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碁法の谷の庵にて

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2020年05月05日
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ダウンタウンで有名な松本人志氏が、後輩芸人に100万円を無利子で貸し付けることを表明しているそうです。

お笑いコンビ「トレンディエンジェル」の斎藤司(41)が4日、ブログを更新し、同日付スポニチが報じた「ダウンタウン」松本人志(56)の後輩への計最大10億円貸し付けプランに「ほんとにすげぇぜ松本さん。器がデカすぎる」と感謝をつづった。所属の吉本興業にも「めちゃくちゃサポートしてくれてます」と、休業補償など十分な対応を受けているとした。

 松本はツイッターで「善意にケチを付ける人たちがいます」と切り出し「それは寄付や義援金をしたい人たちの心を削ります。そして回り回って自分や自分の大切な人たちをも救えなくなるのです」と警鐘を鳴らした。



 しかし、私はこのニュースを聞いた瞬間「これ、貸金業法大丈夫なのか?」と感じました。
 

 本件で松本氏がどこまで考えているか、どんなスキームを考えているのか、実情は不明です。手法によっては違法であるとは限りません。
 松本氏もそこまで踏まえ、見通しがついた上で話した可能性もあると思います。
 ただ、似たようなことを考えた篤志家の皆さんもいるかもしれず、気を付けてほしいので松本氏が今回特に何も考えずに貸付をしていたらどうなるか、と言う視点からこの先を書き記します。

 貸金業法2条では
この法律において「貸金業」とは、金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(中略)で業として行うものをいう。(後略)


更に、3条では
貸金業を営もうとする者は、二以上の都道府県の区域内に営業所又は事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては内閣総理大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所又は事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては当該営業所又は事務所の所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。


となり、11条1項で
第三条第一項の登録を受けない者は、貸金業を営んではならない。


とされます。
そしてこれに違反すると47条2号によって

次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
二 第十一条第一項の規定に違反した者


重い刑罰が設定されています。

 「業として」に当たるか否かは個別の事案に応じて非常に難しい所で、裁判で弁護するということになれば当然そこが最大の争点になる可能性が高いと思います。
 ただ、少なくとも無利子であれば業に当たらない、とは解釈されておりません。
 こちらのHPに詳しい所ですが反復継続の意思と事業的規模の2つが必要と解釈されています。
 単なる個人間の一回的な貸付に貸金業法は出てきません。
 たまたま金持ちが付き合いのある友人や労働者などに金を貸すというのがいくつか積み重なった程度では業には当たらないことになります。

 しかし、松本氏の貸付を例にとると貸付総額が想定10億、貸付が最大100万円と言うことになりますと、1000人以上を相手にすることが想定されていることになります。
 貸金業法上、資本面で言えば資本金が5000万円あれば貸金業の登録は受けられる(6条1項14号、同条3項)訳です。
 そうすると、松本氏の貸付を例にとった場合「業でない」と言う主張を通すのは正直なところかなり厳しい、少なくとも「業に当たる」と判断されてもおかしくないように思われるのです。


 実際、闇金融に限らず、諸々の業法に要求される登録を受けずに営業する悪徳業者の類はしばしば「私たちは単なる個人間の取引をしているだけだ、業として行っているのではない」などと弁解してきます。
 大体、怪しすぎるので国民生活センターに照会をかけると日本のあちこちで似たようなことをやっているのがバレるので、流石にそうなれば裁判所も「業に当たる」と判断しますが…

 個人で免許を取ることがないまま10億円を1000人に貸し付けるのに踏み切り、それが業ではない個人的貸付とされると、悪徳未登録金融業者が大規模な貸付を行い、業法を守らない取立て行為や貸付を行った挙句、追及に「俺のやっていることは業としてのそれではない、特定の目標を持つ者に対する個人間の情誼による貸付だ」とかわす余地を与えてしまうことになりかねません。
 そうした未登録業者は、貸付の総量規制(貸金業法13条の2)や取立規制(貸金業法21条)などなど債務者保護の諸規制も及ばないため、債務者が危険にさらされることになります。

 貸し付ける側が個人的には善意であっても、悪徳業者が同じ手を使えば多くの被害者が生まれるという結果になりかねないのです。
 そして、そういうことを許さないために善意かつ内容的にも適法にやっている人にも形式的な免許を要求するのが免許制度と言うものです。





 今回のコロナ禍で多方面への貸付を考えている篤志家の方々は、法的にグレーゾーンを突っ切るのではなくぜひ貸金業の登録を行うとか、登録を受けた貸金業者の協力を仰ぐなどの形で真っ白な形で進めてほしいと思います。





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最終更新日  2020年05月05日 08時13分53秒
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