完全に支配しようとする独裁政権は、市民社会への資金提供を禁止したり、活動を制限する法律を制定したりと、露骨な手段で市民空間への攻撃を繰り返してきた。さらに憂慮すべきことに、民主主義国家までもが同様の手法を取り入れ始めている。長年放置されてきたこの危険な現状は、もはや看過できない段階に達している。社会がビッグテックへの依存を深める一方で、人々は搾取と政治的操作の標的とされ続け、世界は民主主義の後退に歯止めをかけられないでいる。
我々の使命は危機に直面する人々とコミュニティを守ることである。Access Nowは今、表現の自由の本質的意味を取り戻し、守り抜くための市民社会運動を呼びかけている。表現の自由は基本的人権であり、差別的な攻撃や意見の異なる者への弾圧を正当化する道具ではない。政治家もテック企業も、「表現の自由」を口実に自らの目的を推し進めてはならない。表現の自由は人間の尊厳と幸福に不可欠であり、民主主義、法の支配、そして開かれた公共の対話を支える礎石なのである。
憎悪と暴力の扇動を隠れ蓑にした表現の自由の主張が相次ぐ今日、その真の意味を再確認することが急務である。以下に、我々が掲げる原則を示す。
1. 表現と意見の自由は、すべての人に平等に保障されるべき権利である
表現と意見の自由は、誰もが平等に享受できる権利でなければならない。これらや他の基本的権利の行使を差別的に妨げることは、国際人権法違反である。ビッグテック企業が極右過激思想に特別な配慮を示す方針を採用し、反移民や人種差別、性差別的な主張を増幅させることは、移民やマイノリティ、女性、トランスジェンダー、ノンバイナリーの人々など、すでに社会的リスクにさらされているコミュニティに深刻な影響を及ぼす。これらのグループをオンライン上で沈黙させ、事実上公共の対話から締め出すことは、明白な権利侵害である。
2. 「表現の自由」を政治的な分断と不寛容のために利用してはならない
今や公人が表現の自由を盾に、社会的弱者を悪魔化し人権保護を骨抜きにして政治的・選挙的利益を得ようとする事態が日常化している。こうした行為は分断と憎悪の言説を増幅させるだけである。ビッグテック企業によるコンテンツモデレーション方針の変更は、極右政治グループが国家ぐるみで偽情報を駆使して反対者や独立した研究者、社会的弱者を支援する組織を標的にする動きと軌を一にしている。だが、すべての人の表現の自由を守る方針は、暴力や敵意、差別を煽る行為を容認するものであってはならない。
3. オンライン空間は民主主義を育み、市民参加とメディアの多様性を実現し、公共の利益に資するものでなくてはならない
表現の自由には、正確で信頼できる情報を求め、受け取り、発信する権利が含まれる。情報へのアクセスは、人々が指導者の説明責任を問い、十分な情報に基づいて判断を下すために不可欠である。しかし、独立メディアの活動資金と民主的な空間が縮小する中で、人々の主要な情報源となっているソーシャルメディアプラットフォームが、むしろ情報の完全性を脅かしている。国家主導のプロパガンダや偽情報が民主的な対話に重大な脅威をもたらしている現状を踏まえれば、民間企業による対策は、プラットフォームの運営がこれらのリスクにどう関与し、いかに軽減できるかに焦点を当てるべきである。
4. 表現の自由とプラットフォームの説明責任は相互に補完し合う
説明責任の仕組みがイノベーションを阻害し企業に過度な負担を強いるという主張は根拠に乏しい。むしろ、人権を中心に据えたプラットフォームの説明責任モデルこそが、表現と意見の自由を強化する。プラットフォームの権利侵害を正す取り組みが検閲につながると主張したり、人権保護のための規制を特定の政治的見解への「法的攻撃の道具」と曲解したりすることは、表現の自由の本質を見誤るものである。
5. 分散型で自由なオープンソースのソーシャルネットワークと、透明性のあるクラウドソース型モデレーションが、表現の自由を守る鍵となりうる
情報へのアクセスにおいてオンラインプラットフォームへの依存度が高まり続けている。しかし、これらのプラットフォームを支えるインフラは、ごく少数の企業と超富裕層の手に集中している。この状況は、意味ある多様な議論の場を制限し、不透明で権利侵害的な利用規約の受け入れを強制することで、民主主義の強靭性を損ない、説明責任の確保を困難にする。
分散型ソーシャルネットワークは、人々に選択肢を与え、目にするコンテンツを自らコントロールできるようにする。とはいえ、これが万能の解決策になるわけではない。分散型ネットワークが台頭しても、豊富な資金力と影響力を持ち、すでに社会に深く根を下ろしているビッグテック所有のプラットフォームは、オンラインの公共空間を支配し続け、社会全体にリスクをもたらすだろう。人々の権利を守るためには、透明性の確保やデータの可搬性、相互運用性の義務付けなど、これら巨大企業への規制が不可欠である。
Our rights are at stake: it’s time to reclaim freedom of expression – Access Now
Author: Access Now (CC BY 4.0)
Publication Date: 21 February 2025
Translation: heatwave_p2p