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碁法の谷の庵にて

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2010年11月10日
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テーマ:ニュース(95652)
カテゴリ:その他雑考
 漫画やアニメ、映画でよく登場する「信念の人」。
 上司その他の言うことに流されず、自分なりの主張や考え方、願いを持って、それを実行できるような人、と言う意味で今日は使います。

 かっこいいですよね。昔がどうだったか知りませんが、今その手の信念はヒーローをカッコ良くさせる大切な要素でしょう。最近は、悪役ですらその手の信念の人がごく普通・・・な気がします(私の知っているアニメや漫画は決して数が多くないので、一般化は避けたいですが)。
「誰かを守りたい」でも、「正義を貫く」でも、はたまた「自分が強くなりたい」でも。

 私も嫌いじゃありません。と言うか好きです。






 しかし、そこには一つの陥穽があります。
 世の中には「信念の人」が暴走した結果、周囲に取り返しのつかない大損害を与えてしまうことがあり得るということです。
 アニメ・漫画類なら、奇跡が起こったり、主人公が超ド級の天才とかだったり、色々とそういう信念の人の暴走を成功させるさまざまな補正があります。後は、いわゆるセカイ系で、現実社会とのつながりをほとんど顧みないというウルトラCを使うものもあります。
 もちろん、作品世界の演出としていけないとは全然思いません。


 しかし、現実社会にそれを持ってくれば、そこには危険が付きまといます。

 例えば、アニメ・漫画に多いバトルもので、よくあるのが「不利な状況の中で主人公その他が無断で、或いは命令無視をして単騎、あるいは少数の仲間とともに突撃して敵将を倒す」等というやり方。
 しかし、不利な戦局の中で主人公と仲間が先走って散ったら(えてして主人公はけっこう強力な戦力である場合が多い)、戦力低下してもう立て直せない…と言うことだって当然ある訳です。よしんば戦果をあげたとしても、組織の論理としてそのような人間を放置しておけば、「自分勝手に活動してよい」という前例を作る恐れは常に付きまといます。(戦果をあげたから不問とされるのか、それでも処罰されるのか、現実の軍隊や自衛隊がどうなのかは存じませんが)
 結果、組織として一丸とした行動が取れなくなり、肝心なところでうまく動かないということもありえます。
 かといって、自業自得などと言って彼を見殺しにすれば戦意に響くことも考えられますし、見殺しにしないとすれば、そのためにこちらも予定外の戦いを強いられることになります。


 何で人間社会に組織があるのか、と言えば、一人ではできない大きなことを集団の力で行うためです。
 そしてそれは何も物理的なマンパワーに限りません。よりよい結論を出すために役割分担を行い、時には内部でも議論をすることでより良い結論を導こうとするというのも、れっきとした組織の存在意義であるはずです。
 そうして「全体で動く」ことによって、一つの目的を達成する。それが人類の築いてきた叡智です。
 このブログを読まれている方は、弁護人と検察官と裁判官の役割も目的も違う三者を置くことで真実発見と人権保障を目指す刑事裁判を考えてもらえればいいでしょうかね。

 一人が自分の信念で暴走するということは、そう言った組織の存在意義を吹っ飛ばして、自分だけの判断で暴走するというもの。
 極端な言い方をすれば、人類が何万年もかけて築いてきた知恵に正面からケンカを売る行為なのです。



 尖閣沖のネット上の中国船映像公開について、あたかも英雄であるかのように語る人がネット上には多数います。
 政府の方から映像を公開すべきだったか否かについては見解が分かれるところだろうと思います。
 本当にアップロードした人物が信念の人だったのか、単なる愉快犯だったのかすら実は分かりません。
 しかし、ネット上で彼の行為を称賛する見解には正直言ってへどが出ます

 公開すべきだった、そうでなかった、どちらの結論を取るにせよ、個人が勝手に公開したことによって、日本は政府機関レベルで情報管理能力を疑われても仕方のない立場に追い込まれました。
 重大な問題について、正式な指揮監督権限のある人間の言うことをきかないで、俺様の論理で動く人間が、情報管理に関係できる重要な職務を受け持っているということも分かってしまいました。平たく言えば、信頼は地に落ちたと言えます。

 公開しないなら公開しないでもっていたそれなりのメリットは台無しになり、非公開を決めたことによるデメリットばかりが残ってしまいました。
 彼自身が「公開が日本の利益になる」と考えていたとしても、組織を無視して勝手な行動をとったために失われたものは数知れない訳です。 

 

 漫画やアニメや映画ではかっこいい信念の人ですが、それはあくまでも漫画やアニメの世界で補正が効いているからかっこいいのです。 いくら公開を支持する見解に立ち、その主張に説得力を感じるからと言って、作品世界とリアル世界の区別のつかないような主張が跋扈する様は、中国で一時「愛国無罪」と揶揄された状況を思い起こさせて、かなり不愉快なものがありました。
 





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最終更新日  2010年11月10日 18時39分10秒
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